セカンドオピニオン外来の相談料は、公的医療保険がきかない自費です。全額を自分で払い、額は病院ごとに違います。高額療養費の上限にも入りません。一方、今の主治医に書いてもらう紹介状(診療情報提供書)は保険がききます。点数は500点(5,000円)で、3割負担なら1,500円です。転院した場合、高額療養費の計算は病院ごとです。同じ月に2つの病院でそれぞれ21,000円以上を払ったら、合算して払い戻しを申請できます。加入している健康保険が変わらなければ、多数回該当の回数は転院しても続きます。
どの費用に保険がきくのか:全体の一覧
セカンドオピニオンや転院では、性質の違う費用がいくつも出てきます。まず全体を表で見ておきましょう。金額は、2026年6月1日から適用されている診療報酬の点数表で確かめたものです。1点は10円で計算します。
| 費用 | 保険 | 高額療養費の計算 | 医療費控除 |
|---|---|---|---|
| セカンドオピニオン外来の相談料 | きかない(自費)。額は病院ごと | 入らない | 国税庁の名指しの判断は見当たらない。税務署に確かめる |
| セカンドオピニオン用の紹介状(診療情報提供料(Ⅱ)) | きく。500点=5,000円。3割なら1,500円 | 入る(今の病院の自己負担に含まれる) | 名指しの判断は見当たらない |
| 転院用の紹介状(診療情報提供料(Ⅰ)) | きく。250点=2,500円。3割なら750円 | 入る | 東京国税局の文書回答で対象とされた例がある |
| 転院先での診察・検査・治療 | きく(保険診療の場合) | 入る。病院ごとに計算 | 対象 |
| 紹介状なしで大病院にかかったときの「特別の料金」 | きかない。初診7,000円以上、再診3,000円以上 | 入らない | 今回の確認範囲では判断なし |
| 通院の交通費 | きかない | 入らない | 公共交通機関の運賃は条件つきで対象。遠方の病院は理由しだい |
紹介状の費用は保険診療の一部なので、窓口ではその日のほかの診察代と合わせた自己負担として払います。相談料のように、別の請求書が来るわけではありません。
セカンドオピニオン外来の相談料は保険がきかない
「マイナ保険証を出せば、相談料も3割で済む」と思っていませんか。実際は、セカンドオピニオン外来は自由診療(自費診療)の扱いです。国立がん研究センターのがん情報サービスも、受診に必要な費用は公的医療保険が適用されず全額自己負担で、費用は病院によって異なる、と説明しています。
セカンドオピニオンの中身も確かめておきましょう。セカンドオピニオンでは、別の病院の医師が、持参した検査データや画像を見て、第三者として意見を述べます。その場で診察・検査・治療は行いません。料金は病院ごとに決まっていて、全国一律の額はありません。
ここから、お金の面で2つのことが決まります。
- 相談料は、高額療養費の上限に含まれない。上限まで払っている月でも、相談料はまるごと別にかかる
- 相談料の額は、病院のホームページや窓口で確かめるしかない
このサイトでは、病院ごとの金額や相場を載せていません。申し込む前に、次の点を電話で確かめましょう。
- 相談料の総額と、何分までの料金か
- 本人が行けないとき、家族だけで相談できるか(本人の同意書が要るか)
- オンラインで受けられるか。その場合の料金は対面と同じか
- 結果を報告書にしてもらえるか。主治医に送ってもらえるか
- 支払い方法(現金のみか、カードが使えるか)
家族だけの代理受診や、オンラインのセカンドオピニオンに応じるかどうかは、病院によって違います。移動がつらい時期なら、オンラインに対応している病院を探すと、交通費と体の負担の両方を減らせます。
紹介状と検査データの費用:保険がきく部分
セカンドオピニオンを受けるには、今の主治医に紹介状(診療情報提供書)と検査結果のデータを用意してもらいます。血液検査や病理検査の記録、CT・MRIの画像(通常はCD-ROMなどに写したもの)です。この紹介状の作成料には、保険がききます。
診療報酬の点数表では、紹介状の費用に2つの種類があります。
| 項目 | どんなときか | 点数(10割の額) | 3割 | 2割 | 1割 |
|---|---|---|---|---|---|
| 診療情報提供料(Ⅱ) | 患者が「ほかの医師の意見を聞きたい」と申し出て、治療計画・検査結果・画像などを添えた文書を患者に渡したとき | 500点(5,000円) | 1,500円 | 1,000円 | 500円 |
| 診療情報提供料(Ⅰ) | 医師が別の病院での診療が必要と判断し、患者の同意を得て紹介したとき | 250点(2,500円) | 750円 | 500円 | 250円 |
セカンドオピニオン用は(Ⅱ)です。厚生労働省の通知は、(Ⅱ)を「セカンド・オピニオン」を得ることを進めるためのものと位置づけ、(Ⅰ)の紹介とは「明確に区別されるべき」としています。(Ⅱ)は患者1人につき月1回まで算定でき、入院中に頼んだ場合も同じ扱いです。
画像をCDに写す費用など、紹介状のほかに実費がかかるかどうかは、病院によって扱いが違う可能性があります。紹介状を頼むときに、会計窓口で合わせて確かめておきましょう。
抗がん剤の通院中なら、紹介状の負担はほぼ増えない
紹介状の費用は、今の病院の外来の自己負担に加わります。すでに高額療養費の上限に届いている月なら、増える額はごくわずかです。
年収約370〜770万円(区分ウ)の人で、抗がん剤の通院により、その月の外来の総医療費が50万円だった場合を計算します。2026年8月診療分からの上限は、85,800円+(500,000円−286,000円)×1%=87,940円です。同じ月に紹介状の5,000円が加わると、総医療費は505,000円。上限は85,800円+(505,000円−286,000円)×1%=87,990円になります。増えるのは50円です。
年収約370万円までの区分エは、上限が月61,500円の定額です。上限に届いている月なら、紹介状の分で負担は増えません。逆に、経過観察中で外来の支払いが少ない月に頼むと、1,500円(3割の場合)がそのままかかります。上限の区分と計算のしかたは高額療養費のページにまとめています。
セカンドオピニオンと転院は、お金の上でも別の話
「セカンドオピニオンを受けたら、その病院で治療を受けることになる」。これもよくある誤解です。がん情報サービスは、セカンドオピニオンは今の担当医のもとで治療を受けることを前提に使うもので、転院とは違う、と説明しています。セカンドオピニオン先の病院で治療を受けたいなら、転院できるかの確認、転院の手続き、初診の予約という別の手順が要ります。
| 比べること | セカンドオピニオン | 転院 |
|---|---|---|
| 主治医 | 変わらない | 新しい病院の医師に変わる |
| 新しい病院で払うもの | 相談料(自費) | 初診料・検査・治療の自己負担(保険診療) |
| 今の病院で頼む書類 | 紹介状(診療情報提供料(Ⅱ))と検査データ | 紹介状(診療情報提供料(Ⅰ))など、あらためて必要な書類 |
| 高額療養費 | 相談料は対象外 | 新しい病院の保険診療は対象。病院ごとに計算 |
セカンドオピニオンのあとに転院する場合、紹介状は2回頼むことになります。1回目はセカンドオピニオン用、2回目は転院用です。費用も2回分かかりますが、どちらも保険がきく範囲で、3割負担なら合わせて2,250円です。
転院した月の高額療養費:病院ごとの計算に注意
高額療養費の自己負担は、病院ごとに計算します。同じ病院でも、入院と外来、医科と歯科はそれぞれ別です。院外の薬局で払った分は、処方せんを出した病院の分に足します。
マイナ保険証で受診すると、窓口の支払いは病院ごとに上限で止まります。ただし、止まるのは1つの病院の中だけです。月の途中で転院すると、2つの病院でそれぞれ払うことになり、合計が上限を超えることがあります。
区分ウの人の例で計算してみましょう。月の前半にA病院の外来で総医療費10万円、後半にB病院へ転院して入院し、総医療費50万円がかかったとします。
| 場面 | 計算 | 額 |
|---|---|---|
| A病院の外来(3割) | 100,000円×30% | 30,000円 |
| B病院の入院(窓口の上限) | 85,800円+(500,000円−286,000円)×1% | 87,940円 |
| 窓口で払った合計 | 30,000円+87,940円 | 117,940円 |
| 2病院を合わせた月の上限 | 85,800円+(600,000円−286,000円)×1% | 88,940円 |
| あとで戻る額 | 117,940円−88,940円 | 29,000円 |
A病院の分が合算できるのは、30,000円が21,000円以上だからです。70歳未満では、1つの病院(入院・外来などの区分ごと)でひと月21,000円以上払った分だけを合算します。もしA病院の支払いが18,000円なら合算できず、その月の負担は18,000円+87,940円=105,940円です。
協会けんぽは、同じ月に複数の病院でそれぞれ21,000円以上を払い、合計が上限を超えるときは、高額療養費の申請が必要だと案内しています。「健康保険高額療養費支給申請書」を出しましょう。申請は診療月の翌月1日から2年で時効です。転院のばたばたで忘れやすいので、転院した月の領収書は、2つの病院の分をまとめて保管しておきましょう。
差額ベッド代、入院中の食事代、セカンドオピニオンの相談料は、ここでいう自己負担に入りません。転院先で個室を使った場合の費用も上限の外です。
多数回該当と年間上限は、転院しても続くか
抗がん剤の治療は月をまたいで続くので、上限に届く月が重なりやすくなります。直近12か月に3か月以上高額療養費の支給を受けると、4か月目から上限が下がります。これが多数回該当です。区分ウの人なら、上限は85,800円+1%から44,400円になります。
協会けんぽの説明で、回数が通算されないとされているのは次の2つです。
- 保険者が変わったとき(国民健康保険や健康保険組合から協会けんぽに入った場合など)
- 被保険者から被扶養者に変わったとき(退職して家族の扶養に入った場合など)
病院が変わることは、この条件に入っていません。同じ協会けんぽに入ったままA病院からB病院へ移るなら、A病院で上限に届いた月も回数に数えます。限度額適用認定証やマイナ保険証で、窓口の支払いが上限で止まった月も、回数に含まれる扱いです。
がんの治療では、転院と退職の時期が重なることがあります。ここは見落としやすい点です。たとえば3か月続けて上限に届いたあと、4か月目に転院と同時に退職して国民健康保険に切り替えると、回数は数え直しになります。4か月目の上限は44,400円ではなく、国保で決まる区分の通常の上限に戻ります。退職と健康保険の切り替えを考えている人は、転院の時期とあわせて加入先に確かめましょう。
2026年8月に新しくできた年間上限(8月から翌年7月までの12か月)も、同じ保険に入っている期間で考えます。年間上限の申請は、協会けんぽでは2027年8月から始まる予定です。保険者が途中で変わった場合の扱いは、それぞれの加入先に確かめましょう。
紹介状なしで大きな病院にかかると、別料金がかかる
転院先を自分で決めて、紹介状を持たずに大きな病院を受診すると、3割負担とは別に「特別の料金」がかかります。対象は、特定機能病院と、一般病床200床以上の地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関です。
- 初診:医科7,000円以上(紹介状を持たずに受診した場合)
- 再診:医科3,000円以上(病院がほかの医療機関への紹介状を出したのに、その病院を受診した場合)
金額は「以上」なので、病院によってはこれより高く設定しています。この料金は選定療養の上乗せ分で、高額療養費の上限には入りません。救急の患者や、国の公費負担医療を受けている人などからは、病院はこの料金を取ってはならないとされています。転院を決めたら、紹介状を書いてもらってから受診するのが、余計な出費を防ぐ確実な方法です。
通院の交通費:医療費控除で数えられるもの
遠くの病院でセカンドオピニオンを受けたり、遠方の病院に転院したりすると、交通費が重くなります。交通費に健康保険はききません。医療費控除で数えられるかどうかは、国税庁の基準で決まります。
| 交通費 | 医療費控除 |
|---|---|
| 通院のための電車・バスの運賃 | 対象 |
| タクシー代 | 原則対象外。病状から急を要する場合や、電車・バスが使えない場合は対象 |
| 自家用車のガソリン代・駐車場代 | 対象外 |
| 付き添いの人の交通費 | 年齢や病状から一人で通院させるのが危険な場合は対象 |
| 入院中の世話のために家族が通う交通費 | 対象外 |
| 遠隔地の病院への旅費 | 近くの病院で治療できるなら対象外。遠隔地の病院でなければ治療ができない相当の理由があれば原則対象 |
遠方への転院の旅費は、最後の行で判断します。セカンドオピニオンを受けに行く旅費を名指しした国税庁の判断は、確認した範囲では見当たりませんでした。相談料も同じで、医療費控除の対象になるかの名指しの判断はありません。確定申告の前に税務署に確かめ、対象になる前提で家計を組まないようにしましょう。
紹介状の費用は、東京国税局の文書回答に例があります。けがの治療を別の医院で続けるために受け取った紹介状の作成料(診療情報提供料(Ⅰ)の自己負担)は、医療費控除の対象と解して差し支えない、という回答です。一方、生命保険の給付金を請求するための診断書の文書料は、診療の対価に当たらず対象にならないと考えられる、と照会の中で整理されています。
医療費控除は、1年間に払った医療費から保険金などで補てんされる額を引き、さらに10万円(総所得金額等が200万円未満なら所得の5%)を引いた額です。年間の自己負担が25万円の人なら、控除額は15万円。所得税の税率が20%なら、所得税が3万円軽くなる計算です(復興特別所得税は別)。対象になる交通費が3万円あれば、控除額は18万円になり、軽くなる所得税は6,000円増えます。詳しくは医療費控除のページを参照してください。
転院のための移送費
歩くのが著しく難しい状態で、医師の指示により緊急その他やむを得ない理由で別の病院へ移送されたときは、健康保険の移送費が出ることがあります。最も経済的な経路と方法で計算した額の範囲の実費です。ただし協会けんぽは、近くに十分な治療が受けられる病院があるのに離れた病院へ移送する場合は対象外としています。自分の希望で遠くの病院へ移る場合の移動費は、自己負担と考えておきましょう。
受けるかどうか、どこで受けるかを考えるとき
セカンドオピニオンを受けるかどうか、どの病院で受けるか、その後どの治療を選ぶか。この記事では、その判断には立ち入りません。病状と治療の見通しによって答えが変わるからです。
病院の探し方で迷ったときの相談先の一つは、がん診療連携拠点病院などにあるがん相談支援センターです。患者も家族も、その病院に通っていない人も、無料・匿名で使えます。地域でセカンドオピニオンを受けられる病院の情報を得られるほか、主治医への切り出し方や、当日に聞くことの整理も相談できます。治療の選択までに使える時間がどれくらいあるかは、主治医に確かめておきましょう。
相談の前に準備するもの
セカンドオピニオンを受けるまでの流れと、それぞれの段階でかかるお金を時系列で並べます。
| 順番 | やること | お金のこと |
|---|---|---|
| 1 | 主治医の説明(診断名、病状、勧められた治療と理由)を確かめる | このときの診察は保険診療 |
| 2 | セカンドオピニオン外来のある病院を探す | 相談料・相談時間・支払い方法を確かめる |
| 3 | 主治医に、セカンドオピニオンを受けたいと伝える | 紹介状は保険がきく。画像の複写などの実費の有無を会計で聞く |
| 4 | 相談先の病院に予約する(病院から申し込む場合もある) | オンラインや家族だけの相談の料金を聞く |
| 5 | セカンドオピニオンを受ける | 相談料は全額自己負担。領収書を保管する |
| 6 | 結果を主治医に伝え、治療方針を話し合う | 転院するなら、転院用の紹介状をあらためて頼む |
- 相談先の病院の相談料の総額と、料金に含まれる時間
- 主治医の紹介状(セカンドオピニオン用)
- 検査結果のデータ(血液検査、病理検査の記録、CT・MRIの画像を写したCDなど)
- 聞きたいことのメモ(今の主治医に言われたこと、迷っている点)
- 加入している健康保険の名前と、高額療養費の区分(転院を考えているとき)
- 今月すでに払った病院・薬局の領収書(転院した月の合算に使う)
- 往復の交通手段と運賃のメモ(医療費控除で使える場合に備える)
- 家族だけで行く場合は、本人の同意書が要るか
転院を考えている場合は、退職や健康保険の切り替えの予定も書き出しておきましょう。多数回該当の回数が続くかどうかは、病院ではなく加入している保険で決まります。
よくある質問
セカンドオピニオンの相談料に、高額療養費は使えますか?
使えません。相談料は保険がきかない自費の費用なので、高額療養費の計算に入りません。上限まで払っている月でも、相談料は別にかかります。保険がきくのは、今の病院で書いてもらう紹介状の費用(診療情報提供料(Ⅱ)、500点)のほうです。
紹介状を頼むと、いくらかかりますか?
セカンドオピニオン用の紹介状は500点で、10割では5,000円です。3割負担なら1,500円、2割なら1,000円、1割なら500円です。その月に外来の支払いが上限に届いていれば、負担の増加はほとんどありません。画像の複写などの実費が別にかかるかは、病院の会計窓口で確かめましょう。
転院すると、多数回該当の回数はリセットされますか?
病院が変わるだけなら、同じ健康保険に入っている限り、協会けんぽの説明では回数は続きます。通算されないのは、保険者が変わったときや、被保険者から被扶養者に変わったときです。転院と同時に退職して国民健康保険に入ると、回数は数え直しになります。
遠くの病院に転院した場合の交通費は、医療費控除に入りますか?
近くの病院で治療できるのに遠くの病院へ通う場合の旅費は、対象外です。遠隔地の病院でなければ治療ができない相当の理由があれば、原則として対象になります。電車やバスの運賃が基本で、自家用車のガソリン代や駐車場代は入りません。迷う場合は、確定申告の前に税務署に確かめましょう。