がんという病名だけでは、身体障害者手帳の対象になりません。対象になるのは、身体障害者福祉法の別表に載っている障害が、一定以上の程度で永続する場合です。

がんの治療のあとに残る状態のうち、永久的な人工肛門・人工膀胱(尿路変向のストマ)、喉頭の摘出で声を出せなくなった状態などは、この別表の障害に当たりえます。

手帳を受けると、市区町村の日常生活用具の給付でストーマ装具や人工喉頭の費用を助けてもらえる場合があり、所得税では障害者控除27万円(1級・2級は特別障害者として40万円)が使えます。

手帳と障害年金は別の制度です。窓口も診断書も等級も別なので、両方を申請できます。

このページの内容

手帳の対象になる障害の種類

身体障害者手帳は、都道府県知事(指定都市・中核市は市長)が交付します。対象は法律の別表にある9種類の障害で、どれも「一定以上で永続すること」が要件です。

がんの治療と関係しやすいものを、厚生労働省の認定基準の表現で並べます。

障害の種類がんの治療のあとに関係しうる状態認定基準の表現(抜粋)
ぼうこう又は直腸の機能の障害永久的な人工肛門、尿路変向(人工膀胱)、直腸の手術などのあとの排尿・排便の障害腸管又は尿路変向(更)のストマをもつもの(4級)など
音声機能・言語機能の障害喉頭の摘出で声を出せなくなった状態音声機能喪失の例として「無喉頭」(3級)
そしゃく機能の障害口やのどの手術のあと、食べ物をかんで飲み込めない状態経管栄養以外に方法のないそしゃく・嚥下機能の障害(3級)
小腸・呼吸器・肢体不自由など手術や病気の進行で、その臓器や手足の働きが落ちた状態障害ごとの基準による

このページでは等級の判定をしません。判定するのは都道府県で、その前提になるのが指定医の診断書です。表は、どの障害の基準で見られるかの見当をつけるためのものです。

「永続する」は「ずっと変わらない」ではない

「がんは治療で状態が変わるから、手帳は無理」と思っていませんか。認定基準は、「永続する」障害を、将来とも回復する可能性が極めて少ないものであれば足りると説明しています。

将来にわたって程度が変わらないものに限られません。

程度が変われば、診査を受けて等級を認定し直す仕組みもあります。

人工肛門・人工膀胱(ストマ)の認定基準

ぼうこう又は直腸の機能の障害は、1級・3級・4級の3段階です。認定基準の内容を要約すると次のとおりです。

等級認定基準の内容(要約)
4級腸管のストマ(人工肛門)か尿路変向(更)のストマ(人工膀胱)をもつもの/治癒困難な腸瘻があるもの/高度の排尿機能障害か高度の排便機能障害があるもの
3級腸管のストマと尿路変向(更)のストマを併せもつもの/ストマがあり、ストマでの排便・排尿の処理が著しく困難な状態か、高度の排尿機能障害を併せもつもの など
1級3級の組み合わせに当たり、さらに身のまわりの日常生活活動が極度に制限されるもの

「高度の排尿機能障害」は、直腸の手術や新ぼうこうなどによる神経因性ぼうこうのため、カテーテルの留置か自己導尿を常に必要とする状態です。

「治癒困難な腸瘻」は、腸管の放射線障害などで、ストマ以外の穴から腸の内容の大部分が漏れ、手術などでも閉じる見込みのない状態をいいます。

認定の時期:ストマは造設の直後から

腸管のストマ・尿路変向のストマは、つくった直後からそのストマに当たる等級の認定を受けられます。

ストマでの処理が著しく困難な状態が加わって上の等級に当たる場合は、ストマをつくってから6か月を過ぎた日以降の認定です。

高度の排尿・排便機能障害の認定は、障害が起きてから6か月を過ぎた日以降。

ただし、対象になるストマは永久的につくられたものに限られます。あとで閉じる予定の一時的なストマは、この基準の対象として扱われません。主治医に「このストマは永久的なものか」を確かめておきましょう。

喉頭の摘出など、声と言葉の障害

認定基準は、音声を全く出せないか、出しても言葉として働かない状態を「音声機能又は言語機能の喪失」(3級)としています。音声機能喪失の例として最初に挙がっているのが「無喉頭」です。

声や言葉だけで意思を伝えるのが難しい状態は「著しい障害」(4級)で、例に「喉頭の障害又は形態異常によるもの」「構音器官の障害又は形態異常によるもの」が挙がっています。

舌や口の手術のあとで発音しにくくなった状態は、こちらの基準で見られる可能性があります。

食べ物をかんで飲み込めず、経管栄養以外に方法がない状態は、「そしゃく機能の喪失」(3級)です。

手帳と障害年金は別の制度

手帳の等級と障害年金の等級は、数字が同じでも中身が違います。人工肛門は手帳では4級から、障害年金では3級(厚生年金に入っている間に初診日がある人だけ)からです。

喉頭の全摘出は、手帳では3級、障害年金では原則2級とされています。

比べる点身体障害者手帳障害年金
法律身体障害者福祉法国民年金法・厚生年金保険法
受け取るもの手帳(福祉サービス・税の控除などの証明)年金(お金)
窓口市区町村の障害福祉の窓口(福祉事務所)市区町村の国民年金の窓口または年金事務所
診断書都道府県知事が定めた医師(指定医)の診断書・意見書年金用の所定の診断書(障害の部位で8種類)
保険料の要件なし初診日の前日時点の納付要件がある
ストマの認定の時期造設の直後から造設から6か月を過ぎた日(初診日から1年6か月を超える場合を除く)

手帳を持っていなくても障害年金は請求でき、手帳を持っていても障害年金が自動的に出るわけではありません。それぞれに申請が必要です。障害年金の基準と請求の流れはがんと障害年金で説明しています。

手帳で使える制度①:ストーマ装具・人工喉頭の給付

市区町村は、障害者総合支援法にもとづく「日常生活用具給付等事業」を必ず行うことになっています。国が示す用具の種類のうち、がんの治療のあとに使うものは次の2つです。

種類告示に載っている例
排泄管理支援用具ストーマ装具その他の排泄管理を支援する用具と衛生用品
情報・意思疎通支援用具点字器、人工喉頭など

どの用具をいくらまで、どの等級の人に給付するか、自己負担がいくらかは、市区町村により異なります。国が利用者の負担を「市区町村の判断による」としているためです。

流れは、市区町村長に申請し、給付の決定を受けてから給付を受ける順番です。決定の前に自分で買った分がさかのぼって対象になるかどうかは、申請の前に市区町村の窓口で確かめましょう。

ストーマ装具は毎月使う消耗品なので、給付があるかないかで年間の負担が大きく変わります。退院が決まった段階で、手帳の申請と用具の申請の段取りを病院の相談窓口と一緒に確かめておくと、切れ目がなくなります。

自分で買ったストーマ装具は医療費控除の対象になる

国税庁は、治療上ストマ用装具を消耗品として使うことが必要不可欠だと医師が認め、証明書を出した人について、その装具の費用を医療費控除の対象と認めています。必要な書類は「ストマ用装具使用証明書」です。

控除の対象は、その年に実際に自分で払った額です。医療費控除の計算は医療費控除(がんの場合)で説明しています。

手帳で使える制度②:所得税の障害者控除

本人、同じ生計の配偶者、扶養している親族が所得税法上の障害者に当たると、所得から一定額を差し引けます。

身体障害者手帳に身体上の障害があると記載されている人は障害者に当たり、1級か2級の人は特別障害者です。

区分控除額(所得税)手帳との関係
障害者27万円手帳の3級〜6級など
特別障害者40万円手帳の1級・2級など
同居特別障害者75万円特別障害者である配偶者・扶養親族と、納税者などが同居している場合

計算例:所得税がどれだけ減るか

本人が手帳の4級で、控除を引く前の課税される所得が500万円の人なら、所得税率は20%です。

障害者控除27万円を引いても税率は変わらないので、所得税は27万円×20%=54,000円(ほかに復興特別所得税2.1%分)少なくなります。

同じ所得で、同居する妻(同一生計配偶者)が特別障害者なら、控除は75万円です。所得税は75万円×20%=150,000円少なくなる計算です。

住民税にも障害者控除がありますが、額は所得税と違うため、ここでは計算しません。

年末までに手帳が届かないとき

手術が年末に近いと、申請しても年内に手帳が届かないことがあります。

国税庁は、申告書を出す時に手帳を申請中であるか、交付を受けるための医師の診断書を持っていて、12月31日の時点で明らかに手帳を受けられる程度の障害がある人は、障害者控除を受けられるとしています。

申告する場は、会社員なら年末調整、自営業なら確定申告です。障害者控除は16歳未満の扶養親族にも適用されます。

申請の流れ

順番すること窓口
1手帳の申請書と診断書の様式をもらう。指定医の一覧も確かめる住んでいる市区町村の障害福祉の窓口
2指定医に診断書・意見書を書いてもらう(ストマは造設の直後から。上の等級を求める場合は6か月後)指定医のいる医療機関
3申請書・診断書・写真などを出す(市区町村から都道府県へ送られる)市区町村の障害福祉の窓口(福祉事務所)
4都道府県が審査し、手帳を交付する(該当しない場合は理由を付けて通知)市区町村の窓口で受け取る
5日常生活用具(ストーマ装具・人工喉頭)の給付を申請する市区町村の障害福祉の窓口
6障害者控除を年末調整・確定申告で申告する勤務先・税務署

診断書は、都道府県知事が定めた指定医しか書けません。主治医が指定医でない場合もあるので、手術を受けた医療機関で先に聞きましょう。

手帳の交付を受けると、国民年金保険料の免除の所得基準にも関わることがあります(地方税法上の障害者は基準額が変わる)。詳しくは国民年金保険料の免除・納付猶予で説明しています。

申請前のチェックリスト

  • ストマが永久的なものか、一時的なものか(主治医に確かめる)
  • 主治医が指定医か。違えば、診断書を書ける指定医はどこか
  • 市区町村の障害福祉の窓口で、申請書・診断書の様式・必要な写真のサイズ
  • 日常生活用具の給付で、ストーマ装具・人工喉頭の基準額と自己負担。手帳の交付前に買った分の扱い
  • 自分で払うストーマ装具の領収書と、ストマ用装具使用証明書(医療費控除用)
  • 障害年金の請求を別に進めるか(年金事務所で納付記録と初診日を確かめる)
  • 年末調整・確定申告で障害者控除を申告する段取り。年内に手帳が届かない場合の診断書

よくある質問

がんの診断を受けただけで、手帳は申請できますか?

申請はできますが、対象になるかは別表の障害に当たるかで決まります。がんの病名だけでは対象になりません。治療のあとに残った体の状態が、認定基準のどれに当たるかを指定医に相談しましょう。

人工肛門をつくりましたが、いずれ閉じる予定です。対象になりますか?

認定基準は、対象になるストマを「永久的に造設されるもの」に限っています。閉じる予定の一時的なストマは対象外です。予定が変わって永久的なものになった場合は、その時点で指定医に相談しましょう。

手帳を持っていると、障害年金も受けられますか?

自動的には受けられません。障害年金は年金の制度で、保険料の要件や年金用の診断書があり、請求の手続きも別です。手帳の等級と障害年金の等級は一致しないこともあります。

家族が手帳を受けました。私の税金も変わりますか?

手帳を受けた家族が、同じ生計の配偶者か扶養親族なら、あなたの所得税で障害者控除を使えます。特別障害者で同居していれば75万円です。