国民健康保険の保険料(市区町村によっては国民健康保険税)は、前年の所得と世帯の人数で決まり、計算方法は市区町村ごとに違います。

それでも、収入が減ったときに保険料を下げる仕組みのうち3つは、どこに住んでいても共通です。

1つ目は、世帯の所得が基準以下なら均等割・平等割を7割・5割・2割減らす法定の軽減です。

令和8年度の基準は、単身で前年所得43万円以下なら7割、74万円以下なら5割、100万円以下なら2割にあたります。

2つ目は、解雇や雇い止め、病気などの正当な理由で会社を辞めた人の、前年の給与所得を30/100として計算する軽減です。

3つ目が、市区町村が条例で決める減免です。こちらは中身も額も自治体により異なります。

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保険料は「人数で決まる分」と「所得で決まる分」の合計

国保の保険料(税)は世帯単位で計算します。加入者ごとに、人数にかかる分(応益分)と所得にかかる分(応能分)を出して合計するしくみです。

区分名前決まり方法定の軽減
応益分均等割加入者1人あたりの定額7割・5割・2割の対象
応益分平等割1世帯あたりの定額(設けていない市区町村もある)7割・5割・2割の対象
応能分所得割前年の所得に料率を掛ける対象外

所得が少ない年でも、均等割と平等割は人数に応じてかかります。その定額部分を下げるのが法定の軽減です。所得割は所得が減ればそのまま下がるので、軽減の仕組みはありません。

料率や均等割の額は市区町村が決めるため、このページでは具体的な保険料の額を出しません。住んでいる市区町村の国保の窓口で、試算してもらうのが確実です。

法定の軽減(7割・5割・2割)の所得基準

基準は国民健康保険法施行令で決まっていて、全国で同じです。基準になる43万円は、住民税の基礎控除の額(地方税法)です。

軽減世帯の前年所得の合計がこの額以下(令和8年度)
7割軽減43万円+10万円×(給与所得者等の数−1)
5割軽減43万円+31万円×(加入者の数+特定同一世帯所属者の数)+10万円×(給与所得者等の数−1)
2割軽減43万円+57万円×(加入者の数+特定同一世帯所属者の数)+10万円×(給与所得者等の数−1)

5割の31万円と2割の57万円は、令和7年度の30.5万円・56万円から引き上げられました。「給与所得者等」は、一定額を超える給与や公的年金の収入がある人のことです。

数え方の細かい決まりは市区町村の案内で確かめましょう。

「特定同一世帯所属者」は、国保から後期高齢者医療制度に移り、同じ世帯にいる人を指します。

計算例

単身で、収入が自営業の所得だけ(給与所得者等にあたらない)の人の場合を考えます。

前年所得が90万円なら、5割の基準(43万円+31万円×1人=74万円)は超えますが、2割の基準(43万円+57万円×1人=100万円)以下なので、2割軽減の対象です。

夫婦2人とも国保に入っていて、世帯の所得が合計100万円(給与所得者等は1人以下)の場合はどうでしょう。5割の基準は43万円+31万円×2人=105万円で、100万円はその範囲に入ります。

均等割は2人分とも、平等割とあわせて半額に。

軽減の判定には、世帯主と加入者全員の所得がわかっている必要があります。国保に入っていない世帯主の所得も、判定では数える点に注意。

世田谷区のように、軽減を申請なしで適用する一方で、収入がなかった人にも住民税の申告を求める例があります。申告がないと軽減の判定ができないため、治療で収入がなかった年も申告の要否を確かめましょう。

がんの治療中に知っておきたい「前年所得」のずれ

「収入が減ったのに、国保の保険料が下がらない」。ここは見落としやすい点です。国保の保険料は前年の所得で計算するため、収入が減った年の保険料は、まだ高かった前の年の所得で決まります。

たとえば、令和7年の秋に診断を受けて休業し、収入が大きく落ちた場合。令和7年中の所得が下がっていれば、それが反映されるのは令和8年度の保険料からです。

休業が令和8年に入ってからなら、反映は令和9年度になります。

保険料の年度計算に使う所得休業した時期との関係
令和8年度令和7年中の所得令和7年に休業していれば、その分が反映される
令和9年度令和8年中の所得令和8年に休業した分は、ここで初めて反映される
令和10年度令和9年中の所得復職して収入が戻れば、ここで保険料も戻る

このずれのため、治療が始まった年は、所得の高かった時期の保険料と治療費が同時にかかります。法定の軽減も前年所得で判定するので、この時期は対象にならないことがあります。

その場合に頼れるのは、退職した人なら次の非自発的失業者の軽減、それ以外の人なら市区町村の減免です。どちらも当てはまらないときは、納め方の相談に進みましょう。

会社を辞めた人の軽減(非自発的失業者の軽減)

倒産や解雇、雇い止め、病気などの正当な理由で会社を辞めた人には、在職中と同じくらいの負担で国保に入れるよう、前年の給与所得を30/100として保険料を計算する仕組みがあります(厚生労働省)。

項目中身
対象雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇など)、特定理由離職者(雇い止め、病気などの正当な理由のある自己都合退職など)。離職日に65歳未満
確かめる書類雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の「離職理由」欄のコード。特定受給資格者は11・12・21・22・31・32、特定理由離職者は23・33・34
軽減の中身本人の前年の給与所得を30/100として、保険料と高額療養費などの所得区分を計算する。給与所得以外の所得は減らない
期間離職日の翌日の属する月から、その翌年度の末まで
手続き市区町村の国保の窓口への届出(新宿区は「特例対象被保険者等に係る届」)。受給資格者証などと本人確認書類を持参

対象・コード・期間・届出は、新宿区の案内に書かれている内容です。届出の様式や受け付け方は市区町村によって違います。

計算例:前年の給与所得が300万円だった人

前年の給与所得が300万円の人なら、保険料の計算では300万円×30/100=90万円として扱われます。所得割の計算の元になるのも、この90万円です。

単身で、ほかに所得がなければ、法定の軽減の判定でも90万円で見る計算になり、2割軽減の基準(100万円)に入ります。最終的な判定は市区町村が行うので、届出のときに試算してもらいましょう。

高額療養費の所得区分も同じく30/100で判定されるため、治療費の自己負担の上限が下がることがあります。上限の仕組みは高額療養費(がんの場合)で説明しています。

病気で辞めた人が気をつけたいこと

病気による退職が特定理由離職者に当たるかどうかは、ハローワークが離職の事情をもとに判断します。会社が出す離職票の離職理由と、自分の事情が合っているかを確かめましょう。

もう1つは書類の問題です。療養中で、雇用保険の基本手当の受給期間の延長だけを申請している人は、受給資格者証や受給資格通知がそろっているかを先に確かめましょう。

そろわない場合の扱いは、市区町村の国保の窓口とハローワークに聞くのが確実です。

市区町村の減免(自治体により異なる)

厚生労働省は、災害その他特別の事情で保険料(税)を納めるのが難しい場合に、減免や納付猶予を受けられる場合があると案内しています。中身は市区町村の条例で決まります。

減免の対象として挙げられている事情の例は、災害で住宅や家財に被害を受けた場合、刑事施設などに入っている期間、会社の健康保険から国保に移った高齢者の元被扶養者などです(世田谷区の掲載例)。

病気で収入が大きく減った場合を減免の理由に含めるかどうかは、市区町村によって違います。

世田谷区の例では、減免はいずれも申請によって受けるものです。

住んでいる市区町村の国保の窓口で、「病気で収入が減った場合の減免はあるか」「前年と比べてどのくらい減ると対象か」「必要な書類は何か」を聞きましょう。

退職するとき:国保と任意継続を比べる考え方

会社を辞めるとき、健康保険は国保・任意継続・家族の扶養から選びます。国保と任意継続は、保険料の決まり方が根本的に違います。

比べる点国民健康保険任意継続(協会けんぽ)
保険料の元になるもの前年の所得と世帯の人数。毎年度計算し直す退職時の標準報酬月額。令和8年度は上限32万円。原則2年間変わらない
収入が減ったときの軽減法定の軽減、非自発的失業者の軽減、市区町村の減免なし(会社負担がなくなり、在職中のおおむね2倍)
家族の保険料家族も加入者として均等割がかかる扶養している家族の保険料はかからない
手続きの期限住所地の市区町村で加入の手続き退職日の翌日から20日以内

病気で辞めて非自発的失業者の軽減に当たる人は、国保のほうが安くなることがあります。一方、扶養する家族が多い人は、家族の保険料がかからない任意継続が有利になる場合もあります。

どちらが安いかは、市区町村の国保の窓口と協会けんぽの支部の両方で、退職前に見積もりを出してもらって決めましょう。

2年目は前年の所得が下がって国保の保険料が下がることもあります。任意継続は本人の申し出でやめられるので、2年目の国保の保険料がわかったら比べ直しましょう。

傷病手当金の継続給付や退職日の決め方など、辞める前に確かめることはがんで仕事を辞める前に確認することにまとめています。

払えないときは、滞納する前に相談する

軽減や減免を使っても納めきれないときは、そのままにせず、市区町村の国保の窓口に連絡しましょう。船橋市は、納期どおりに納めるのが難しい人に分割納付などの方法があると案内しています。

滞納を続けると、延滞金がかかるだけでなく、医療機関で医療費をいったん10割払う「特別療養費」の扱いになる場合があります(船橋市の案内)。

抗がん剤の点滴や検査が続く時期に10割の立て替えになると、家計への打撃は大きくなります。

船橋市は納付の相談を随時受け付けると案内しています。国民年金の保険料も同じ時期に重くなるので、国民年金保険料の免除・納付猶予も同時に申請しましょう。

生活費そのものが足りない場合は、がんで治療費が払えない・お金がないときの制度も確かめましょう。

窓口に行く前のチェックリスト

  • 世帯の全員(国保に入っていない世帯主も含む)の前年の所得がわかるか。収入がなかった人の住民税の申告は済んでいるか
  • 法定の軽減(7割・5割・2割)が今年度の保険料に適用されているか(納入通知書で確かめる)
  • 会社を辞めた人は、雇用保険受給資格者証または受給資格通知の離職理由コード
  • 非自発的失業者の軽減の届出を出したか
  • 市区町村に、病気で収入が減ったときの減免があるか。対象になる収入の減り方と必要な書類
  • 収入が減ったことを示せるもの(給与明細、帳簿、傷病手当金の支給決定通知など)
  • 退職前なら、国保と任意継続の保険料の見積もり
  • 納めきれない月があるときの分割納付などの相談先(国保の収納の担当)

よくある質問

軽減は自分で申請しないと受けられませんか?

7割・5割・2割の法定の軽減は、所得の申告がそろっていれば申請なしで適用する市区町村があります(世田谷区など)。非自発的失業者の軽減と市区町村の減免は、届出や申請が必要です。

傷病手当金を受けていると、国保の保険料は上がりますか?

健康保険の傷病手当金は、所得税のかからない非課税所得です(国税庁)。保険料の計算に使う所得にどう反映されるかは、市区町村の国保の窓口で確かめましょう。

自営業で、治療のために休業しています。非自発的失業者の軽減は使えますか?

この軽減は、雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者が対象なので、自営業の休業は当てはまりません。法定の軽減と市区町村の減免を確かめましょう。

別の市区町村に引っ越すと、保険料は変わりますか?

料率や均等割の額は市区町村ごとに条例で決まるので、同じ所得でも保険料は変わります。転入先の国保の窓口で、非自発的失業者の軽減や減免の届出を出し直す必要があるかも確かめましょう。

国保組合に入っています。同じ仕組みですか?

国民健康保険組合の保険料は組合の規約で決まります。軽減や減免の扱いは、加入している組合に問い合わせましょう。