国家公務員ががんで仕事を休むときは、まず病気休暇を使います。病気休暇は有給で、原則として連続90日までです。
それより長く休むときは病気休職になり、期間は3年を超えない範囲で決まります。休職の最初の1年は、俸給や手当の80%を支給できる決まりです。
休職給がなくなったあとは、共済組合の傷病手当金が通算1年6か月出ます。1日の額は、標準報酬の月額の平均÷22×2/3です。
地方公務員は、病気休暇の日数も休職中の給与も、勤め先の自治体の条例で決まります。国の数字をそのまま当てはめず、人事担当に確かめましょう。
このページの内容
休む期間と収入の流れ(国家公務員)
一般職の国家公務員が私傷病で長く休む場合、法令の上では次の順に進みます。病気休暇から休職、共済組合の給付へとつながる形です。
| 段階 | 期間 | 収入 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 病気休暇 | 療養に必要な最小限度の期間。原則、連続90日まで | 有給 | 人事院規則15-14 第21条 |
| 90日を超えて引き続き休むとき | 90日を過ぎた日から | 俸給の半額を減ずる(例外は人事院規則) | 給与法 附則第6項 |
| 病気休職 | 3年を超えない範囲で任命権者が決める(3年まで更新できる) | 満1年に達するまで、俸給・扶養手当・地域手当・住居手当・期末手当などの80%を支給できる | 人事院規則11-4 第5条、給与法 第23条 |
| 休職給が終わったあと | 傷病手当金は通算1年6か月 | 共済組合の傷病手当金(標準報酬の月額の平均÷22×2/3) | 国家公務員共済組合法 第66条 |
この表は法令の骨組みです。休職にするかどうか、いつ切り替えるかは任命権者(各省庁)が決めます。実際の運用は、所属の人事担当に確かめましょう。
俸給がいくらになるか(計算例)
俸給と手当の合計が月30万円の人で考えます。病気休暇の間は有給なので、収入は月30万円のままです。
病気休職になると、最初の1年は80%の月24万円を支給できる決まりです。休職の2年目からは休職給の規定がないので、共済組合の傷病手当金に移ります。
標準報酬の月額が12か月とも30万円なら、傷病手当金の日額は次のとおりです。30万円÷22=13,636円台で、端数処理により13,640円。これに2/3を掛けて9,093円です。
協会けんぽは「÷30」で日額を出します。共済は「÷22」なので、日額だけを比べても月の受取額は比べられません。月にいくらになるかは、共済組合に計算してもらいましょう。
病気休暇:90日の数え方
病気休暇の期間は「療養のため勤務しないことがやむを得ないと認められる必要最小限度の期間」とされています。私傷病の病気休暇は、原則として連続90日を超えられません。
数え方には、がんの治療と関わる決まりがいくつかあります。人事院規則15-14 第21条と人事院の通知から、主なものを抜き出しました。
| 決まり | 中身 |
|---|---|
| 休日も数える | 病気休暇の期間中の週休日・休日なども、病気休暇を使った日とみなす |
| 一部だけ休んだ日 | 1日の一部だけ病気休暇を使った日も、1日として数える |
| 間に出勤した場合 | 連続8日以上使ったあと、実際に勤務した日が20日に達する前に再び使うと、前後は連続しているとみなす |
| 別の病気 | 症状などが明らかに異なる病気やけがで療養が必要になれば、その分は別に承認できる(それも連続90日まで) |
手術で入院して2週間休み、復帰して3週間後に抗がん剤の治療でまた休む。こうした休み方では、間に出勤していても、前後がつながった扱いになることがあります。
「出勤すれば90日は数え直しになる」と思っていませんか。実際は、出勤した日が20日に届かないうちにまた休むと、期間は続いているものとして数えられます。
再発や転移が「明らかに異なる」病気に当たるかは、規則の文言だけでは決まりません。人事担当に、診断書を示して確かめましょう。
90日を超えると俸給が半分になる
給与法の附則には、私傷病の病気休暇の開始日から90日を超えて引き続き勤務しないときは、その後の病気休暇の日の俸給を半額にする決まりがあります。人事院規則で定める場合は90日でなく1年です。
90日が近づいたら、病気休暇を続けた場合と病気休職になった場合で給与がどう変わるかを、人事担当に聞きましょう。
病気休職:最長3年、最初の1年は80%
国家公務員法第79条第1号の「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」は、休職にできます。期間は休養を要する程度に応じ、3年を超えない範囲で任命権者が決めます。
3年より短い期間で休職にした場合でも、3年までは更新が可能です。
給与は、結核性の病気以外の心身の故障による休職なら、休職の期間が満1年に達するまで80%を「支給することができる」とされています。
対象は俸給、扶養手当、地域手当、広域異動手当、研究員調整手当、住居手当、期末手当です。
「休職になったら、給料はもう出ない」と思っていませんか。実際は、国家公務員なら満1年に達するまで80%を支給でき、その後は共済組合の傷病手当金につながります。
休職期間が3年に達しても復職できない場合の扱いは、人事担当に確かめましょう。このサイトでは、分限処分の判断には立ち入りません。
共済組合の傷病手当金
公務員の健康保険にあたるのが共済組合です。国家公務員は国家公務員共済組合法、地方公務員は地方公務員等共済組合法で、傷病手当金の仕組みはほぼ同じ形で定められています。
| 項目 | 共済組合(国家公務員共済組合法 第66条など) | 参考:協会けんぽ |
|---|---|---|
| 支給の始まり | 勤務に服することができなくなった日以後3日を経過した日から | 連続3日の待期のあと4日目から |
| 1日の額 | 直近12か月の標準報酬の月額の平均÷22×2/3 | 直近12か月の標準報酬月額の平均÷30×2/3 |
| 支給期間 | 同一の傷病について通算1年6か月(結核性は3年) | 同一の傷病について通算1年6か月 |
| 給与が出ている間 | 受ける報酬の額に応じて、全部または一部を支給しない(第69条) | 給与が傷病手当金より少なければ差額を支給 |
| 退職後 | 1年以上組合員だった人が、退職の際に受けていれば継続して支給 | 継続1年以上の被保険者期間などの条件で継続給付 |
見落としやすいのが、通算1年6か月の起算点です。給与が出ていて傷病手当金が全く出ない期間があれば、実際に支給を始めた日から数えます。
病気休暇や休職給の80%が出ている間は、傷病手当金はその分調整されます。そのため、多くの場合、受け取るのは休職給が終わってからです。
附加給付は組合ごとに違う
共済組合は、法律の給付にあわせて、これに準ずる給付(附加給付)を行うことができます(国家公務員共済組合法第51条、地方公務員等共済組合法第54条)。
傷病手当金や医療費の給付に上乗せがあるか、あればいくら出るかは、組合ごとに違います。組合の規則で確かめましょう。
医療費:高額療養費と組合の上乗せ
共済組合にも高額療養費があり、ひと月の自己負担に上限がかかります。70歳未満の区分ウ(年収約370〜770万円)なら、2026年8月診療分から85,800円+(総医療費−286,000円)×1%です。
総医療費が月60万円の場合で計算すると、85,800円+(60万円−28万6千円)×1%=88,940円が上限です。直近12か月で上限に届いた月が3回あれば、4か月目からは44,400円になります。
附加給付で医療費の自己負担に上乗せの払い戻しがあるかは、組合に確かめましょう。ほかの区分は高額療養費のページで確かめられます。
マイナ保険証を使えば、限度額適用認定証の申請は原則いりません。所得区分オ(住民税非課税)の人は、減額認定証の扱いを組合に確かめましょう。
地方公務員は条例で決まる
地方公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定めることになっています(地方公務員法第24条第5項)。病気休暇の日数、休職の期間、休職中の給与は、勤め先の自治体の条例・規則が基準です。
休職できる理由は地方公務員法第28条第2項にあり、国と同じ「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」です。休職の手続きと効果は、条例で定めることとされています。
傷病手当金は、地方公務員等共済組合法第68条で国家公務員と同じ形の計算式(÷22×2/3)が定められています。附加給付の内容は、加入している共済組合に確かめましょう。
| 確かめること | 聞く先 |
|---|---|
| 病気休暇の日数・有給か無給か・数え方 | 所属の人事担当(条例・規則) |
| 休職の期間と、休職中の給与の割合・期間 | 所属の人事担当(条例) |
| 傷病手当金の額・支給開始の時期・附加給付 | 加入している共済組合 |
| 医療費の附加給付 | 加入している共済組合 |
障害年金と退職
公務員の共済組合の長期給付には、厚生年金保険給付が含まれます(国家公務員共済組合法第72条)。在職中に初診日がある人は、会社員と同じく障害基礎年金と障害厚生年金の対象になりえます。
同じ病気で障害厚生年金を受けるようになると、傷病手当金は調整されます。障害厚生年金(障害基礎年金があれば合算)の額をもとにした額が日額より少なければ、差額は支給される仕組みです。
等級の判定は日本年金機構が行い、このサイトでは判定しません。認定基準は障害年金(がんの場合)にまとめています。
退職を考えるときは、退職後の傷病手当金と健康保険の切り替えを先に確かめましょう。退職日の扱いで受け取れる額が変わることは、仕事を辞める前に確認することで会社員の場合を説明しています。
共済組合の細かい条件は組合で確かめましょう。
公務員ならではの注意点
- 制度が手厚いぶん、仕組みが多層:病気休暇・休職給・傷病手当金・附加給付の4つがあり、どの時期にどれが出るかが分かりにくい
- 給与が出ている期間は傷病手当金が調整される:病気休暇と休職の1年目は、傷病手当金を受け取らない月が続くことがある
- 給与が減る時期の支払い:休職中の共済組合の掛金や住民税をどう納めるかは、人事担当に確かめる
- 家族の介護は別の制度:国家公務員の介護休暇は無給で通算6月以内(3回まで分割可)、短期介護休暇は有給で1暦年5日(要介護者2人以上は10日)
家族ががんになって介護が必要になった場合の制度は、民間の会社員向けの介護休業・介護休暇で説明しています。公務員は日数が違うので、人事担当の案内を基準にしましょう。
人事担当・共済組合に聞くことのチェックリスト
- 病気休暇の残り日数と、数え方(間に出勤した日がどう扱われるか)
- 90日を超えて病気休暇を続けた場合の俸給の扱い
- 病気休職になる時期と手続き(診断書の様式・提出先)
- 休職中の給与の割合と期間、期末手当の扱い
- 休職中の共済組合の掛金と住民税の納め方
- 傷病手当金の日額と、月の受取額の見込み
- 傷病手当金の支給が始まる時期(休職給が終わったあとか)
- 附加給付(傷病手当金の上乗せ・医療費の払い戻し)の有無と額
- 短時間勤務や時差出勤など、復帰するときに使える制度
- 初診日(最初に受診した医療機関と日付)のメモ
相談できる窓口
- 所属の人事担当・健康管理担当:病気休暇・休職・復職の手続き
- 加入している共済組合:傷病手当金、附加給付、高額療養費
- がん相談支援センター:がん診療連携拠点病院などにあり、仕事とお金の相談を無料・匿名で受けている。その病院で治療していない人も利用できる
- 年金事務所:初診日と障害年金の相談
治療と仕事の両立の進め方(主治医の意見書、職場への伝え方)は、がん治療と仕事の両立にまとめています。
よくある質問
病気休暇は何日まで使えますか?
国家公務員の私傷病の病気休暇は、原則として連続90日までです。90日を超えて続けて休むと、俸給が半額になる決まりがあります。地方公務員は自治体の条例・規則で決まるので、人事担当に確かめましょう。
病気休職中に給料は出ますか?
国家公務員の場合、結核性以外の病気による休職は、満1年に達するまで俸給や手当の80%を支給できます。2年目からは休職給の規定がなく、共済組合の傷病手当金に移るのが法令上の流れです。
傷病手当金は協会けんぽより多いのですか?
共済組合は標準報酬の月額の平均を22で割り、協会けんぽは30で割ります。日額は共済のほうが大きく出ますが、月の受取額をそのまま比べることはできません。共済組合に月額の見込みを計算してもらいましょう。
非常勤の職員も同じですか?
非常勤職員などは、休暇の種類や日数が常勤の職員と違う場合があります。採用時の通知と規則を、人事担当に確かめましょう。