混合診療は、健康保険がきく診療と、保険がきかない診療(自由診療)を一緒に受けることを指す言葉です。日本では原則として認められていません。
一緒に受けると、本来は3割負担で済む診察・検査・入院の分まで含めて、10割を自分で払うことになります。
なぜ原則禁止なのか
厚生労働省は令和7年7月9日付けの周知文で、混合診療は原則として認められず、行った場合は保険適用の医療も含めて全額自己負担になると説明しています。
理由として挙げているのは2つです。1つは、先進的な医療が保険外にとどまり続け、患者の負担が不当に広がるおそれ。もう1つは、科学的根拠のない特殊な医療の実施を後押ししてしまうおそれです。
例外として認められているのが、保険外併用療養費の3つの枠(評価療養・患者申出療養・選定療養)です。この枠に入るものだけは、保険診療と一緒に受けても共通部分に保険が使えます。
計算例:枠に入るかどうかで変わる額
総医療費100万円のうち、保険外の部分が20万円、保険がきく部分が80万円(10割)だったとします。70歳未満で3割負担の人です。
| ケース | 保険外の20万円 | 保険がきく80万円 | 窓口での負担 |
|---|---|---|---|
| 保険外併用療養費の枠に入る(例:届出のある医療機関の先進医療) | 全額負担 | 3割の24万円(高額療養費の対象) | 44万円から、高額療養費の分が軽くなる |
| 枠に入らない(混合診療に当たる) | 全額負担 | 全額負担 | 100万円 |
差は大きく、枠に入らないと保険がきくはずの80万円まで10割になります。この場合は保険の一部負担金がないので、高額療養費も使えません。
保険外でも混合診療とは別に扱われる費用
入院中には、保険がきかない支払いがほかにもあります。テレビ代、クリーニング代、おむつ代、生命保険の請求に使う診断書の作成代などです。
これらは「療養の給付と直接関係ないサービス」として、厚生労働省の通知で実費の徴収が認められている費用です。院内での掲示、内容と料金を書いた文書への署名、他の費用と分けた領収証が条件になっています。
「お世話料」「雑費」のようなあいまいな名目での徴収は認められていません。
がんの治療で関わる場面
保険がきかない治療を勧められたときや、自分で調べた自由診療を受けたいと考えたときに、この言葉が出てきます。どの治療を選ぶかは主治医と話して決めることで、ここでは費用と制度の扱いだけを説明します。
気をつけたいのは、同じ時期に同じ医療機関で保険診療と自由診療を受けるときです。先進医療でも、届出をしていない医療機関で受ければ例外の枠に入らず、混合診療の原則に戻ります。
注意すること
- 保険外の医療を受ける前に、それが評価療養・患者申出療養・選定療養のどれかに当たるかを医療機関に確かめる
- 当たらない場合、保険がきく診察や検査まで全額自己負担になるかを、金額で説明してもらう
- 見積もりと同意書の内容は、署名の前に家族とも共有する
- 医療費控除は保険の有無ではなく「診療・治療の対価」かで決まる。迷う費用は税務署に確かめる
保険外の医療を勧められたときの確かめ方は自由診療を勧められたらに、保険がきく部分の上限は高額療養費の記事にまとめています。