保険料の引き落としが1回できなくても、契約はすぐにはなくなりません。月払の契約なら、払込期月の翌月の1日から末日までが払込猶予期間という例が一般的です。
猶予期間を過ぎると、保険会社が保険料を立て替える「自動振替貸付」が使われるか、契約が失効します。失効した契約を元に戻す「復活」には、あらためて健康状態の告知か診査が必要です。
がんの治療中は、その結果によって戻せないことがあります。解約する前に、払込免除に当たらないか、まだ請求していない給付金はないかを確かめましょう。
保険料を減らす「減額」、払込みをやめて保障を残す「払済保険」「延長保険」もあります。どれが使えるかは契約と保険会社で違うので、約款と保険会社で確かめましょう。
このページの内容
このページで扱うこと
このページでは、保険会社名や商品名は出しません。仕組みは生命保険文化センターや生命保険協会の一般的な説明と、保険法で確かめた範囲で書いています。
給付金の請求の手順はがん保険・医療保険の請求の流れに、がんになった後に新しく入るときの告知はがんになった後の保険加入と告知にまとめました。
ここで扱うのは、いま入っている契約の保険料が重くなったときに、契約をどうするかです。解約するかどうかは家計と契約の中身で答えが変わるので、勧めも否定もしません。比べる材料を並べます。
本村ユウジの相談記録では、2010〜2026年の相談者3,192名のうち64名(2.0%)が民間保険に触れていました。治療費の額(244名)や生活費(181名)の悩みと並んで出てくる話題です。
払えないとどうなるか:引き落とし不能から失効までの流れ
生命保険文化センターの説明では、保険料の払込みが遅れて払込猶予期間が過ぎると、自動振替貸付が適用されるか、契約が失効するかのどちらかになります。
| 段階 | 契約の状態 | この時点でできること |
|---|---|---|
| 払込期月(月払は契約応当日の属する月の1日〜末日) | 有効 | 口座の残高を戻す。払込方法を変えられるか保険会社に聞く |
| 払込猶予期間(月払の例は翌月の1日〜末日) | 有効(まだ失効していない) | 猶予期間内に払う。減額・払済保険などの手続きを相談する |
| 猶予期間の経過後 | 解約返戻金の範囲で自動振替貸付が適用されるか、失効 | 立替えの通知の内容を確かめる。立替えを望まないなら一定期間内に手続き |
| 失効中 | 保障なし | 所定の期間内なら復活を申し出る(告知・診査あり)。解約返戻金があれば請求できる |
| 復活できる期間の経過後 | 復活できない | 解約返戻金の請求。解約したものとみなして払い戻す会社もある |
猶予期間の長さは払込方法と会社で違います。半年払は翌々月の契約応当日までといった例があり、猶予期間の代わりに「解除予告期間」を設ける会社もあります。
自分の契約の期間は、ご契約のしおりと約款で確かめましょう。
計算例:月払の猶予期間を日付で数える
契約応当日が毎月10日の月払の契約で、11月分が引き落とせなかったとします。払込期月は11月1日から30日です。
一般的な例どおりなら、猶予期間は12月1日から12月31日まで。12月31日までに11月分を払えば、契約はそのまま続きます。
払えないまま年を越すと、1月の時点で自動振替貸付か失効のどちらかになります。12月分の保険料も別にかかる点は見落としやすいところです。
猶予期間の最後の月は、2か月分を払うことになる計算です。月1万円の保険料なら、12月末までに2万円を用意します。
誤解①「払わずにいれば、そのうち解約になる」
「保険料を止めておけば、自然に解約になる」と思っていませんか。生命保険文化センターは、口頭で伝えたり保険料の払込みを止めたりするだけでは、解約の手続きとはみなされないと説明しています。
払込みを止めた契約は、解約ではなく失効に向かいます。失効中は保障がなく、給付金も受け取れません。解約返戻金があっても、請求の手続きをしない限り手元には入りません。
やめると決めたなら所定の書類で解約し、続けたいなら猶予期間のうちに相談しましょう。何も伝えずに払込みだけ止めると、選べる方法がいちばん少なくなります。
失効した契約の復活:がんの治療中は戻せないことがある
失効しても、3年以内など所定の期間内なら、契約者の申し出で契約を元に戻せる場合があります。これを復活といいます。
| 復活の条件(一般的な説明) | がんの治療中に確かめたいこと |
|---|---|
| 失効していた期間の保険料を払い込む。会社によっては延滞利息も | まとめて払う額。3か月失効していれば3か月分以上 |
| 健康状態の告知または診査を受ける | 告知の結果によっては復活できない |
| 保障は復活日から始まる | 失効中に受けた入院・手術は対象外 |
| 保険料・契約内容は失効前と同じ | 保険料の負担そのものは軽くならない |
がんの診断を受けたあとに失効すると、復活の告知にその事実を書くことになります。復活を取り扱っていない会社や商品もあります。
「失効しても、あとで戻せばいい」とは考えないほうが安全です。解約した契約は、そもそも復活できません。
復活日は、告知義務違反による解除の期間を数える起点にもなります。生命保険協会のガイドラインの記載例は「責任開始日(復活の場合は復活日)から2年以内」です。告知の仕組みは告知義務で確かめられます。
解約以外の方法:5つの違いを比べる
保険料が重いときに、契約を残したまま負担を減らす方法が、一般的に5つあります。どれも使えるかどうかは保険の種類と会社によります。
| 方法 | 保険料 | 保障 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動振替貸付 | 保険会社が解約返戻金の範囲で立て替える | そのまま続く | 立替分に複利の利息。定期保険などは一般的に対象外 |
| 契約者貸付 | 借りたお金で自分で払う | 一般的にそのまま続く | 複利の利息。元利金が解約返戻金を超えると失効のおそれ |
| 減額 | 減らした分だけ安くなる | 保障額が減る | 主契約の減額で特約の保障も同時に減る場合がある |
| 払済保険 | 以後の払込みなし | 保険期間はそのままで保障額が小さくなる | 特約は原則として消滅 |
| 延長(定期)保険 | 以後の払込みなし | 死亡保障だけの定期保険。保険金額は同じで期間が短くなることがある | 特約は消滅 |
払済保険と延長保険は、その時点の解約返戻金をもとに保障を組み直す方法です。解約返戻金が少ない契約や、保険の種類によっては変更できません。
自動振替貸付と契約者貸付は「借金」
自動振替貸付は保険料の立替え、契約者貸付は解約返戻金の一定範囲内で受ける貸付けです。どちらも所定の利息がつき、複利で計算されます。
利率は契約の時期で違い、予定利率が高い時期の契約ほど貸付利率も高くなります。返すのは全額でも一部でもよく、時期も自由です。
返さないまま満期や死亡を迎えると、保険金から元金と利息が差し引かれます。2つの元利金の合計が解約返戻金を上回ると立替えができず、そこで契約は失効です。
治療が1〜2か月で落ち着いて収入が戻る見込みなら、つなぎとして使う考え方があります。何年も払えない見込みなら、立替えが続いて残高が膨らむ点を先に確かめましょう。
計算例:立替えが続くと残高はどう増えるか
説明のための仮の契約で、月の保険料が12,000円、立替えの利率を年3%とします。実際の利率は契約ごとに違うので、保険会社の通知で確かめましょう。
12か月立て替えると元金は144,000円です。翌年もそのままなら、1年分の利息は144,000円×3%=4,320円で、さらに12か月分の144,000円が加わります。
月ごとの利息を省いた単純な計算で、2年目の終わりの残高は約29万円です。解約返戻金が仮に25万円なら、この時点を待たずに立替えができなくなり、失効します。
誤解②「契約者貸付を使うと、保障がなくなる」
「保険でお金を借りたら、その分の保障はもうない」と思っていませんか。生命保険文化センターは、一般的に契約者貸付を受けている間も保障は変わりなく続き、配当金を受け取る権利も続くと説明しています。
差し引かれるのは、満期や死亡のときに残っている元金と利息です。保障が消えるのは、元利金が解約返戻金を超えて、通知された額を期日までに払わずに失効したときです。
払済保険・延長保険・解約の比べ方(仮の契約)
数字は説明のための仮の契約です。実際の額は保険会社に試算を出してもらいましょう。金融庁の監督指針は、解約返戻金を保険証券に表示するなど、契約者に明瞭に開示する措置を保険会社に求めています。
仮の契約:死亡保険金500万円の終身保険に、入院の特約が付いている。月の保険料は15,000円。保険会社の試算で、いまの解約返戻金は120万円。
| 選ぶ方法 | これからの保険料 | 死亡保障 | 入院の特約 | 手元に入るお金 |
|---|---|---|---|---|
| 続ける | 月15,000円(年18万円) | 500万円 | 続く | なし |
| 払済保険 | 0円 | 500万円より小さい額(会社の試算) | 原則として消滅 | なし |
| 延長保険 | 0円 | 500万円。保障の期間が短くなることがある | 消滅 | なし |
| 解約 | 0円 | なし | なし | 120万円 |
払済保険も延長保険も、入院の特約が消える点は共通です。がんの治療中に入院給付金を受け取っている契約なら、その特約が消えたあとの入院は保障されません。
特約だけ外して主契約を残すことはできても、主契約を解約して特約だけ続けることはできません。どの特約を残したいかを先に決めてから相談しましょう。
解約返戻金を受け取ると、所得税の一時所得になる場合があります。計算はがん保険の給付金と税金で確かめられます。
保険料の払込免除に当たらないか
契約によっては、所定の状態になると以後の保険料を払わなくてよくなる「払込免除」があります。払うのに苦労している保険料が、実は免除の対象かもしれません。
生命保険文化センターは、保険料払込免除特約を、がん・急性心筋梗塞・脳卒中などで所定の状態に当たったときや、所定の身体障害状態・要介護状態に当たったときに、以後の保険料が免除される特約と説明しています。
医療保険やがん保険には、保険料の払込期間中に高度障害状態や、不慮の事故で所定の障害状態になったときに払込みを免除する商品が多い、とも説明しています。
免除の条件は、会社と特約によって別々です。「がんと診断されただけで免除」なのか、「所定の状態」の定義が別にあるのかは、約款を読まないとわかりません。
免除は、こちらから請求しないと始まらないものとして動きましょう。給付金を請求するときに、同じ契約で払込免除も請求できるかを保険会社に聞くのが近道です。
払込免除で契約が続けば、保険料を払わずに保障を残せます。解約や払済保険を選ぶ前に、免除に当たるかの答えをもらっておきましょう。
がん保険を解約する前に比べること
がん保険の解約で検索する人は多いのですが、がんの治療中という立場では、比べる材料が健康なときとは違います。
| 比べる材料 | 確かめる先 |
|---|---|
| まだ請求していない給付金(診断給付金・入院給付金・通院給付金など) | 保険会社。請求の流れ |
| 払込免除に当たるか | 約款の免除の条件、保険会社 |
| 解約返戻金があるか、いくらか | 保険証券、保険会社の試算 |
| 2回目の診断給付金など、これから受け取れる可能性のある給付 | 約款の支払事由 |
| 解約後に新しい保険に入れるか | 保険加入と告知 |
| これから払う保険料の総額 | 月の保険料×払込期間の残り |
誤解③「解約すれば、払った保険料がある程度戻ってくる」
生命保険文化センターによると、解約返戻金は一般的に払い込んだ保険料の総額より少なくなります。保険料の一部が保険金の支払いや会社の経費に充てられるからです。
がん保険には、保険料払込期間中の解約返戻金がない商品や、解約返戻金がまったくない商品を扱う会社もあります。その分、保険料は割安な設計です。
この型の契約では、解約で戻るお金はゼロのまま、保障だけがなくなります。「解約すればまとまったお金になる」と考えて手続きする前に、証券の解約返戻金の欄を確かめましょう。
解約すると、同じ保障には入り直しにくい
再契約では、年齢が上がった分だけ保険料が割高になり、健康状態によっては割増などの条件が付くか、契約できないことがあります。
引受基準緩和型の告知項目の例には、「過去5年以内に、がん・上皮内がん…で医師の診察・検査・治療・投薬を受けた」があります。治療中や経過観察中は、この項目に当たり続ける読み方です。
がん保険には、一般的に契約から90日の待ち期間があります。新しい契約に入れたとしても、待ち期間とがんの扱いは約款で確かめるしかありません。
乗り換えを勧められた場合の注意は、保険加入と告知の「今の保険を解約して乗り換える前に」にまとめてあります。新しい契約が成立する前に今の契約を解約しないことが原則です。
がんの治療中に保険料が重くなる理由
保険料は治療中も毎月同じ額で続きます。収入が減る一方で出費は変わらないため、比べてみると負担の重さがはっきりします。
たとえば月の保険料が、がん保険4,000円、医療保険6,000円、終身保険12,000円の合計22,000円なら、年264,000円です。治療が2年続けば528,000円になります。
年収約370万円までの区分エの人は、高額療養費の上限が月61,500円、4か月目から44,400円です。保険料22,000円は、多数回該当後の医療費の上限のほぼ半分に当たります。
休職して傷病手当金を受けている人は、給与の約3分の2が収入になります。標準報酬月額30万円なら傷病手当金は1日6,667円で、30日で約20万円。そこから保険料22,000円が出ていく計算です。
保険料を見直す前に、医療費そのものを高額療養費の上限で止められているかも確かめましょう。上限の計算は高額療養費の計算ツールで試せます。
家計が回らないときの順番
保険料だけでなく生活費全体が足りないときは、保険の前に公的な制度を確かめましょう。使う順番は治療費が払えない・お金がないときにまとめました。
借入れの返済も重なっている場合は借金・ローンが返せないときを見ましょう。債務整理の手続きでは、保険の解約返戻金も財産として扱われます。
生活保護を申請する場合も、保険の解約返戻金は資産として扱われるのが原則です。返戻金が少額などの条件で、解約しないまま保護を受けられる扱いもあります。詳しくは生活保護で確かめましょう。
手続きの流れ:保険会社に連絡する前後
| 順番 | やること | 使う書類・窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 契約を全部書き出す(保険料・払込期間・特約・解約返戻金の有無) | 保険証券、ご契約のしおり・約款、通帳の引き落とし記録 |
| 2 | 未請求の給付金と払込免除を確かめる | 保険会社のコールセンター、担当者 |
| 3 | 猶予期間の終わりの日を確かめる | 約款、保険会社 |
| 4 | 減額・払済保険・延長保険・解約の試算を書面でもらう | 保険会社の試算書 |
| 5 | 選んだ方法の所定の書類を出す | 保険会社所定の請求書・変更の請求書 |
| 6 | 手続き後の契約内容の通知を保管する | 保険会社からの通知 |
解約できるのは原則として契約者です。被保険者が保険会社に直接解約を求めることはできません。契約者と被保険者が違う契約は、契約者が手続きします。
保険会社の説明に納得できないときは、生命保険協会の生命保険相談所(03-3286-2648、平日9時〜17時)に相談できます。話し合いで解決しないときの次の窓口は、裁定審査会への申立てです。
保険会社に連絡する前のチェックリスト
- 入っている契約を全部出した(家族が契約者の分、勤務先の団体保険も)
- 引き落としできなかった月と、猶予期間の終わりの日を確かめた
- まだ請求していない給付金を書き出した
- 払込免除の条件を約款で読み、当たるかを保険会社に聞いた
- 解約返戻金の有無と額、払済保険・延長保険にしたときの保障額の試算をもらった
- 払済保険・延長保険で消える特約と、残したい保障を決めた
- 自動振替貸付・契約者貸付の利率と、いまの貸付残高を確かめた
- 新しい契約が成立する前に、今の契約を解約しない
- 口頭だけで済ませず、所定の書類で手続きした
よくある質問
引き落としが1回できませんでした。すぐ保障がなくなりますか?
すぐにはなくなりません。月払なら払込期月の翌月末までが猶予期間という例が一般的です。期間は会社で違うので、通知が届いたら保険会社に終わりの日を確かめましょう。
失効中に入院しました。給付金は出ますか?
失効中は保障がないため、受け取れません。復活しても保障は復活日から始まり、失効期間中の病気やけがは対象外です。
がん保険を解約したら、もう給付金の請求はできませんか?
解約の前に、請求できる給付金をすべて請求しておきましょう。解約後の請求の扱いは契約によるので、解約の手続きの前に保険会社に確かめるのが確実です。
自動振替貸付と契約者貸付は、何が違いますか?
自動振替貸付は、猶予期間を過ぎたときに保険会社が保険料を自動で立て替える仕組みです。契約者貸付は、契約者が申し込んで解約返戻金の一定範囲内で借りる仕組みです。
どちらも複利の利息がつき、2つの元利金の合計が解約返戻金を超えると失効につながります。
どの方法がいちばん得ですか?
このサイトでは判断しません。収入が戻る見込み、残したい保障、解約返戻金と払込免除の有無で答えが変わります。保険会社の試算を並べ、迷うときは生命保険相談所に相談しましょう。