小児がん(悪性新生物)は、国の小児慢性特定疾病の医療費助成の対象です。認定を受けると、保険がきく医療費の自己負担は、世帯の所得に応じて月0円から15,000円までが上限になります。

重症の基準に当たれば上限はさらに下がり、市町村民税が課税されている世帯でも月2,500〜10,000円です。対象は18歳未満で、18歳以降も治療が続くと認められれば20歳未満まで延長されます。

助成を受けるには申請が要ります。さかのぼれるのは原則として申請日から1か月なので、診断が出たら早めに手続きしましょう。

このページの内容

小児慢性特定疾病の医療費助成とは

小児慢性特定疾病は、長く続き、命や生活の質に長期にわたって影響し、高額な医療費の負担が続く子どもの病気を国が定めたものです。

厚生労働省の資料では16の疾患群・801の疾病があり、その1番目が悪性新生物です。

助成を行うのは、住んでいる都道府県、指定都市、中核市、児童相談所設置市。窓口は自治体によって保健所や子ども関係の課など違うので、役所のホームページで「小児慢性特定疾病」を探しましょう。

項目中身
対象年齢18歳未満。18歳になった時点で対象で、その後も治療が必要と認められれば20歳未満まで
対象になる医療指定医療機関で受けた保険診療
患者の負担割合2割(さらに所得に応じた月の上限まで)
入院中の食費2分の1を自己負担
受給者証の認定期間原則1年(更新が必要)

自己負担の上限月額(所得の階層ごと)

上限は、受診する子どもと同じ医療保険に入っている世帯の市町村民税の額で決まります。かっこ内の年収は、夫婦2人と子1人の世帯の目安です。

階層世帯の所得一般重症人工呼吸器等装着者
Ⅰ生活保護0円0円0円
Ⅱ市町村民税非課税・低所得Ⅰ(〜82.65万円)1,250円1,250円500円
Ⅲ市町村民税非課税・低所得Ⅱ(82.65万円超)2,500円2,500円500円
Ⅳ一般所得Ⅰ:市町村民税7.1万円未満(約200〜430万円)5,000円2,500円500円
Ⅴ一般所得Ⅱ:市町村民税7.1万〜25.1万円未満(約430〜850万円)10,000円5,000円500円
Ⅵ上位所得:市町村民税25.1万円以上(約850万円〜)15,000円10,000円500円

「重症」は次のどちらかです。1つは、医療費の総額が月5万円を超える月が年に6回以上ある場合。医療保険の2割負担なら、自己負担が月1万円を超える月が年6回以上という目安です。

もう1つは、国の重症患者基準に当たる場合です。

重症に当たるかどうかは、自治体の審査で決まります。治療が長くなり、高い医療費の月が続いてきたら、重症の申請ができるかを窓口に聞いてみましょう。

計算例:入院した月と1年間の負担

年収約600万円の会社員の家庭(階層Ⅴ・一般)で、子どもが入院し、その月の総医療費(10割)が100万円だったとします。

助成がなければ、高額療養費だけで考えることになります。保護者の健康保険の区分が年収約370〜770万円(区分ウ)なら、85,800円+(100万円−28万6千円)×1%=92,940円です。

小児慢性特定疾病の受給者証があれば、この月の医療費の自己負担は上限の10,000円までです。差は8万円を超えます。ここに入院中の食費の半分が加わります。

同じ家庭が重症の認定を受けると、上限は月5,000円です。12か月続いても5,000円×12=60,000円になります。一般のままなら10,000円×12=120,000円です。

上限は「月額」で、外来と入院を合わせた額です。受診のたびに、医療受給者証を窓口に出しましょう。複数の病院や薬局にかかるときの上限の管理の仕方は、自治体の案内に従います。

申請から受給者証が届くまで

「指定医療機関にかかっていれば、何もしなくても助成される」と思っていませんか。実際は、保護者が自治体に申請し、審査を受けて医療受給者証をもらう必要があります。

順番やること注意点
1指定医療機関で診断を受ける指定医療機関の一覧は自治体が公表している
2小児慢性特定疾病指定医に医療意見書を書いてもらう意見書を書けるのは指定医だけ。作成に時間がかかるときは先に窓口へ相談
3申請書と必要書類をそろえて自治体の窓口に出す必要書類は自治体ごとに違う。健康保険の加入がわかるもの、世帯の課税状況など
4審査会の審査、結果の通知認定されると医療受給者証が届く。認定期間は原則1年

2023年10月から、助成の開始日を申請日より前にさかのぼれるようになりました。さかのぼれるのは、指定医が医療意見書に書いた診断年月日までです。

ただし、さかのぼれる期間は原則として申請日から1か月です。入院中で書類をそろえられなかったなど、やむを得ない理由があるときは最長3か月まで認められます。

診断から申請までが1か月を超えると、最初の月の医療費が助成から外れるかもしれません。意見書を待つ間に、窓口へ電話で相談しておきましょう。

受給者証が届くまでの支払い

申請してから受給者証が届くまでの間も、治療は進みます。その間の窓口では、健康保険の負担割合で払います。小学校に入る前の子どもは2割、それより上の子どもは3割です。

この期間も、高額療養費の上限は使えます。子どもが親の扶養に入っているなら、上限は親(被保険者)の所得区分で決まります。マイナ保険証で受診すれば、窓口の支払いは最初から上限までです。

たとえば未就学の子どもが総医療費50万円の入院をした月、親の区分がウなら、2割の10万円ではなく85,800円+(50万円−28万6千円)×1%=87,940円が上限になります。

受給者証の開始日がさかのぼった場合、その期間に払いすぎた分をどう精算するかは自治体ごとに決まっています。領収書は捨てずに取っておきましょう。

自治体の子ども医療費助成との関係

こども家庭庁の調査では、2025年4月1日時点で、すべての都道府県と市区町村が子どもの医療費の助成を行っています。

市区町村では、通院・入院とも18歳になった年度の末まで(高校生の年代まで)とする例が最も多い結果でした。

このため、住んでいる市区町村によっては、小児慢性特定疾病の上限額の分も子ども医療費助成で補われ、窓口の支払いがほとんどない場合があります。

一方で、対象年齢、所得制限、1回あたりの一部負担金は自治体により異なります。どちらの制度を先に使うか、上限額の分をどう扱うかも、市区町村の子ども医療費助成の担当に確かめましょう。

注意したいのは、子ども医療費助成の対象年齢を過ぎたあとです。高校を卒業した年代で治療が続く場合、小児慢性特定疾病の受給者証が負担を抑える中心になります。更新を忘れないようにしましょう。

助成の対象にならない費用

小児慢性特定疾病の助成も子ども医療費助成も、対象は保険がきく医療費です。小児がんの治療では入院が長くなることがあり、医療費以外の出費が積み上がります。

  • 個室を希望したときの差額ベッド代
  • 付き添う家族の食事代、病院の近くに泊まる費用
  • 通院の交通費、駐車場代
  • きょうだいを預ける費用、親が仕事を休んだ分の収入の減少

このうち通院の交通費は、税金で一部取り戻せる場合があります。国税庁は、患者の年齢や病状からみて1人で通院させるのが危険なときは、付き添う人の交通費も医療費控除の対象としています。

ただし、入院中の子どもの世話のために家族が通う交通費は対象外です。電車やバスで通える場合のタクシー代、自家用車のガソリン代や駐車場代も対象になりません。計算の仕方は医療費控除のページにあります。

親が仕事を休むときの制度

子どもの治療が始まると、親のどちらかが付き添いのために仕事を休む場面が増えます。会社員や公務員の親が使える休みは、育児・介護休業法で決まっています。

制度対象日数
子の看護等休暇小学3年生修了までの子の看護、予防接種・健康診断の付き添いなど1年度に子1人なら5日、2人以上なら10日。時間単位でも取れる
介護休業2週間以上にわたり常時介護が必要な状態の家族(子も含む)対象家族1人につき通算93日、3回まで分けて取れる
介護休暇同上対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日

介護休業は親の介護のための制度と思われがちですが、厚生労働省の示す対象家族には子が含まれます。雇用保険に入っている人は、要件を満たせば休業開始時の賃金日額の67%の介護休業給付を受けられます。

子の看護等休暇が有給か無給かは、法律では決まっていません。勤務先の就業規則で確かめましょう。要介護状態に当たるかの基準や申し出の方法は家族の介護休業・介護休暇のページで詳しく書いています。

健康保険の傷病手当金は、加入している本人が病気で働けないときの給付です。子どもの付き添いで休んだ日には出ません。

治療後の予防接種をもう一度受ける費用

骨髄移植や抗がん剤の治療を受けると、それまでの予防接種でついた免疫が弱くなったり、なくなったりすることがあります。医師が必要と判断すれば、予防接種を受け直します。

定期予防接種は公費で受けられますが、受け直す分は定期接種の対象外です。そのため、接種費用は原則として全額が自己負担になります。

この再接種の費用を一部助成している市区町村があります。たとえば神戸市は、20歳未満の人を対象に、接種の前に認定の申請をし、接種後に費用を請求する形の補助です。

助成の有無、対象の年齢やワクチン、金額、手続きは市区町村ごとに違います。多くは接種の前に申請が要るので、主治医から再接種の話が出たら、受ける前に市区町村の予防接種の担当に問い合わせましょう。

自治体の自立支援事業と相談窓口

小児慢性特定疾病の制度には、医療費の助成のほかに自立支援事業があります。

相談支援は実施主体の自治体が必ず行う事業で、レスパイト、通院の付き添い支援、きょうだいへの支援、学習支援などは自治体の努力義務とされています。

どの事業があるかは自治体次第です。受給者証の申請の際に、窓口で「自立支援事業で使えるものはあるか」と聞いておきましょう。

全国の小児がん拠点病院には、がん相談支援センターがあります。患者や家族のほか、その病院に通っていない人も無料で相談でき、お金や制度の相談もできます。

申請の前に準備するもの

  • 主治医が小児慢性特定疾病指定医か、かかっている病院が指定医療機関かの確認
  • 指定医が書いた医療意見書(診断年月日が書かれているか)
  • 子どもと同じ医療保険に入っている家族の、市町村民税の課税状況がわかる書類
  • 健康保険の加入がわかるもの(マイナ保険証の資格情報や資格確認書など。自治体の指示に従う)
  • 住んでいる市区町村の子ども医療費助成の受給者証
  • 領収書の保管(医療費控除と、重症の申請の確認に使う)
  • 親の勤務先の就業規則(子の看護等休暇・介護休業の扱い)

よくある質問

小児がんの医療費は無料になりますか?

小児慢性特定疾病の助成だけなら、生活保護の世帯を除き、月1,250円から15,000円の自己負担があります。市区町村の子ども医療費助成で、その分も補われる場合があります。

入院中の食費の半分や差額ベッド代などは、別に払う費用です。

申請が遅れました。前の月の医療費は戻りますか?

助成の開始日は、原則として申請日から1か月前まで、やむを得ない理由があれば最長3か月前までさかのぼれます。

それより前の月は助成の対象外ですが、高額療養費の払い戻しは診療月の翌月1日から2年まで申請できます。

受給者証はどこの病院でも使えますか?

助成の対象は、自治体が指定した指定医療機関で受けた保険診療です。転院や、治療後に近くの病院へ通う予定があるときは、その病院が指定医療機関かを自治体の一覧で確かめましょう。

18歳を過ぎても助成は続きますか?

18歳になった時点で対象になっていて、その後も治療が必要と認められれば、20歳未満まで続けて受けられます。受給者証は原則1年ごとの更新なので、更新の時期を自治体に確かめておきましょう。

20歳を過ぎてからの生活費はどうなりますか?

障害の状態によっては障害年金を請求できる場合があります。初診日が20歳前にあると、保険料の納付要件は問われません。若い世代の制度はAYA世代のがんとお金にまとめています。