退院したあとの外来通院にも、高額療養費の上限がかかります。上限は入院とは別に、病院ごと・月ごとに数え、院外の薬局で払った分は処方箋を出した病院の分に足します。

年収約370万円までの人(区分エ)は、外来の支払いが月61,500円を超えません。3か月上限に届けば4か月目から44,400円、8月から翌年7月までの合計は53万円が上限です。

通院の電車・バス代は医療費控除の対象ですが、自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外です。

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外来の上限は、入院とは別に数える

「高額療養費は入院したときの制度」と思っていませんか。外来の通院も対象です。上限のかけ方は同じで、違うのは数える単位です。

数える単位中身通院で気をつけること
月1日から末日まで通院が毎月あれば、毎月それぞれに上限がかかる
医療機関病院・診療所ごと2つの病院に通えば、別々に計算する
入院と外来同じ病院でも別退院した月の外来は、入院の分と別に計算する
院外の薬局処方箋を出した病院の分に足す病院の会計と薬局の会計を合わせて上限と比べる

70歳未満の人は、別々に計算した分どうしを合算できるのが、1つの単位で月21,000円以上払ったものだけです。同じ健康保険に入る家族の分も、この条件で合算できます。

マイナ保険証を使えば、窓口では病院ごとに上限までの支払いになります。ただし、2つの病院の分を合算して上限を超える月は、窓口では調整されません。加入先に申請して取り戻しましょう。

院外薬局の分は、病院の外来と合わせて数える

通院治療では、病院の会計のあとに院外の薬局で薬を受け取ることがあります。高額療養費の計算では、薬局の自己負担は処方箋を出した病院の自己負担に足して数えます。

区分エの人の、ある月の例です。病院の外来で4回、1回8,000円を払い、そのたびに院外の薬局で1回7,000円を払ったとします。

病院の分は32,000円、薬局の分は28,000円で、合わせて60,000円です。

上限の61,500円には届きません。翌月に病院の分が少し増えて合計68,000円になれば、6,500円が戻ります。

窓口での扱いには注意が必要です。協会けんぽの案内では、薬局の窓口で上限が適用されるのは、1つの薬局で同じ月に、同じ病院の処方箋で調剤された分についてです。

薬局を毎回変えたり、2つの病院の処方箋を持ち込んだりすると、窓口では上限までに収まらず、あとで申請することになります。

通院の頻度別の自己負担(月・年の試算)

通院1回の総医療費(10割)を、病院の分と院外薬局の分を合わせて10万円と仮定して計算します。治療の内容によって額は大きく違うので、これは計算のための仮の数字です。

3割負担なら1回3万円です。2026年8月診療分からの上限を当てはめると、次のようになります。

通院の頻度月の総医療費区分ウ区分エ区分オ
月1回10万円30,000円30,000円30,000円
月2回20万円60,000円60,000円36,900円
月3回30万円85,940円61,500円36,900円
月4回40万円86,940円61,500円36,900円

区分ウの月3回は、3割の9万円と、85,800円+(300,000円−286,000円)×1%=85,940円を比べて、低い85,940円です。

月1回の通院では、どの区分でも上限に届きません。区分ウで月2回だと、上限との差が2万円以上あり、高額療養費は出ません。上限に届かない月の負担を抑えるのが、2026年8月にできた年間上限です。

12か月続いた場合

通院の頻度区分ウ区分エ区分オ
月1回360,000円360,000円360,000円→29万円
月2回720,000円→53万円720,000円→53万円332,100円→29万円
月4回260,820円+399,600円=660,420円→53万円184,500円+399,600円=584,100円→53万円332,100円→29万円

矢印の右が年間上限をかけた額です。区分ウの月2回は、毎月6万円で上限に届かず、多数回該当も使えません。12か月で72万円になりますが、年間上限で53万円になり、19万円があとから戻ります。

区分ウの月4回は、最初の3か月が86,940円×3=260,820円、4か月目から多数回該当の44,400円×9=399,600円です。月にならすと約44,200円になります。

年間上限は、8月から翌年7月までの12か月で区切ります。協会けんぽでは申請の受付が2027年8月からで、それまでは月ごとの支払いが続きます。払い戻しを待つ間の生活費も見込んでおきましょう。

月ごとに額が違う人は、高額療養費の計算ツールに月ごとの総医療費を入れて試算できます。

がんの通院で起きやすいこと

がんの通院は、決まった間隔で長く続くことがあります。次の場面では、上限の数え方しだいで支払いの額が変わります。

  • 通院の間隔が月の区切りとずれる:3週に1回なら、月に1回の月と2回の月が混ざる。2回の月だけ上限に届くことがある
  • 入院と通院が同じ月にある:退院した月の外来は入院と別に計算する。外来の分が21,000円以上なら、入院の分と合算できる
  • 2つの病院に通う:手術を受けた病院と、近くの病院で治療を分けると、別々の計算になる
  • 仕事を辞めて健康保険が変わる:多数回該当の回数は通算されず、1か月目から数え直す

多数回該当の回数には、マイナ保険証や限度額適用認定証で窓口の支払いが上限までになった月も含みます。入院の月と通院の月が混ざっていても、同じ加入先で上限に届いた月を数えます。

治療費の全体の見通しはがんの治療費はいくらかかるか、入院の月の費用はがんの入院費用で確かめましょう。

2つの病院と家族の分を足して上限に届く月

1か所ずつでは上限に届かなくても、足すと届く月があります。窓口では調整されないので、自分で気づいて申請するしかありません。

区分エ(上限61,500円)の世帯で、同じ月に次の支払いがあったとします。

誰が・どこで自己負担合算に入るか(70歳未満)
本人:A病院の外来+院外薬局45,000円入る(21,000円以上)
本人:B病院の外来24,000円入る(21,000円以上)
被扶養者の配偶者:C病院の外来15,000円入らない(21,000円未満)

合算するのは45,000円+24,000円=69,000円で、上限61,500円を超えた7,500円が戻ります。配偶者の15,000円は、21,000円に届かないので足せません。

家族の分を足せるのは、同じ健康保険に入っている家族です。共働きでそれぞれ別の健康保険に入っている夫婦は、足せません。

申請先は加入先(協会けんぽなら都道府県支部)です。領収書を月ごとに並べ、21,000円以上の単位が2つ以上ある月を探しましょう。

通院で仕事を休む日の収入

通院の費用とは別に、通院の日に仕事を休むことで収入が減ることがあります。会社員で健康保険に入っている人は、病気で仕事に就けない日が続けば傷病手当金の対象になりえます。

傷病手当金は、連続3日の待期のあと4日目以降の休んだ日が対象で、通院の日だけ休む働き方では要件に当たらないこともあります。要件と申請のしかたは傷病手当金で確かめましょう。

国民健康保険には、原則として傷病手当金がありません。

通院の交通費:医療費控除の対象になる範囲

通院の交通費は健康保険からは出ませんが、確定申告の医療費控除では医療費に含められるものがあります。国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例による扱いは次のとおりです。

交通手段・場面医療費控除
電車・バスなど公共交通機関の運賃対象(通常必要なもの)
タクシー代原則対象外。病状から急を要する場合や、電車・バスが利用できない場合は対象
自家用車のガソリン代・駐車場代対象外
付き添いの人の交通費年齢や病状から一人で通院させるのが危険な場合は対象
入院中の家族の世話のために家族が通う交通費対象外
遠くの病院への旅費近くの病院で治療できるなら対象外。遠くの病院でなければ治療できない相当の理由があれば原則対象

「体調が悪くてタクシーで通ったから、全部控除できる」とは限りません。対象になるのは、病状からみて急を要する場合や、電車・バスが利用できない場合です。

迷ったら、通院の日と理由をメモして税務署に聞きましょう。

電車やバスの運賃は領収書が出ないことが多いので、通院した日、区間、往復の運賃を記録しておきましょう。

交通費を含めた医療費控除の計算例

区分ウで、1年(1月〜12月)に払った外来と薬局の自己負担が高額療養費の払い戻しを除いて53万円、通院は月2回で往復1,200円とします。交通費は1,200円×24回=28,800円です。

医療費控除の額は、(530,000円+28,800円)−100,000円=458,800円。

課税される所得金額が330万円以上695万円未満で税率20%の人なら、所得税は約91,760円少なくなります(別に復興特別所得税)。

医療費控除は1月から12月の暦年で数え、年間上限は8月から翌年7月で数えます。期間がずれるので、確定申告の時点で払い戻しの額が決まっていなければ、見込額を差し引きます。

計算の詳しいことは医療費控除にまとめています。

移送費は、通院の交通費には使えない

健康保険には「移送費」という給付があります。医師の指示で、歩くことが著しく難しい患者を、緊急その他やむを得ない理由で移送したときに、もっとも経済的な経路・方法の範囲で実費が出るものです。

協会けんぽは、歩行できない人が自宅から通院するためにかかった交通費は、移送費の対象外としています。退院するときに歩けないので移送する場合も対象外です。

通院のタクシー代を移送費で取り戻すことは、原則としてできないと考えておきましょう。

通院が続く人が確かめておくこと

  • マイナ保険証を病院と薬局の両方で使っている(限度額の情報が窓口に伝わる)
  • 院外の薬局は、なるべく同じ薬局を使っている
  • 領収書を、月ごと・病院ごと・薬局ごとに分けて保管している
  • 直近12か月で上限に届いた月の数を数えている(多数回該当の確認)
  • 8月から翌年7月までの自己負担の合計を記録している(年間上限の申請に使う)
  • 通院の日・区間・運賃のメモを残している(医療費控除に使う)
  • タクシーを使った日は、その理由を書き留めている
  • 2つの病院の分や家族の分を合算できる月は、加入先に申請している

高額療養費の申請は、診療月の翌月1日から2年で時効になります。上限に届かなかったと思っていた月も、合算すると届くことがあるので、まとめて見直しましょう。

よくある質問

外来の抗がん剤治療でも高額療養費は使えますか?

使えます。外来も入院と同じく、月ごと・病院ごとに上限がかかります。入院とは別に計算し、院外薬局の分は処方箋を出した病院の分に足します。

通院治療の自己負担は、月額でいくらくらいになりますか?

上限は区分で決まり、区分ウは85,800円台から、区分エは61,500円、区分オは36,900円です。上限に届かない月は3割を払います。

上限に届く月が3か月続けば、4か月目から区分ウ・エは44,400円です。

病院と薬局の支払いは合算できますか?

院外の薬局の分は、処方箋を出した病院の外来の分に足して計算します。窓口で上限が適用されるのは同じ薬局で同じ病院の処方箋の分なので、ほかの組み合わせは申請で取り戻します。

通院のガソリン代や駐車場代は医療費控除になりますか?

なりません。国税庁は、自家用車で通院するときのガソリン代や駐車場の料金を医療費控除の対象に含めないとしています。電車やバスの運賃は対象です。

通院の交通費は健康保険から出ますか?

出ません。移送費は、医師の指示で歩くのが著しく難しい人を緊急に移送した場合などに限られ、自宅から通院する交通費は対象外です。