がんと診断されても、住宅ローンが自動的になくなるわけではありません。残高が保険で返済されるのは、団体信用生命保険(団信)にがんの保障が付いていて、その条件を満たしたときだけです。

条件は契約ごとに違います。住宅金融支援機構の新3大疾病付機構団信では、生検による診断の確定が要り、上皮内がんは対象外、保障開始から90日以内の診断も対象外です。

まず手元の契約書で、自分の団信の種類と条件を確かめましょう。

このページの内容

団信の基本:何があれば残高がなくなるのか

団信は、住宅ローンを借りた人が亡くなったときなどに、保険金で残りのローンを返す生命保険です。金融機関などが保険契約者と保険金の受取人になり、借りた人が被保険者になります。

住宅金融支援機構の新機構団信(【フラット35】の団信も同じ制度)の場合、残高が保険で返済されるのは次のときです。

  • 亡くなったとき
  • 身体障害者福祉法の障害の等級が1級または2級に当たり、身体障害者手帳の交付を受けたとき

このとき、住宅の持分や返済割合にかかわらず、以後のローンの返済が要らなくなります。新機構団信では、所定の高度障害状態になったときに出る高度障害保険金の取扱いはありません。

民間の金融機関の住宅ローンにも、それぞれの団信があります。保障の範囲は商品ごとに違うので、機構の例をそのまま当てはめず、自分の契約で確かめましょう。

「がんになったら住宅ローンがチャラ」は本当か

「がんと診断されたら、住宅ローンはチャラになる」と聞いたことはありませんか。実際は、基本の団信だけではがんの診断で残高はなくなりません。

がんの保障を上乗せした団信に入っていて、約款の条件を満たした場合に限られます。

住宅金融支援機構には、がんを含む3大疾病の保障を付けた「新3大疾病付機構団信」があります。がんの診断で残高がなくなる条件と、対象にならない場合は次のとおりです。

項目新3大疾病付機構団信の定め
がんで弁済される条件保険期間中に、所定の悪性新生物(がん)にかかったと、医師が病理組織学的所見(生検)により診断を確定したとき
対象外のがん上皮内がん、皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がん
対象外の時期保障の開始日より前に診断が確定していた場合/保障の開始日から(その日を含めて)90日以内に診断が確定した場合
再発・転移90日以内に診断が確定したがんの再発・転移などと認められる場合は対象外
保障の開始資金を受け取った日(分割で受け取る場合は最終回)
保障の期間満75歳の誕生日の属する月の末日まで。その翌月からは新機構団信の保障だけになる

3大疾病のほか、公的介護保険の要介護2以上に認定されたときなども残高が返済されます。

たとえば、2026年4月1日に資金を受け取った人が、同じ年の6月10日にがんと診断が確定したとします。保障開始日を含めて90日以内なので、この団信のがんの保障の対象になりません。

8月1日の確定なら、90日を過ぎています。

民間の団信のがん保障:契約書で確かめる5つの点

民間の金融機関の住宅ローンにも、がんの保障を付けた団信があります。「がんと診断されたら残高が0になる」と案内される型もありますが、条件は商品ごとに違います。

商品名で判断せず、手元の書類で次の5点を確かめましょう。

確かめる点見る書類機構の例
どの団信に入っているか(がん保障の有無)団信の加入申込書兼告知書の控え、金銭消費貸借契約書新機構団信か、新3大疾病付機構団信か
残高が全額なくなるのか、一部か団信の約款・ご案内条件を満たせば全額弁済
上皮内がんの扱い約款の「がん」の定義対象外
保障が始まるまでの期間約款の支払事由・免責保障開始日を含めて90日以内の診断は対象外
保障が終わる年齢約款・ご案内がん保障は満75歳の誕生月の末日まで

がんの保障の条件は、約款では「所定の」「診断確定」といった言葉で細かく決められています。読んでもわからないときは、ローンを借りている金融機関の窓口に、自分の契約で弁済の対象になるかを聞くのが確実です。

がんと診断されたら:住宅ローンについてやること

がんの保障付きの団信に入っているなら、診断がわかった段階でローンを借りている金融機関に連絡しましょう。

団信は金融機関などが保険契約者なので、手続きの窓口がどこになるかを、まず金融機関に確かめるのが近道です。

保険金で弁済されれば、それ以後の返済は要らなくなります。手続きが終わるまでの返済の扱いも、あわせて確かめておきましょう。

団信の請求にも医師の診断書が要ることがあります。民間の保険の請求と時期が重なるので、提出先の一覧にまとめて病院に頼みましょう。頼み方は診断書の費用と取り方にまとめました。

団信とがん保険は別の契約です。団信で住宅ローンが返済されても、がん保険の給付は約款どおりに別に請求できます。請求の流れはがん保険・医療保険の請求で解説しています。

がん保障のない団信では、診断のあともローンの返済が続く点に変わりはありません。収入が減るなら、次に紹介する返済方法の変更を早めに相談しましょう。

滞納が始まってからより、その前のほうが選べる方法が多く残ります。

返済が苦しいとき:返済方法の変更を相談する

「返済を待ってほしいと言ったら、家を手放すことになる」と思っていませんか。実際は、住宅金融支援機構は病気で返済が苦しくなった人向けに、返済方法を変えるメニューを用意しています。手数料はかかりません。

タイプ使える人の例中身
A離職や病気等で収入が減り、返済が困難な人(収入の基準あり)返済期間の延長(最長15年)。失業中または収入が20%以上減った人は、元金を一時休止して利息だけ払う期間(最長3年)も設定できる
B入院による医療費など、一定期間に支出が増える人相談した期間のあいだ、返済額を減らす
Cボーナス返済が負担になっている人ボーナス返済月の変更、内訳の変更、取り止め

Aタイプの「病気等」には、病気、けがや後遺症、高度障害、家族の病気による介護などによる減収や支出の増加が含まれる、とされています。

収入の基準は、年収が機構への年間総返済額の4倍以下、月収が世帯人数×64,000円以下、などのいずれかです。

月収で見ると、3人家族なら64,000円×3=192,000円以下が基準の1つ。

機構はBタイプの例として、融資額2,000万円・金利3.00%・35年返済で、返済開始から4年たった時点の試算を示しています。毎月76,970円の返済を、3年間だけ50,000円に減らす例です。

差は月26,970円で、3年間(36か月)なら970,920円。治療で支出がかさむ時期の負担を、それだけ後ろに回せる計算です。

その代わり、減額期間が終わったあとは毎月81,436円に増え、総返済額も増えます。治療の見通しとあわせて、どの期間を軽くするかを考えましょう。

手続きの窓口は、返済している金融機関(融資を申し込んだ金融機関)です。返済を続けられるかの審査があり、一定の時間がかかるうえ、希望どおりにならない場合もあります。

民間の金融機関の住宅ローンでも、相談はできるのでしょうか。金融庁は監督指針で、住宅ローンの借り手の状況をきめ細かく把握し、貸付けの条件の変更等に努めることを金融機関に求めています。

応じるかどうかと条件は、金融機関の審査で決まります。

住宅ローンのほかにも借入れがあって返済を続けるのが難しいとき、機構が挙げているのは個人版民事再生という方法です。弁護士など法律の専門家への相談も勧めています。

返済の相談の前に、収入と医療費の見通しを立てる

金融機関で最初に聞かれるのは、今後の収入の見通しです。治療中の収入と支出を先に整理しておけば、相談は具体的に進みます。

会社員なら、休んだ日の収入の支えは傷病手当金です。標準報酬月額の平均が30万円なら1日6,667円で、30日分なら約20万円。給与の手取りより減るぶん、ローンの返済の比重は重くなります。

医療費には高額療養費の上限があり、年収約370〜770万円の人なら4か月目から月44,400円です。

収入と医療費の見通しが出たら、「月にいくらまでなら返せるか」を数字にして金融機関に伝えましょう。家計全体の立て直し方は治療費が払えない・お金がないときにまとめています。

がんの治療のあとで、新しく住宅ローンを借りるとき

がんを経験したあとに家を買う、借り換えるときは、団信の加入が壁になることがあります。団信は生命保険なので、加入のときに健康状態の告知があり、保険会社の承諾が要るからです。

機構の新3大疾病付機構団信は、過去にがんと診断された人は加入できないと明記しています。加入できる年齢も、満15歳以上満51歳未満です。

基本の新機構団信は、満15歳以上満70歳未満で、幹事生命保険会社の加入承諾がある人が対象です。

一方で機構は、健康上の理由その他の事情で団信に加入しない場合も、融資(【フラット35】)を利用できるとしています。

「団信に入れないと住宅ローンは借りられない」とは限りません。ただし団信がなければ、亡くなったあともローンは残ります。

告知で何を聞かれ、どう答えるかの仕組みはがん経験者の保険加入と告知へ。告知で事実と違うことを答えると、あとで団信の契約が解除され、弁済されないことがあります。

機構の例では、新3大疾病付機構団信の融資金利は、新機構団信付きの金利に年0.24%を上乗せした水準です(機構の直接融資のページの記載)。

保障の手厚さと金利の差は、借りる前に金融機関の説明で比べましょう。

住宅ローンと団信のチェックリスト

  • 金銭消費貸借契約書と、団信の加入申込書兼告知書の控えを出した
  • 自分の団信にがんの保障が付いているか確かめた
  • がんの保障の条件(診断の確かめ方、上皮内がんの扱い、保障開始からの期間)を約款で確かめた
  • 保障の開始日(資金を受け取った日)と、保障が終わる年齢を確かめた
  • 夫婦で借りている場合、どちらが団信に入っているかを確かめた
  • がんの保障があるなら、ローンを借りている金融機関に連絡した
  • がんの保障がないなら、返済方法の変更の相談先と必要書類を確かめた
  • 傷病手当金と高額療養費をもとに、月に返せる額を数字にした

よくある質問

団信に入っていれば、がんで住宅ローンはなくなりますか?

基本の団信だけでは、がんの診断でローンはなくなりません。がんの保障付きの団信に入っていて、約款の条件を満たした場合に限られます。条件は契約ごとに違うので、契約書と約款で確かめましょう。

上皮内がんと診断されました。対象になりますか?

契約によります。住宅金融支援機構の新3大疾病付機構団信では、上皮内がんは対象外です。民間の団信は商品ごとに扱いが違うので、約款の「がん」の定義と、金融機関の窓口で確かめましょう。

夫婦で住宅ローンを借りています。妻ががんになったら?

団信に入っているのが誰かで変わります。機構の新機構団信には、夫婦2人で入る「デュエット」があり、どちらかが亡くなったときなどに残りの返済が要らなくなります。

新3大疾病付機構団信ではデュエットを使えません。

民間のローンの扱いは、契約書で確かめましょう。

がんの治療中ですが、借り換えはできますか?

借り換えの審査と、新しい団信の加入の審査が別にあります。機構の新3大疾病付機構団信は、過去にがんと診断された人は加入できません。

団信に入らずに借りられる住宅ローンもありますが、その場合は亡くなったあともローンが残ります。

自分が機構の団信のどちらの制度に入っているか、どう見分けますか?

【フラット35】では、2017年10月1日以降に申し込んだ人は新機構団信で、団信の保険料にあたる分が毎月の返済に組み込まれています。

2017年9月30日以前の申込みは、特約料を年に1回払う機構団体信用生命保険特約制度です。

制度によって保障の内容と手続きの案内が違うので、申込日を契約書で確かめましょう。

返済が苦しいのですが、まだ滞納はしていません。相談してもいいですか?

滞納の前に相談しましょう。住宅金融支援機構は、病気などで返済が苦しくなった人に、返済期間の延長などのメニューを手数料なしで用意しています。申請は、返済している金融機関が窓口です。