がんの治療を受けたあとでも、民間の保険に入る道がすべて閉じるわけではありません。

通常の保険の告知、告知の項目を3〜5項目程度にしぼった「引受基準緩和型」、告知のいらない「無選択型」という3つの入り方があります。

どの入り方でも基本になるのは、保険法の告知義務です。保険会社が告知を求めた事項について、事実を伝える義務です。

故意や重大な過失で事実と違う告知をすると、保険会社は契約を解除できます。保険法では、解除できるのは解除の原因を知ってから1か月、契約から5年までです。

このページは、特定の会社や商品を紹介しません。仕組みを知って、告知書と約款を自分で読めるようになるためのページです。

このページの内容

告知義務:保険法に書かれていること

保険法は、生命保険(第37条)と、医療保険・がん保険のような傷害疾病定額保険(第66条)のそれぞれに、告知義務を定めています。条文の中身は次のとおりです。

条文の要素中身
誰が保険契約者または被保険者になる人
いつ契約を結ぶとき
何について保険事故(給付事由)が起きる可能性に関する重要な事項のうち、保険会社が告知を求めたもの
何をする事実を告知する

この規定に反する特約で、契約者や被保険者に不利なものは無効です(第41条・第70条)。

誤解①「聞かれていないことも、全部話さないといけない」

「がんの治療歴は、何もかも自分から申し出ないといけない」と思っていませんか。条文が求めているのは、保険会社が告知を求めた事項についての事実です。

告知書の質問に、ありのまま答えることが義務の中身になります。

逆に言えば、質問に当てはまることを書かずにおく理由はありません。質問の読み方に迷ったら、推測で「いいえ」にせず、保険会社に問い合わせましょう。

誤解②「担当者に口頭で話したから、告知は済んでいる」

生命保険協会のガイドラインは、告知を受ける権限(告知受領権)は保険会社(所定の告知書)と、会社が指定した医師にあると説明しています。

生命保険募集人や生命保険面接士には告知受領権がなく、口頭で話しても告知したことにはなりません。治療歴は必ず告知書に書きましょう。

告知の対象期間は、契約ごとに違う

告知書は「過去○年以内に」という形で期間を区切って質問します。何年さかのぼるか、どんな受診を含めるかは、保険会社と商品ごとに違います。

生命保険文化センターが挙げる、引受基準緩和型の告知項目の例は次の3つです。

告知項目の例(生命保険文化センター)がんの治療を受けた人が確かめたいこと
最近3か月以内に、医師から入院・手術をすすめられたことがある次の治療の予定がすでに出ていないか
過去2年以内に、入院・手術をしたことがある最後の入院・手術の退院日・手術日
過去5年以内に、がん・上皮内がん、肝硬変、統合失調症、認知症、アルコール依存症で、医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかを受けたことがある最後にがんで診察・検査・投薬を受けた日(経過観察の受診を含めて読む)

ここは見落としやすい点です。3つ目の例は、治療だけでなく「診察・検査」も含めています。治療が終わっても、経過観察で定期的に受診して検査を受けていれば、その受診日が新しい起点になる書き方です。

計算例:期間の数え方

手術が2021年3月、その後の経過観察の受診が2026年9月まで続いた人の例で数えてみましょう。「過去2年以内の入院・手術」には、2023年3月の時点ですでに当たらなくなっています。

一方、「過去5年以内のがんでの診察・検査」には、最後の受診日である2026年9月から5年、つまり2031年9月ごろまで当たり続ける読み方になります。

手術から何年たったかではなく、最後に受診した日から数える質問かどうかを確かめましょう。

実際の告知書の文言は、この例と違うことがあります。必ず申し込む保険の告知書で読み直しましょう。

がんの治療歴がある人の3つの入り方

比べる点通常の保険引受基準緩和型(限定告知型)無選択型
告知・診査告知書(医師の診査がある場合も)告知項目を3〜5項目程度に限定告知・診査なし
引き受けの結果無条件、特別条件付き(保険料の割増・保険金の削減・特定部位の不担保)、引き受けない、のいずれか所定の告知項目に1つも当たらなければ原則として契約できる告知なしで契約できる
保険料基準になる通常より割高通常より割高
契約後しばらくの制限(一般的な例)特別条件で削減が付いた場合、契約から一定期間(5年を超えない)の死亡は保険金を削減契約後1年間は給付金が半額などの制約があるものがある。終身保険では契約後1年以内の病気の死亡で保険金50%が一般的終身保険では契約後2年・3年以内の病気の死亡は払い込んだ保険料相当額が一般的
商品の例定期保険・終身保険・医療保険など終身保険・定期保険・医療保険など終身保険・個人年金保険など(医療関係の特約は付けられない)

この表の「一般的」「例」は、生命保険文化センターの説明にある表現です。実際の条件は商品ごとの約款とパンフレットで確かめましょう。

生命保険文化センターは、健康に不安があってもまず通常の保険に契約できるかを確かめるよう案内しています。

生命保険協会のガイドラインも、無選択型や選択緩和型は同じ会社の他の保険より保険料が割高に設定されていて、健康なら割安な商品がある点を説明するよう求めています。

引受基準緩和型の「再発・悪化も対象」と「対象外」

引受基準緩和型の医療保険では、契約前からかかっていた病気の悪化や、治療歴のある病気の再発・悪化も支払いの対象になります。ただし、契約前に医師から勧められていた入院・手術は対象外です。

次の治療がすでに決まっている時期は、加入しても、その治療は保障されない扱いになります。

計算例:削減期間のある終身保険

死亡保険金300万円の引受基準緩和型の終身保険で、一般的な例のとおり「契約後1年以内の病気による死亡は50%に削減」の条件が付いていたとします。

契約から10か月で病気で亡くなった場合の受取額は、300万円×50%=150万円です。1年を過ぎてからなら300万円。

無選択型の終身保険で契約後2年以内の病気の死亡なら、受け取るのは払い込んだ保険料の累計額相当になります。

月払で保険料を払い続ける無選択型では、払った保険料の総額が死亡保険金を上回ることがある、とも説明されています。

告知の誤りが、あとでどうなるか

保険法は、告知義務に違反したときに保険会社が契約を解除できる場合と、できない場合を決めています。

場面保険法の決まり(第55条・第59条、第84条・第88条)
解除できる場合契約者・被保険者が、故意または重大な過失で、告知事項について事実を告知しなかった、または事実と違う告知をした
解除できない場合契約を結んだとき、保険会社がその事実を知っていた、または過失で知らなかった/保険の募集をした人が告知を妨げた、または告知しないこと・事実と違う告知を勧めた
解除できる期間保険会社が解除の原因を知ってから1か月以内、かつ契約から5年以内
解除の効き方将来に向かってのみ効く。解除までに起きた保険事故は支払わない
例外告知しなかった事実と関係なく起きた保険事故・病気は支払いの対象

募集をした人が勧めた場合でも、その勧めがなくても告知しなかったと認められるときは、解除できない場合に当たりません。これらの決まりより契約者に不利な特約は無効です(第65条・第94条)。

約款では「2年」が多い理由と、2年を過ぎても残るもの

生命保険協会のガイドラインは、募集用資料の記載例として、責任開始日(復活の場合は復活日)から2年以内なら告知義務違反で解除することがある、と示しています。

法律の5年より短い期間は契約者に有利なので、約款で定めても有効です。

ただし同じ記載例は、2年を過ぎても、保険金や給付金の支払事由が2年以内に起きていれば解除することがある、としています。

もう1つの例外が詐欺による取消しです。告知義務違反の内容が特に重大な場合は、2年を過ぎても詐欺による取消しとして保険金を支払わないことがあり、払い込んだ保険料も返さないと説明されています。

「2年たてばばれない」という考え方は、この点で成り立ちません。

今の保険を解約して乗り換える前に

がんの治療を受けたあとに、今の保険を解約して新しい保険に入り直す、または転換すると、新しい契約にも一般の契約と同じ告知義務がかかります。解除の規定は、新しい契約の責任開始日から数え直しです。

治療歴のために新しい契約を引き受けてもらえなかったり、告知しなかったことで解除・取消しになったりすることもある、とガイドラインは注意しています。

保険業法は、保険の募集をする人が、不利益になる事実を告げずに今の契約をやめさせて新しい契約を申し込ませることを禁じています(第300条第1項第4号)。

告知しないことや事実と違う告知を勧めることも禁止です(同項第2号・第3号)。乗り換えを勧められたら、今の契約を続けた場合との違いを書面で説明してもらいましょう。

告知義務は、契約を結ぶときにかかる義務です(第37条・第66条)。がんと診断される前から入っている保険の保障が足りないと感じても、解約は新しい契約が成立してからにしましょう。

給付金の請求の流れはがん保険の請求の流れとタイミングで説明しています。

住宅ローンの団信にも告知がある

住宅ローンを組むときの団体信用生命保険(団信)も、加入のときに健康状態の告知を求められます。

住宅金融支援機構の団信では、告知義務違反で解除されるとローンの残りは弁済されないと定められています(解除の原因と関係のない支払事由を除く)。

がんと団信の関係、すでに団信に入っている人が使える保障と返済の相談先は、がんと住宅ローン・団信にまとめています。

家族が新しく保険に入るとき

家族ががんになったのをきっかけに、自分も保険を考える人がいます。告知の対象になるのは、被保険者になる人の健康状態などです。告知書が聞いていることに答えましょう。

保険料の負担を考える前に、公的な医療保険の自己負担には月の上限があることも確かめましょう。上限の額と計算方法は高額療養費(がんの場合)で説明しています。

民間の保険でまかなう必要があるのは、上限を超えない自己負担の積み重ねと、収入が減った分、保険がきかない費用です。

どれをどのくらい備えたいかを先に書き出すと、商品を比べる前に必要な保障の大きさが見えてきます。

申し込む前のチェックリスト

  • 今入っている保険を解約しない(新しい契約が成立するまで)
  • 告知書の質問ごとの期間(3か月・2年・5年など)と、「診察・検査」を含むかどうか
  • 最後の入院日・手術日、最後にがんで受診・検査・投薬を受けた日(領収書や診療明細書で確かめる)
  • 次の入院・手術をすでに医師から勧められていないか
  • 通常の保険で無条件・特別条件付きで入れるかを先に確かめたか
  • 引受基準緩和型・無選択型なら、契約後の削減期間・支払いの制限・保険料の総額
  • 治療歴は告知書に書いたか(担当者に口頭で話しただけにしていないか)
  • 申込書・告知書の控えを保管したか

よくある質問

がんの治療が終わって何年たてば、普通の保険に入れますか?

一律の年数はありません。告知書の質問の期間と、保険会社の引き受けの判断は、会社と商品ごとに違います。

引き受けの結果は、無条件・特別条件付き・引き受けないのいずれかで、告知書を出してみないとわかりません。

告知を間違えたことに、契約後に気づきました。どうすればいいですか?

早めに保険会社に連絡しましょう。保険法の解除の要件は、故意または重大な過失による告知義務違反です。訂正の扱いは保険会社に確かめ、やり取りは記録に残しておきましょう。

告知しなかった病気と関係のない病気でも、給付金は出なくなりますか?

保険法は、解除された場合でも、告知しなかった事実と関係なく起きた保険事故については支払いの対象としています。どれが「関係がある」に当たるかは、保険会社が判断します。

保険の相談窓口を紹介してもらえますか?

このサイトでは、保険の相談窓口や代理店の紹介はしていません。告知書と約款の読み方に迷うときは、申し込む保険会社に直接問い合わせましょう。