家族ががんで介護が必要になったら、勤務先に介護休業を申し出られます。対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れる決まりです。

休業中の給与は原則として出ませんが、雇用保険に入っていれば介護休業給付金があります。額は休業開始時の賃金日額の67%で、休業前の賃金が月30万円なら30日で201,000円です。

半日や1時間だけ抜けたい日は、年5日(対象家族が2人以上なら10日)の介護休暇を使えます。介護保険の要介護認定を受けていなくても、厚生労働省の判断基準に当たれば対象になります。

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使える制度の全体

家族の介護のために会社員が使える制度は、育児・介護休業法で決まっています。がんの家族の介護でよく使うのは、次の3つです。

制度日数・期間単位休んだ日の収入
介護休業対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割まとまった日数原則無給。雇用保険の介護休業給付金(賃金日額の67%)
介護休暇1年に5日まで(対象家族が2人以上なら10日まで)1日または時間単位就業規則による
短時間勤務等の措置利用開始から3年以上の期間で2回以上会社が設けた制度(短時間勤務・フレックスタイム・時差出勤・介護費用の助成など)就業規則による

対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。義理の親の介護でも使えます。

公務員は別の法律で、日数も違います。国家公務員の介護休暇は通算6月以内です。詳しくは公務員ががんになったらに載せています。

「要介護状態」は認定がなくてもよい

「介護保険の認定を受けていないから、介護休業は取れない」と思っていませんか。厚生労働省は、要介護認定を受けていることは必ずしも要件ではない、と答えています。

介護休業の対象は、けがや病気、障害で、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族です。判断は次の基準で行います。

基準中身
(1) 介護保険の認定要介護状態区分で要介護2以上
(2) 12の項目座位保持(10分間一人で座っていられるか)、歩行(立ち止まらず座り込まずに5m程度歩けるか)などの12項目のうち、「2」が2つ以上または「3」が1つ以上当てはまり、その状態が続くと認められる

(1)か(2)のどちらかに当たればよい仕組みです。がんの家族では、手術や入院のあとに歩行や着替えに介助が要る時期があります。認定の申請がまだでも、(2)の基準で判断できます。

会社から証明を求められたら、出せる範囲で出しましょう。厚生労働省は、証明書類は医師の診断書などに限られない、としています。

基準に厳密にこだわって取得が妨げられないよう、事業主には柔軟な運用が望まれる、とも示されています。

介護休業は「体制をつくる」ための休み

介護休業は、家族に付きっきりで介護するための休みではありません。厚生労働省は「介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するもの」と位置づけています。

93日は、介護保険の申請、ケアマネジャーとの打合せ、在宅療養の準備、施設や入院先との調整など、仕事と介護を続けられる形を整えるための期間です。この考え方で、がんの場面に当てはめると次のようになります。

場面使いやすい制度その間にすること
診断・検査・手術の説明に付き添う介護休暇(時間単位)、年次有給休暇治療の予定を聞き、休みが必要になる時期の見通しを立てる
入院中・退院が決まったとき介護休業(1回目)介護保険の申請、病院の相談窓口と退院後の生活の相談、ケアマネジャー探し
通院の付き添いが続く時期介護休暇、短時間勤務・時差出勤通院の曜日に合わせて働き方を組み直す
在宅療養に切り替えるとき介護休業(2回目)訪問診療・訪問看護・福祉用具の手配、家族の分担を決める
病状が変わって介護の量が増えたとき介護休業(3回目)サービスの量の見直し、施設や入院先との調整

93日を3回に分けるなら、たとえば30日・30日・33日です。1回目に長く使い切ると、病状が変わったときに残りが少なくなります。

がんは治療の段階で介護の量が変わるので、分割できることを前提に組み立てましょう。

40歳以上の家族なら介護保険の申請を早めに

40〜64歳の人も、医師が回復の見込みがない状態に至ったと判断したがんは、介護保険の特定疾病に入ります。申請書には「がん」とだけ書けば受理される扱いです。

認定の結果は原則として申請から30日以内に出て、効力は申請日にさかのぼります。介護休業の1回目のうちに申請まで済ませると、休業が終わってからサービスを使い始められます。

急ぐ理由は、もう一つ。国立がん研究センターの遺族調査(令和4年3月)で、介護保険を「申請したが利用できなかった」と答えたのは4,849名でした。

その49.8%にあたる2,413名は、認定に必要な調査を受ける前に患者が亡くなったという理由です。がんは短い期間で状態が変わることがあるので、休業で時間を取れるうちに申請を済ませましょう。

介護保険の申請から使い方までは介護保険(40歳からのがん)、在宅療養の費用は在宅療養・訪問看護の費用にまとめています。

介護休業給付金の額と計算例

雇用保険の被保険者が介護休業を取ると、ハローワークから介護休業給付金が出ます。会社が給与を払わない休業でも、収入がゼロになるわけではありません。

項目内容
対象雇用保険の一般被保険者・高年齢被保険者
加入期間休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上(または80時間以上)の月が12か月以上
額休業開始時賃金日額 × 支給日数(通常30日)× 67%
賃金日額原則、休業開始前6か月の賃金の合計 ÷ 180。上限・下限があり、毎年8月1日に変わる
限度同じ家族について通算93日・3回まで
休業中の就業1か月ごとの期間で就業日数が10日以下

計算例

休業前6か月の賃金の合計が180万円(月30万円)の人の場合です。賃金日額は180万円÷180=1万円です。

  • 30日休んだ月:1万円×30日×67%=201,000円
  • 93日すべてを使った場合:1万円×93日×67%=623,100円

休業中に会社から賃金が出ると、調整があります。賃金と給付金の合計が「賃金日額×支給日数」の80%を超えると、超えた分が減らされます。

同じ人が30日の休業中に賃金を10万円受け取った場合、80%の上限は30万円×80%=24万円です。給付金は24万円−10万円=14万円になります。賃金だけで24万円以上出ていれば、給付金は出ません。

申請の期限

申請は原則として勤務先を通して、事業所を管轄するハローワークに出します。本人が出すこともできます。

期限は、介護休業が終わった日の翌日から数えて2か月を経過する日の属する月の末日までです。3か月を超える休業は、開始日から3か月たった日が起点です。

休業から戻ったら、会社の担当者に手続きの進み具合を確かめましょう。

介護休暇:時間単位で抜けられる

介護休暇は、1年に5日まで、対象家族が2人以上なら10日まで取れます。1年は、会社が別に決めていなければ4月1日から翌年3月31日までです。

2023年1月から時間単位でも取れるようになりました。申し出は書面でなくても、口頭でかまいません。厚生労働省は、使う場面の例として次を挙げています。

  • 通院の付き添い
  • 介護サービスを使うための手続きの代行
  • ケアマネジャーなどとの短時間の打合せ

抗がん剤の点滴の日に家族を病院へ送り、昼から出社する。こうした使い方なら、介護休業の93日を減らさずに済みます。休んだ時間の給与が出るかどうかは、就業規則を確かめましょう。

勤務先への申し出の手順

介護休業は、休業を始める予定日の2週間前までに、書面などで会社に申し出ます。急な入院や退院で間に合わないときも、まず人事に相談しましょう。

会社が就業規則で2週間より短い期限を決めることは認められているので、規則も見ておきましょう。

順番することポイント
1上司・人事に、家族の介護が必要になったことを伝える2025年4月から、会社は申し出た人に制度・申出先・介護休業給付金を個別に知らせ、利用の意向を確かめる義務がある
2就業規則で、介護休業・介護休暇・短時間勤務の決まりと給与の扱いを確かめる会社の制度が法律より手厚いこともある
3介護休業申出書を出す(開始予定日の2週間前まで)対象家族、開始予定日・終了予定日などを、会社の様式に沿って書く
4会社から、開始日・終了日などの通知を受け取る会社は書面などで速やかに通知する
5延長が必要なら、終了予定日の2週間前までに申し出る1回の申出ごとに1回、理由を問わず終了日を繰り下げられる
6休業が終わったら、介護休業給付金の申請(会社経由)終了日の翌日から2か月を経過する月の末日まで

開始日を早めたり遅らせたりする決まりは法律にないので、変更は会社と話し合って決めます。会社は、取得を控えさせるような対応をしてはいけないことになっています。

取れる人・取れない人

  • 日々雇われる人は対象外
  • 期間を決めて雇われている人は、休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに、契約が終わって更新されないことが明らかでなければ取れる
  • 労使協定があると、入社1年未満の人、申し出から93日以内に辞めることが明らかな人、週2日以下の勤務の人は対象外にされることがある
  • 介護休暇は、労使協定で対象外にできるのが週2日以下の勤務の人だけになった(入社6か月未満の除外は2025年4月に廃止)

自営業・フリーランスの人は、雇われていないので介護休業の対象になりません。家族の介護で仕事を減らすときの備えは、自営業・フリーランスのがんとお金で、使える制度を確かめましょう。

申し出る前のチェックリスト

  • 家族の状態が「2週間以上の常時介護」に当たるか(要介護2以上、または12項目の基準)
  • 家族が40歳以上なら、介護保険の申請をしたか・する予定か
  • 就業規則の介護休業・介護休暇・短時間勤務の決まりと、給与の扱い
  • 雇用保険に入っているか、休業開始前2年間に12か月以上の加入月があるか
  • 93日のうち、すでに使った日数と回数(同じ家族について通算)
  • 1回目の休業でしておくこと(介護保険の申請、ケアマネジャー、退院後の生活の相談)
  • 休業開始予定日の2週間前という申出の期限
  • 休業中に会社から出る賃金の有無(給付金の80%の調整に関わる)
  • きょうだいなど、ほかの家族と休む時期の分担

相談できる窓口

  • 勤務先の人事・総務:介護休業の申出書、就業規則、給付金の手続き
  • 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室):制度の使い方の相談、会社とのトラブル
  • ハローワーク:介護休業給付金の要件と額
  • がん相談支援センター:がん診療連携拠点病院などにあり、家族からの相談も無料で受けている。お金や仕事のことも相談できる
  • 市区町村の介護保険の窓口・地域包括支援センター:介護保険の申請

親ががんになったときのお金の全体像は親ががんになったとき、働く本人ががんになった場合の制度はがん治療と仕事の両立で説明しています。

よくある質問

末期のがんの親のために介護休業を取れますか?

親が2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態なら、取れます。介護休業は介護の体制をつくるための休みと位置づけられていますが、在宅療養の準備や訪問看護との調整はこれに当たります。

93日を3回に分けられるので、状態が変わる時期に合わせて残しておくのも一つの方法です。

入院中の家族のためにも取れますか?

法律の定義には、入院しているかどうかの条件は書かれていません。条件は、家族が2週間以上の常時介護を必要とする状態にあることです。退院に向けた準備や、介護保険の申請に休業を使えます。

きょうだいで同じ親の介護休業を取れますか?

介護休業は、働く人それぞれが自分の勤務先に申し出る仕組みです。きょうだいが別々に取り、時期をずらして分担することもできます。介護休業給付金も、雇用保険に入っている人ごとに申請します。

会社に「うちには介護休業の制度がない」と言われたら?

介護休業は、育児・介護休業法で決まっている制度です。会社独自の福利厚生ではありません。

社内で話が進まないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談しましょう。相談の前に、家族の状態と休みたい期間をメモにしておくと話が早く進みます。

介護休業給付金はいつ申請しますか?

原則として、介護休業が終わってから勤務先を通して申請します。期限は、休業が終わった日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日までです。会社の担当者と、書類を出す時期を決めておきましょう。