がん保険の給付金に、所得税はかかりません。

診断給付金・入院給付金・手術給付金・通院給付金は、病気を理由に受け取るお金で、「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」(所得税法施行令第30条)として非課税に扱われます。

受取人が配偶者や子、親でも同じです。額がいくらでも、給付金のために確定申告をする必要はありません。

ただし、別に確かめることが3つあります。満期保険金や解約返戻金は課税の対象です。医療費控除を申告するなら、入院給付金などを医療費から差し引きます。

健康保険の被扶養者の収入には、非課税の傷病手当金も数えます。

このページの内容

給付の種類ごとの扱いと、確かめた資料

国税庁が給付の名前を挙げて答えているものと、基準に照らして非課税とされているものがあります。どの資料で確かめられるかまで並べました。

受け取るもの所得税確かめた資料
入院給付金非課税所得税基本通達9-21が「入院費給付金等」と名指し
診断給付金(診断一時金)非課税東京国税局の文書回答(平成16年。団信の特約の照会)に、通達9-21により該当するとの見解。生命保険文化センターの一覧にも記載
手術給付金・通院給付金・先進医療給付金非課税生命保険文化センターの一覧に記載。国税庁が個別に名指しした資料は見つからず、基準は通達9-21と同じ
退院後に分割で出る給付(健康回復給付金)非課税国税庁の質疑応答事例。退院時と退院後2年間の3か月ごとに15万円、合計120万円の例
リビング・ニーズ特約の生前給付金非課税国税庁の質疑応答事例。余命6か月以内の診断が支払事由
高度障害保険金・高度障害給付金非課税(一時金でも年金でも)通達9-21
就業不能保険の給付金・所得補償保険金非課税東京国税局の文書回答(令和2年)、国税庁No.1760、通達9-22
満期保険金・解約返戻金課税(一時所得など)国税庁No.1755
生存給付金(一定期間ごとに生存していれば出る給付)課税(一時所得)国税庁の質疑応答事例

質疑応答事例と文書回答は、照会された事実を前提にした答えです。自分の契約の支払事由が違うと、同じ答えになるとは限りません。

「傷害」とあるので、病気は入らないと思っていませんか

条文の言葉は「身体の傷害」で、けがの話に見えます。実際は、通達9-21が「疾病により重度障害の状態になったことなどにより」受け取る給付金を含めています。病気の給付も同じ枠です。

根拠は3段になっています。所得税法第9条第1項第18号が非課税の枠を定め、施行令第30条第1号が中身を決め、通達が病気や受取人の扱いを補っています。

施行令の文言に金額の上限はありません。診断給付金が100万円でも300万円でも、額によって課税に変わる規定は置かれていません。

基準は給付の名前でなく、何を理由に支払われるか

健康回復給付金と生存給付金は、どちらも「生きていれば定期的に出る」形です。それでも扱いは分かれました。

国税庁は、健康回復給付金を非課税でよいとした理由に、がんと診断されている場合に限って支払うことを挙げています。

退院後のリハビリ費用や検診費用などを補うものなら、退院時の一時金を分割して払うのと変わらない、という説明です。

病気と関係なく出る生存給付金は、一時所得として計算します。新しい名前の給付で迷ったら、約款の「支払事由」の欄を確かめましょう。

確定申告が要る場面、要らない場面

「まとまったお金を受け取ったら、申告しないと脱税になる」と心配していませんか。非課税の給付金は所得に入らないので、申告の義務を生みません。

生命保険文化センターも「非課税なので税金の申告は不要」と説明しています。

状況確定申告給付金の書き方
会社員で年末調整が済み、給付金を受け取っただけ給付金のためには不要書かない
医療費控除を受けたいする(税金が戻るだけなら還付申告)所得の欄には書かない。医療費控除の明細書の「補填される金額」の欄に、対象の分を書く
自営業で毎年申告している事業の所得のためにする身体の傷害に基因する給付金は所得に入れない。経費を補う分は別(後述)
満期保険金や解約返戻金を受け取った所得の額による一時所得として計算する

給与を1か所から受けて年末調整が済んでいる人は、給与と退職金以外の所得の合計が20万円を超えると申告が必要です(国税庁No.1900)。この20万円の計算に、非課税の給付金は入りません。

還付申告の期限と書類の流れは医療費控除のページにあります。

受取人が本人でないとき

施行令第30条の文言は受取人の範囲を決めていません。範囲を書いているのは所得税基本通達9-20で、自己の傷害に基因して受け取るものを原則としたうえで、家族の場合を次のように広げています。

受け取る人扱い
被保険者本人非課税
配偶者非課税(生計が別かどうかの条件なし)
子・孫・親・祖父母など直系血族非課税(生計が別かどうかの条件なし)
兄弟姉妹など、その他の親族生計を一にしていれば非課税
生計が別の兄弟姉妹など、上のどれにも当たらない人通達に書かれていない。受け取る前に税務署に確かめる

質疑応答事例には、重度障害になった父親の高度障害保険金を子が受け取った例があり、直系血族なので非課税と答えています。

「生計を一にする」は同居に限りません。考え方は生計を一にするで説明しています。

本人に代わって家族が請求する指定代理請求でも、リビング・ニーズの事例は非課税の扱いです。亡くなったあとの税金や相続は、このサイトでは扱いません。税務署に確かめましょう。

住宅ローンの団信のがん特約

団体信用生命保険のがん診断給付金特約は、金融機関が給付金を受け取って債務に充てる形です。東京国税局の文書回答は、この照会の事実関係のもとで、顧客に所得税の課税関係は生じないとの見解を認めています。

保障の中身はがんと住宅ローンで確かめましょう。

医療費控除では給付ごとに計算する

差し引くものと差し引かないものの一覧は保険の請求の流れに、控除全体の計算は医療費控除にまとめました。ここでは、給付が複数あるときの作業を計算で示します。

給付をまとめて引くと、控除額を少なく計算してしまいます。その給付の目的になった医療費を限度に給付ごとに引き、余った分は他の医療費から引かないためです。

計算例:入院1回と通院が続いた年

年収約370〜770万円(区分ウ)で、総医療費100万円の入院が10日あった人を例にします。給付の額は説明のための仮の契約です。

医療費支払った額対応する給付差し引く額
入院(窓口92,940円+食事30食16,500円)109,440円入院給付金5万円+手術給付金10万円=15万円109,440円(40,560円は引かない)
1年間の外来300,000円通院給付金6万円60,000円
通院の電車・バス代20,000円なし0円
合計429,440円21万円169,440円

控除額は、429,440円−169,440円−10万円=160,000円です。

受け取った21万円を全額引くと、429,440円−21万円−10万円=119,440円になり、40,560円少なくなります。税率10%の人なら、所得税で約4,000円の差です。

家族が受け取った給付も計算に入ります。国税庁は、受け取る人と医療費を払った人が違っても、医療費の補てんが目的なら差し引くとしています。

夫が妻の入院費を払い、妻が入院給付金を受け取った場合は、夫の医療費から引く形です。

数字を入れて試すなら医療費控除の計算ツールを使いましょう。「補てんされる額」の欄には、給付の総額でなく上の表の差し引く額を入れます。

非課税かどうかと、差し引くかどうかは別の問題

「非課税なのだから、医療費控除でも引かなくていい」というのは誤解です。入院給付金は非課税で、しかも差し引きます。

国税庁の事例も、医療費を補てんする保険金は非課税としたうえで、医療費から引くものとして扱っています。

診断給付金で迷いやすいのはこのためです。課税については東京国税局の文書回答に名前が出てきますが、差し引くかどうかを名指しした国税庁の資料は見当たりません。

基準は「医療費の補塡を目的として」受け取るものかどうかです。

診断給付金の扱いを確かめる手順

税務署に聞く価値があるかは、差額で判断できます。上の計算例の人が、別に診断給付金100万円を受け取っていたとします。

税務署の答えが控除額税率10%の所得税の軽減額
差し引かない160,000円16,336円(復興特別所得税を含む)
がんの医療費を補うものとして差し引く0円(残りの医療費260,000円まで引くと足切りを超えない)0円

この表はどちらかを勧めるものではありません。税率20%なら差は32,672円に広がります。次の順に進めましょう。

  • 約款で診断給付金の支払事由を読む(診断の確定だけで出るのか、入院や治療を受けたことが条件か)
  • 保険会社の支払明細で、給付の名前と支払理由を確かめる
  • 1年分の医療費の合計と、ほかの給付で差し引いた額を計算しておく
  • 電話相談センターに「約款の支払事由はこうです。医療費の補塡を目的とする給付に当たりますか」と聞く
  • 差し引くと言われたら、どの年の、どの医療費を限度にするかも聞く
  • 聞いた日と答えをメモし、約款の写しと一緒に申告書の控えに挟む

電話相談センターには、所轄の税務署の代表番号にかけ、音声案内で「1」を選ぶとつながります。

国税相談専用ダイヤルは0570-00-5901で、受付は8時30分から17時までです(土日祝日と12月29日〜1月3日を除く)。確定申告の時期は案内の番号が変わります。

給付金を受け取っても、足切りの額は動かない

足切りは10万円か、総所得金額等の5%の低いほうです。非課税の給付金は総所得金額等に入りません。

休職した年の令和8年分で、給与収入200万円、傷病手当金120万円、診断給付金100万円を受け取った人の場合、手にしたお金は420万円です。

それでも給与所得は200万円−74万円=126万円で、総所得金額等はこの126万円です。

足切りは126万円×5%=63,000円になります。上の例の差引き後260,000円なら、控除額は197,000円です。10万円で計算した160,000円より37,000円多くなります。

公的な給付の税金は法律ごとに決まっている

健康保険や年金の法律には「租税その他の公課は、…支給を受けた金品を標準として、課することができない」という条文があります。所得税だけでなく住民税も、この文言の「租税」に入ります。

給付所得税根拠
傷病手当金・高額療養費(協会けんぽ・健康保険組合)非課税健康保険法第62条
国民健康保険の給付非課税国民健康保険法第68条
後期高齢者医療の給付非課税高齢者の医療の確保に関する法律第63条
共済組合の傷病手当金など非課税(退職年金などを除く)国家公務員共済組合法第49条、地方公務員等共済組合法第52条
障害基礎年金非課税国民年金法第25条
障害厚生年金非課税厚生年金保険法第41条第2項
老齢基礎年金・老齢厚生年金課税(雑所得)上の2条のただし書き、国税庁No.1600
基本手当・雇用保険の傷病手当・再就職手当・介護休業給付金非課税雇用保険法第12条、第10条
介護保険の給付非課税介護保険法第26条
労災保険の給付非課税労働者災害補償保険法第12条の6
生活保護の保護金品非課税生活保護法第57条
勤務先などの見舞金相当の額なら非課税施行令第30条第3号、通達9-23

同じ「年金」でも、障害年金と老齢年金で税の扱いが逆になる点は見落としやすいところです。65歳前後で切り替わる人は、受け取る年金の種類を確かめましょう。

休職中に会社から受け取る給与は、この表に入りません。傷病手当金と給与の関係は傷病手当金のページにあります。

自治体のウィッグ購入費などの助成金について、税の扱いを名指しした資料は確かめられませんでした。迷うときは税務署に聞きましょう。

扶養・住民税・国保には影響するか

「非課税なら、扶養の収入にも数えない」と思っていませんか。ここは誤解しやすいところです。税の扶養と健康保険の扶養は、数え方が違います。

受け取るもの所得税の配偶者控除・扶養控除の所得協会けんぽの被扶養者の年間収入
傷病手当金入らない数える
雇用保険の基本手当入らない数える
障害年金入らない数える(基準は180万円未満)
老齢年金入る数える
民間保険の給付金入らない名指しした資料が見つからない。加入先に確かめる

傷病手当金を月15万円、12か月受け取る人で比べます。合計は180万円です。

所得税の配偶者控除は合計所得金額62万円以下(令和8年分)が条件で、傷病手当金はこの所得に入りません。

一方、協会けんぽの被扶養者の基準では、180万円が年間収入の見込みに入り、130万円の基準を超えます。

税の扶養に入ったまま、健康保険の扶養からは外れる。こうした組み合わせが起きます。数え方の詳細は被扶養者で確かめましょう。

毎月出る就業不能給付金や所得補償保険金を受け取る人は、とくに注意が必要です。被扶養者のままでいられるか、配偶者の勤務先を通じて健康保険に聞きましょう。組合の基準は組合ごとに確かめます。

住民税

地方税法第313条は、住民税の所得割の元になる所得を、所得税法の計算の例によって出すと定めています。非課税の給付金で住民税の所得は増えません。

注意したいのは、収入が非課税のものだけの年の申告です。伊勢崎市は申告の必要はないとしつつ、未申告だと国保の軽減が受けられない場合があると案内しています。

安中市は、傷病手当や障害年金だけの人にも申告を求めています。自治体で案内が違うので、窓口で確かめましょう。

国民健康保険料(税)

長久手市は、傷病手当金、障害年金、雇用保険の失業給付などの非課税所得を、所得割の計算に含めないと案内しています。計算方法は市区町村ごとなので、住んでいる市区町村の案内を確かめましょう。

民間保険の給付金を名指しした自治体の案内は確かめられませんでした。心配なら「診断給付金を受け取ったが、申告は要るか」と国保の窓口で聞きましょう。軽減の仕組みは国民健康保険料の軽減・減免にあります。

自営業の人が気をつける2点

施行令第30条は、給付の中に必要経費を補てんする金額が含まれていれば、その分を非課税から除いています。通達9-19は例として、休業中の従業員の給料や店舗の賃借料を補う金額を挙げています。

事業の経費を補う保険金を受け取ったら、個人の給付金と分けて税務署に確かめましょう。休業中の本人の収益を補う所得補償保険金は非課税です(国税庁No.1760)。

もう1点は保険料です。自分を被保険者にした所得補償保険の保険料は、事業の必要経費に入りません。休業中のお金の全体は自営業の人の場合にまとめています。

税金がかかる場合:満期金と解約返戻金

「がん保険から入ったお金は全部非課税」とは限りません。国税庁No.1755は、生命保険契約の満期や解約で受け取るお金を課税の対象としています。

保険料を負担した人受け取る人税金
本人本人所得税(一時金なら一時所得、年金なら雑所得)
本人家族など別の人贈与税

一時所得は「受け取った額−払った保険料−特別控除50万円」で、その2分の1を他の所得に合算します。

180万円を受け取り、保険料を120万円払っていたなら、180万円−120万円−50万円=10万円で、合算するのは5万円です。

払った保険料より受け取る額が少なければ、一時所得は出ません。解約する前に、再加入の難しさもがん経験者の保険加入と告知で確かめましょう。

治療が年単位で続くときの税金の確かめどころ

場面確かめること
12月に入院し、支払いが12月と翌年1月に分かれた給付金を支払額に応じて年ごとに分ける。入院費が6万円と4万円、給付金が5万円なら、3万円と2万円
申告の時点で給付金の額が決まっていない見込額で書き、受け取った額が違えば申告内容を訂正する
再発して2回目の診断給付金が出た1回目と同じ考え方で確かめる。支払事由は約款で確認
退院後に3か月ごとの給付が2年続く税の扱いは支払事由で確かめる。医療費控除で引くかは1回ごとに目的を確かめる
傷病手当金の受給中に配偶者の扶養を考える税の扶養と健康保険の扶養を別々に確かめる
治療が続いて本人の所得税がほとんどない年戻る税金は納めた分まで。家族が医療費を払う場合の考え方は医療費控除へ

給付金を受け取った年のチェックリスト

  • 保険会社の支払明細を、給付ごとに全部保管した
  • 給付の名前と支払事由を約款で確かめた
  • 受取人が本人・配偶者・直系血族・生計を一にする親族のどれかを確かめた
  • 満期保険金や解約返戻金が混ざっていないか確かめた
  • 入院給付金・手術給付金・通院給付金が、どの医療費に対応するかを書き出した
  • 高額療養費の払い戻しと給付金を、同じ医療費から二重に引きすぎていないか計算した
  • 診断給付金の差し引きを電話相談センターで聞いた
  • 扶養に入っている人は、傷病手当金などを配偶者の勤務先の健康保険に伝えた
  • 収入が非課税のものだけの年は、住民税の申告が要るかを市区町村に聞いた

よくある質問

診断給付金を100万円受け取りました。確定申告は必要ですか?

給付金のための申告は要りません。所得の欄にも書きません。医療費控除を受けるかどうかは別に決め、受けるときは差し引きの扱いを税務署に確かめましょう。

受取人が夫で、がんになったのが妻の場合はどうなりますか?

通達9-20では、受け取る人が被保険者の配偶者なら、本人が受け取るときと同じ扱いです。その給付が妻の医療費を補てんするものなら、医療費控除では、医療費を払った人の計算で差し引きます。

傷病手当金は確定申告に書きますか?

書きません。国税庁は傷病手当金を非課税所得としています。医療費控除でも差し引きません。ただし、健康保険の被扶養者の収入には数えます。

給付金を受け取ると、翌年の住民税や国保の保険料は上がりますか?

住民税の所得は所得税法の計算の例によるので、非課税の給付金では増えません。国保は市区町村ごとの計算なので、心配なら窓口で確かめましょう。

先進医療特約の給付金は医療費控除で引きますか?

所得税は非課税の一覧に入っています。差し引くかどうかを名指しした国税庁の資料は確かめられませんでした。基準は他の給付と同じで、医療費の補塡が目的かどうかです。

費用の仕組みは先進医療の費用で確かめ、迷うときは税務署に聞きましょう。