自営業の人や、会社を辞めて国民健康保険に入った人(国民年金の第1号被保険者)は、国民年金保険料を自分で納めます。令和8年度の額は月17,920円、1年で215,040円です。

がんで収入が減ったときは、申請すれば保険料が全額・4分の3・半額・4分の1のいずれかで免除になるか、納付猶予になります。単身なら、全額免除の基準は前年所得67万円以下。

会社を辞めた人には、本人の前年所得を問わない「失業等による特例免除」があります。

払えないからといって、未納のままにしないようにしましょう。免除の期間は障害基礎年金の保険料の要件で「納めた期間」と同じに数えられ、未納の期間は数えられません。

このページの内容

この制度を使う人・使わない人

免除や納付猶予を申請するのは、国民年金の保険料を自分で納めている第1号被保険者です。次の表で、自分がどこに当たるかを確かめましょう。

立場国民年金保険料このページの制度
自営業・フリーランス・農業など自分で納める(月17,920円)対象
会社を辞めて国民健康保険に入った人自分で納める対象。退職した人の特例がある
会社員・公務員として厚生年金に入っている人給与から天引き(厚生年金保険料)対象外
会社員の配偶者の扶養に入っている人自分では納めない対象外
障害基礎年金を受けている人届出で免除(法定免除)別の届出(後で説明)
60歳以降に任意加入している人自分で納める免除・猶予の申請はできない

自営業の人は、会社員と違って健康保険の傷病手当金がありません。治療で店を閉める日が続くと、収入はそのまま減ります。それでも国民年金保険料の請求は毎月届きます。

働き方ごとに使える制度の全体は自営業・フリーランスのがんとお金にまとめました。

免除の4段階と納付猶予:所得の基準

免除の審査では、本人・配偶者・世帯主の前年所得を見ます。納付猶予は20歳以上50歳未満の人が使える制度で、審査するのは本人と配偶者の所得だけです。

世帯主(たとえば同居の親)の所得が高くて免除にならない若い世代には、こちらが使える場合があります。

種類前年所得の基準(この額以下)納める額(令和8年度・月額)
全額免除(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円0円
4分の3免除88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等4,480円
半額免除128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等8,960円
4分の1免除168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等13,440円
納付猶予(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円0円(後で納めないと年金額に入らない)

地方税法上の障害者・寡婦・ひとり親に当たる人は、基準額が変わります。人工肛門などで身体障害者手帳を受けた人は、申請のときに窓口で伝えましょう。手帳の仕組みはがんと身体障害者手帳で説明しています。

計算例:扶養する家族がいる場合といない場合

単身で扶養親族がいない人の全額免除の基準は、(0+1)×35万円+32万円=67万円です。配偶者と子ども1人を扶養している人なら、(2+1)×35万円+32万円=137万円です。

ただし免除の審査には配偶者と世帯主の所得も入ります。本人の所得が基準以下でも、同じ世帯の配偶者に一定の所得があれば、全額免除にならないことがあります。

一部免除が免除の期間になるのは、減らした後の保険料を納めたときだけです。半額免除が承認されても8,960円を納めなければ、その月は未納と同じ扱いです。

「前年所得」なので、収入が減った年の翌年度に効く

免除の「年度」は7月から翌年6月までです。令和8年度分(令和8年7月〜令和9年6月)は、令和7年中の所得で審査されます。

がんで仕事を休んで収入が落ちた年は、前年の所得がまだ高く、基準に入らないことがあります。所得が下がった年の翌年7月からが、免除を受けやすくなる時期です。毎年7月を申請の目安にしておきましょう。

会社を辞めて退職後も健康保険の傷病手当金を受けている人は、その給付が所得税のかからない非課税所得であることも知っておきましょう(国税庁)。免除の審査での扱いは、申請のときに窓口で確かめると確実です。

会社を辞めた人は「失業等による特例免除」

「退職した年は前年の給料が高いから、免除は無理」と思っていませんか。失業・倒産・事業の廃止などの事実が確かめられれば、失業した本人の前年所得は問われません。

免除は失業等のあった月の前月から受けられます。

配偶者や世帯主の所得は、引き続き審査の対象です。

立場失業等を確かめる書類の例
雇用保険に入っていた人雇用保険被保険者離職票のコピー、雇用保険受給資格者証・受給資格通知のコピーなど
事業を廃止(廃業)・休止した人税務署への個人事業の開廃業等届出書・事業廃止届出書の写し、保健所への廃止届出書の控え(受付印のあるもの)、履歴事項全部証明書・閉鎖事項全部証明書など

書類の種類によっては、失業の状態にあることを書式で申し立てる必要があります。自営業の人が治療のために休業しているだけで、廃業や休止の届出をしていない場合は、通常の所得基準で審査されます。

特例免除で承認された人も、翌年度は改めて申請が必要です。全額免除・納付猶予の人のように、自動で継続審査にはなりません。

退職の前後に確かめることはがんで仕事を辞める前に確認することにまとめています。

免除・納付猶予・未納の違い

老齢基礎年金の受給資格期間老齢基礎年金の額障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間
納付数える全額で計算数える
全額免除数える2分の1で計算数える
4分の3免除数える8分の5で計算数える
半額免除数える8分の6で計算数える
4分の1免除数える8分の7で計算数える
納付猶予数える反映しない数える
未納数えない反映しない数えない

年金額の割合は平成21年4月分以降のものです。全額免除の期間に2分の1が残るのは、老齢基礎年金の半分を税金でまかなっているためです。未納にすると、この税金の分も受け取れません。

40年間すべて全額免除だった場合、老齢基礎年金は年423,650円です。40年納めた場合の847,300円のちょうど半分にあたります。

がんの人が一番気にしたいこと:障害年金の保険料の要件

がんは障害年金の対象になる病気です。障害基礎年金を請求するには、保険料の要件を満たしている必要があります。基準になるのは、がんで初めて医師の診療を受けた日(初診日)の前日の時点の記録です。

要件中身
原則初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上
特例初診日が令和18年3月末日までにあり、初診日に65歳未満なら、前々月までの直近1年間に未納がない

この表の「免除期間」には、全額免除・一部免除・納付猶予が入ります。払えなかった月が同じでも、申請して免除になっていれば要件を満たし、申請せず未納なら満たさない、ということが起こります。

ここは見落としやすい点です。日本年金機構は、病気が起きてから過去にさかのぼって免除を申請しても、障害基礎年金の保険料の要件には算入されないと明記しています。

がんと診断された後で慌てて手続きしても、初診日より前の未納は埋まりません。収入が不安定になった時点で、早めに申請しておく意味はここにあります。

すでに診断を受けた人が今からできること

初診日より前の記録は変えられません。それでも、これから先の月を免除にしておく意味はあります。老齢基礎年金の受給資格期間と額、遺族基礎年金の要件に関わるからです。

初診日がいつになるか、保険料の要件を満たしているかは、年金事務所で納付記録を見ながら確かめられます。障害年金の認定基準や請求の流れはがんと障害年金で説明しています。

障害基礎年金を受け始めたら「法定免除」の届出

障害基礎年金(または被用者年金の2級以上の障害年金)を受けるようになった人は、申請の審査なしに保険料が免除されます(法定免除)。認定された日を含む月の前月の分から免除です。

手続きは「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」を、住民登録のある市区町村の国民年金担当窓口に出します。年金証書が届いたら、早めに出しましょう。

さかのぼって認定された場合、該当した日以降に納めていた保険料は原則として返されます。将来の老齢基礎年金を満額に近づけたいときは、あとで追納する道も残っています。

年金額への影響と追納

免除の期間は、年金額が減ります。1年分(12か月)を全額免除にすると、老齢基礎年金は年に約1万円少なくなる計算です(847,300円÷40年×2分の1=約10,591円)。

あとで経済的に余裕ができたら、免除や納付猶予を受けた期間の保険料を納め直せます。これを追納といい、追納が承認された月の前10年以内の期間が対象です。

項目中身
追納できる期間承認された月の前10年以内の免除・納付猶予の期間
増える年金額の目安1年分の追納で、全額免除の期間なら年約1万円、納付猶予の期間なら年約2万円
加算額承認を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が上乗せされる
令和8年度中に追納する額の例令和7年度の月分(全額免除・納付猶予)17,510円、令和6年度の月分16,980円(いずれも加算なし)
税金追納した保険料は全額が社会保険料控除の対象
書類国民年金保険料 追納申込書

治療中は免除で保険料を止め、仕事に戻って収入が戻ってから、加算がつく前(承認を受けた期間の翌年度から数えて2年度目まで)に追納する。そういう使い方ができる制度です。

一部免除の期間は、減らした後の保険料を納めていないと追納もできません。

2年1か月前までさかのぼれる

免除の申請は、保険料の納付期限から2年を過ぎていない期間までさかのぼれます。申請した時点から見て2年1か月前までの月です。

たとえば令和6年9月分の保険料は、納付期限が令和6年10月31日でした。

免除の申請期限はその2年後で、10月31日が土曜日にあたるため、窓口や郵送では直前の営業日の令和8年10月30日までに受け付けてもらう必要があります。

未納の通知が溜まっていても、2年以内の分は免除に切り替えられます。ただし先に書いたとおり、病気が起きた後にさかのぼった免除は、その病気の障害年金の要件には数えられません。

老齢年金と遺族年金のためには、さかのぼる意味があります。

申請の手順

順番すること窓口・方法
1前年に税の申告をしていない家族(本人・配偶者・世帯主)がいないか確かめる。いれば市区町村で住民税の申告を済ませる市区町村の税務担当窓口
2退職・廃業した人は、離職票や廃業届の写しなどを用意する勤務先・ハローワーク・税務署
3免除・納付猶予の申請書を出す。基礎年金番号通知書またはマイナンバーカードなどを添える住所地の市区町村の国民年金担当窓口、年金事務所、郵送、電子申請
4承認・却下の通知を受け取る。一部免除なら、減らした後の保険料を納める届いた納付書・口座振替など
5翌年度も希望するなら継続審査、特例免除の人は改めて申請する毎年7月が年度の切り替わり

所得を証明する書類は、原則として添付しなくてかまいません。申請すると、市区町村が持っている所得の情報を年金事務所に渡すことに同意したことになります。

申請書は「ねんきんネット」の画面でも作れます。体調が悪く窓口に行けない時期は、郵送か電子申請を使いましょう。

申請前のチェックリスト

  • 自分が国民年金の第1号被保険者か(自営業・退職後に国保に入った人など)
  • 前年の所得が、全額・4分の3・半額・4分の1免除のどの基準に入りそうか
  • 配偶者・世帯主の前年所得も審査に入ること
  • 退職・廃業した人は、離職票や雇用保険受給資格者証、廃業届の写しなどが手元にあるか
  • 未納の月がないか(ねんきんネットや年金事務所で納付記録を確かめる)
  • 2年1か月以内の未納があれば、免除の申請でさかのぼれるか
  • 一部免除になったら、減らした後の保険料を毎月納める段取り
  • 障害基礎年金を受け始めたら、法定免除の届出を市区町村に出すこと
  • 仕事に戻ったら、追納を考える時期(翌年度から数えて3年度目に入ると加算がつく)

よくある質問

免除を受けると、障害年金を受け取るときに不利になりますか?

保険料の要件では、免除の期間は納めた期間と同じに数えられます。不利になるのは未納のほうです。受け取る障害基礎年金の額は等級で決まり、免除の期間があっても減りません。

令和8年度の額は2級で年847,300円です。

入院中で窓口に行けません。家族が代わりに申請できますか?

申請書は郵送で出せます。電子申請も使えます。家族が窓口に行く場合に必要な書類は、市区町村や年金事務所に先に確かめましょう。

前年は会社員でした。退職後すぐに免除を申請できますか?

退職して第1号被保険者になった人は、失業等による特例免除を申請できます。離職票などのコピーを添えれば、本人の前年の給与は審査に入りません。配偶者や世帯主の所得は審査されます。

国民健康保険料も払えません。同じ窓口で相談できますか?

国民年金と国民健康保険は別の制度で、申請も別です。どちらも市区町村に窓口があるので、同じ日に回れます。国保の軽減と減免は国民健康保険料(税)の減免と軽減で説明しています。