75歳以上の人の窓口負担は、所得によって1割・2割・3割に分かれます。ただし、保険がきく医療費には月の上限があります。
2026年8月診療分から、住民税が課税されている一般の区分(1割・2割の人)は、外来だけなら個人で月22,000円、入院を含めると世帯で月61,500円が上限です。
外来には年間21万6千円の上限もあります。
2割負担の人の外来の負担増を月3,000円までに抑えていた配慮措置は、2025年9月30日の診療で終わりました。
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まず自分の負担割合を確かめる(1割・2割・3割)
後期高齢者医療制度に入っている人の窓口負担は、厚生労働省の基準で次のように決まります。判定は世帯単位です。
| 負担割合 | 主な条件 |
|---|---|
| 3割 | 現役並み所得者(住民税の課税所得が145万円以上)。ただし収入の合計が単身で383万円未満、複数世帯で520万円未満なら一般の区分 |
| 2割 | 課税所得が28万円以上で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で200万円以上、複数世帯で合計320万円以上 |
| 1割 | 上のどちらにも当たらない人 |
2割の判定に使う「年金収入」には、遺族年金と障害年金は入りません。2022年10月に2割負担が始まったとき、対象になったのは後期高齢者医療の加入者の約20%でした。
自分の割合は、広域連合や市区町村から届いた書類で確かめましょう。わからなければ、市区町村の後期高齢者医療の窓口で教えてもらえます。
2割の人の「月3,000円まで」は終わっている
「2割負担になっても、外来の増える分は月3,000円までで済む」と思っていませんか。この配慮措置は2022年10月1日から3年間の期限つきで、2025年9月30日の診療をもって終了しました。
2025年10月以降は、2割の人も外来の医療費の2割を窓口で払います。そのかわり、外来には高額療養費の上限があり、2026年8月からは月22,000円です。
たとえば外来の総医療費(10割)が月15万円の月を比べます。
| 負担割合 | 窓口で計算される額 | 外来の上限を当てはめた後 |
|---|---|---|
| 1割 | 15,000円 | 15,000円(上限に届かない) |
| 2割 | 30,000円 | 22,000円(8,000円は払わずに済むか、あとで戻る) |
通院の回数が多い月ほど、1割と2割の差は上限で縮まります。総医療費が月22万円を超えると、1割の人も2割の人も外来の負担は22,000円で同じになります。
70歳以上の高額療養費の上限(2026年8月〜2027年7月)
70歳以上の上限は、70歳未満と仕組みが違います。外来だけの「個人ごと」の上限と、入院も含めた「世帯ごと」の上限の2段階です。後期高齢者医療も、この表の額を使います。
| 区分 | 外来(個人ごと) | 外来+入院(世帯ごと) | 4か月目から | 年間上限(8月〜翌年7月) |
|---|---|---|---|---|
| 現役並みⅢ(課税所得690万円以上) | ― | 270,300円+(総医療費−901,000円)×1% | 140,100円 | 168万円 |
| 現役並みⅡ(課税所得380万円以上) | ― | 179,100円+(総医療費−597,000円)×1% | 93,000円 | 111万円 |
| 現役並みⅠ(課税所得145万円以上) | ― | 85,800円+(総医療費−286,000円)×1% | 44,400円 | 53万円 |
| 一般(1割・2割) | 22,000円(年216,000円まで) | 61,500円 | 44,400円 | 53万円 |
| 住民税非課税 | 11,000円(年96,000円まで) | 25,700円 | 24,600円 | 29万円 |
| 住民税非課税(所得が一定以下) | 8,000円 | 15,700円 | ― | 18万円 |
一般の区分のうち、年収約200万円まで(課税所得28万円未満)と確認できた人は、年間上限が41万円になります。41万円を超えた分は、2027年8月以降に払い戻される予定です。
2026年7月診療分までは、一般の外来の上限は月18,000円(年14.4万円)、非課税の外来は月8,000円でした。古い資料の額と見比べるときは、どの時期の額かを確かめましょう。
非課税の区分の名前は、広域連合によって「区分Ⅱ」「区分Ⅰ」などと呼び方が違います。2027年8月には一般の区分が細かく分かれる予定です。
計算例:通院が続く年、入院した月
1割負担・一般の区分の人が、通院だけで毎月の総医療費が25万円かかったとします。窓口の1割は25,000円ですが、外来の上限で毎月22,000円になります。
これが8月から翌年7月まで12か月続くと、22,000円×12=264,000円です。外来の年間上限が216,000円なので、12か月の負担は216,000円で止まります。
月にならすと18,000円です。
次は入院した月です。2割負担・一般の人が、総医療費80万円の入院をしたとします。2割で16万円ですが、世帯の上限61,500円までになります。
3割負担の現役並みⅠの人が総医療費100万円の入院をした場合は、85,800円+(100万円−28万6千円)×1%=92,940円です。
住民税非課税の人なら、同じ入院でも月25,700円です。所得が一定以下の区分なら15,700円で、12か月の合計は18万円が上限になります。
上限の対象は保険がきく医療費の自己負担だけです。入院中の食事代(一般は1食550円)、差額ベッド代、保険のきかない費用は含まれません。
30日入院して3食とると、食事代だけで550円×90食=49,500円かかります。
年単位で治療が続くときの見通し
がんの治療は、通院が月に何度もある時期、入院する月、経過を見る月が入れ替わりながら1年以上続くことがあります。
毎月の額が変わっても、12か月の合計は年間の上限で止まります。これが2026年8月の改正で加わった仕組みです。
1割・2割の一般の区分の人は、入院を含めた世帯の年間上限が53万円、外来だけなら年間216,000円が上限になります。住民税非課税なら年間29万円、外来だけなら年間96,000円です。
直近12か月に高額療養費の支給が3回あると、4回目からは世帯の上限が44,400円(非課税は24,600円)に下がります。入院を何度か繰り返す人は、この多数回該当の低い上限も使えます。
数える期間は8月から翌年7月まで。暦の1月からではありません。領収書は8月始まりで束ねておくと、計算が楽です。
自宅で療養するときも、保険診療の上限は同じ
通院がつらくなり、自宅に医師や看護師に来てもらう時期が来ることもあります。医師の訪問診療と、訪問看護ステーションの訪問看護は、どちらも健康保険の給付に含まれます。
協会けんぽの案内では、医療保険の訪問看護の基本利用料は高額療養費の対象です。交通費やおむつ代などの実費、希望して受けた時間外の対応などの料金は別に払います。
介護保険の認定を受けていても、末期の悪性腫瘍に当たると主治医が判断した場合、訪問看護は介護保険ではなく医療保険で受けます。後期高齢者医療での自己負担の扱いは、広域連合に確かめましょう。
治療を続けるかの判断と、お金の話を分ける
75歳を過ぎてがんが見つかると、本人も家族も「この年齢で、どこまで治療を受けるか」を考える場面が来ます。何を選ぶかは、病状や体力、本人の希望で決まることで、この記事では扱いません。
ただ、「お金がかかるから」という理由だけで治療を控える前に、ここまでの上限額を家族で共有しておきましょう。1割・2割の一般の区分なら、入院を含めても世帯で月61,500円が上限です。
費用の見通しを主治医やがん相談支援センターに数字で伝えると、話し合いが具体的になります。
世帯合算:同じ後期高齢者医療の夫婦なら合わせられる
70歳以上の人は、同じ月の自己負担を金額にかかわらず全部合算できます。70歳未満にある「1つの医療機関で21,000円以上」という条件はありません。
たとえば夫婦ともに後期高齢者医療に入っていて1割・一般の区分なら、夫の入院の自己負担と妻の通院の自己負担を足して、世帯の上限61,500円と比べられます。
ここが落とし穴です。合算できるのは同じ医療保険に入っている人どうしです。会社の健康保険に入っている子どもが同居していても、親の医療費と子どもの医療費は合算できません。
介護保険のサービスも使っている世帯は、8月から翌年7月までの医療と介護の自己負担を合わせる高額介護合算療養費もあります。新宿区の案内では、一般の区分の基準額は年56万円です(令和4年度分以降の基準)。
介護保険の申請やサービスの費用は介護保険のページにまとめています。
窓口で上限までにする手続き(マイナ保険証・資格確認書)
マイナ保険証で受診すれば、医療機関に限度額の情報が伝わり、窓口の支払いは最初から上限までになります。限度額適用認定証の申請は要りません。
75歳以上の人には、マイナ保険証を持っているかどうかにかかわらず資格確認書が交付されています。資格確認書には、希望すれば限度額の区分を書いてもらえます。
「認定証を毎年申請しないと上限が使えない」と思っていませんか。協会けんぽの70〜74歳の案内では、一般の区分と現役並みⅢの人は資格確認書と高齢受給者証で上限までになり、認定証の手続きは要りません。
認定証が要るのは、現役並みⅠ・Ⅱの人と、住民税非課税の人です。非課税の人はマイナ保険証を使う場合でも減額の認定証を申請するよう案内されています。
後期高齢者医療でどの区分に申請が要るかは、住んでいる市区町村の後期高齢者医療の窓口で確かめましょう。手順の全体は限度額適用認定証とマイナ保険証のページにあります。
払いすぎた分の払い戻し
同じ月に2つ以上の病院にかかった、外来と入院が重なった、夫婦の分を合算すると上限を超えた。こうした月は、窓口で上限を超えて払っている可能性があります。
東京都後期高齢者医療広域連合の例では、初めて対象になったときに限り、診療月から最短4か月後に申請書が届きます。一度申請すれば、2回目以降は申請しなくても指定した口座に振り込まれる仕組みです。
ほかの道府県の運用は広域連合ごとに確かめましょう。高額療養費の申請は、診療月の翌月1日から2年で時効になります。
新宿区は、広域連合や市区町村が電話や訪問で口座の登録やATMの操作を求めることはないと注意しています。高齢の親に届く電話には、家族も気を配りましょう。
受診の前に家族と確かめること
- 本人の負担割合(1割・2割・3割)と、高額療養費の区分(現役並み・一般・非課税)
- マイナ保険証を使えるか。使えないなら資格確認書に限度額の区分が書かれているか
- 住民税非課税なら、減額の認定証を申請したか
- 同じ世帯に後期高齢者医療の家族がいるか(合算できる相手)
- 8月から数えた病院と薬局の領収書(年間上限の確認に使う)
- 介護保険の認定を受けているか、介護サービスの自己負担がいくらか
- 高額療養費の振込先の口座と、通知が届く住所
本人が入院中で動けないときは、家族が窓口に相談に行く場面も増えます。家族が代わりにできる手続きは親ががんになったときのお金と手続きでまとめました。
よくある質問
2割負担から1割に戻ることはありますか?
負担割合は所得をもとに判定されるので、所得が下がれば割合が変わることがあります。いつの所得で判定し、いつから切り替わるかは、住んでいる市区町村の後期高齢者医療の窓口に確かめましょう。
外来の年間上限216,000円は自動で適用されますか?
年間上限は2026年8月に始まった仕組みです。協会けんぽは、年間上限の申請を2027年8月から受け付けると案内しています。後期高齢者医療での手続きは、広域連合の案内を待って確かめましょう。
入院中の食事代も上限に含まれますか?
含まれません。一般の人は1食550円です。住民税非課税の人は減額の認定を受けると1食270円(過去1年の入院が90日を超えると220円)、所得が一定以下の70歳以上の人は130円になります。
75歳になった月はどう計算しますか?
75歳の誕生日に、それまでの健康保険から後期高齢者医療に切り替わります。誕生月の上限の扱いは保険者の資料で確かめましょう。多数回該当の回数は、保険者が変わると通算されません。
高額療養費の上限を超えた分は、医療費控除に入れられますか?
医療費控除は実際に払った額から、高額療養費などで戻ってきた額を差し引いて計算します。子どもが親の医療費を払った場合の扱いは医療費控除のページで確かめましょう。