「生計を一にする」は、税金の世界で「同じ財布で暮らしている」ことを指す言葉です。国税庁の通達(所得税基本通達2-47)は、必ずしも同じ家に住んでいることではないと書いています。
医療費控除では、生計を一にする家族の医療費を1人の申告にまとめられ、10万円の足切りを1回で済ませられます。
どう判断するか
通達の考え方は、同居か別居かで2通りです。同じ家に住んでいる家族は、明らかに互いに独立した生活をしている場合を除き、生計を一にするものとされます。
離れて暮らしている家族は、勤務・修学・療養などの都合で別に住んでいて、次のどちらかに当たれば生計を一にするものとして扱われます。
- 休みの日などには家に戻って一緒に過ごすのが常になっている
- 常に生活費・学資金・療養費などの送金が行われている
| 状況 | 通達に照らした扱い |
|---|---|
| 同じ家に住む夫婦・親子 | 原則として生計を一にする |
| 単身赴任で、休日は自宅に戻る | 生計を一にする |
| 療養のため入院・入所していて、家族が費用を出している | 生計を一にする |
| 別居の親に、常に生活費や療養費を送っている | 生計を一にする |
| 同じ家でも、家計を完全に分けて独立して暮らしている | 当たらないことがある |
計算例:家族の医療費をまとめる
たとえば、本人の医療費が20万円、生計を一にする配偶者の医療費が8万円だった年です。別々に申告すると、本人は20万円 − 10万円 = 10万円、配偶者は10万円に届かず0円です。
本人が配偶者の分も払っていれば、28万円 − 10万円 = 18万円を本人の医療費控除にできます。差は8万円です。共働きで配偶者に収入があっても、まとめることはできます。
がんの治療で関わる場面
入院が長くなると、本人と家族が別の場所で暮らす期間ができます。療養の都合で離れていても、家族が入院費を払っていれば生計を一にする関係は続くと考えられます。
親ががんになり、子が離れた実家に治療費を送っている場合も同じです。
国税庁の質疑応答事例は、同居していない母親の医療費を子が負担した例で、常に生活費などを送金していれば子の医療費控除の対象になるとしています。
判定の時点は、医療費を払う理由が生じた時か、実際に払った時の状況です。年の途中で同居をやめても、その時点ごとに見ます。
ほかの控除でも同じ言葉が出てくる
この言葉は医療費控除だけのものではありません。セルフメディケーション税制でも、生計を一にする家族の分の購入費を合算できます。
障害者控除では、控除の対象になる配偶者を「同一生計配偶者」と呼び、生計を一にしていることが要件の1つです。こちらは配偶者の年間の合計所得金額が62万円以下(令和8年分から)という条件も付きます。
同じ言葉でも、控除ごとに追加の条件があるかを見ましょう。
注意すること
- 医療費控除に入れられるのは、その医療費を実際に払った人の申告だけ。名義を変えるだけでは移せない
- 送金で生計を一にする場合は、振込の記録など、常に送っていたことがわかるものを残す
- 扶養控除や配偶者控除にも「生計を一にする」が出てくるが、そちらは所得の要件が別にある
- 迷う場合は、住んでいる場所を受け持つ税務署に、家族の状況を伝えて確かめる
家族の分をまとめるときの計算式と、5年さかのぼって申告する方法はがん治療の医療費控除に、親の治療費を子が払う場面は親ががんになったときにまとめています。