給与が出ない休職中も、健康保険と厚生年金の保険料は毎月かかります。額は休職前の標準報酬月額のままで、会社と本人が半分ずつ負担する形も変わりません。

標準報酬月額30万円(協会けんぽ・東京都、令和8年度)なら、本人の負担は月42,570円です。40〜64歳は介護保険料が加わって月45,000円、1年で51万〜54万円になります。

給与がないので天引きができず、本人の分は会社に振り込むなどの別の方法で払います。雇用保険料は給与がない月は0円です。住民税は前年の所得にかかるので、休職中も続きます。

このページの内容

休職中にかかるもの・かからないもの

会社員が病気で休職し、給与が全く出ない月を想定して並べました。会社に在籍したまま休んでいる場合の話です。

種類無給の休職中決まり方
健康保険料かかる標準報酬月額×都道府県の保険料率。会社と本人で折半
子ども・子育て支援金かかる(2026年4月分から)健康保険料と一緒に徴収。率は全国一律0.23%(協会けんぽ)
介護保険料40〜64歳はかかる健康保険料と一緒に徴収。率は全国一律1.62%(協会けんぽ)
厚生年金保険料かかる標準報酬月額×18.3%。会社と本人で折半
雇用保険料かからない支払われた賃金×料率。賃金が0円なら0円
住民税かかる前年の所得で決まる。天引きできない分は普通徴収などに切り替える
所得税給与がなければ源泉徴収もない傷病手当金は非課税所得

給与の一部が出る休職(休職給がある会社)では、その給与から天引きされる形が続くことがあります。休職中に給与が出るかどうかは、就業規則しだいです。

休職の期間や満了したときの扱いは、がんを理由に解雇できるのかで説明しています。

無給でも保険料がかかる理由:法律の決まり

健康保険法第161条と厚生年金保険法第82条は、会社(事業主)と被保険者が保険料を半分ずつ負担すると定めています。同じ条文で、納付する義務を負うのは事業主です。

会社は本人の負担分もあわせて、翌月末日までに納めます。休職中もこの仕組みは同じです。

病気で休職して賃金の支払が止まった場合について、厚生労働省は昭和26年の回答で扱いを示しています。使用関係が続いているとみられる場合は資格を失わせない、という内容です。

そのうえで、賃金が止まる前の標準報酬による保険料を会社と本人が折半し、会社が納付する扱いが妥当としています。

「給与がないなら、保険料も免除される」は誤解です

「休んでいる間は保険料も止まる」と思っていませんか。保険料を徴収しないと法律が定めている休業は、産前産後休業と育児休業等です(健康保険法第159条・第159条の3など)。

病気の休職を理由に保険料を免除する定めはありません。会社が届け出れば止まる、という仕組みもないのです。

「無給になれば、保険料の額も下がる」も誤解です

保険料の元になる標準報酬月額は、毎年4〜6月の報酬で決め直します(定時決定)。日本年金機構は、病気欠勤などで4〜6月に報酬を全く受けない場合、従前の標準報酬月額で決定するとしています。

4〜6月の3か月とも、報酬の支払の基礎になった日数が17日未満の場合も同じです。休職が何か月続いても、保険料は休職前の額のまま請求されます。

標準報酬月額の決まり方は標準報酬月額で説明しています。

計算例:標準報酬月額30万円の人の本人負担

協会けんぽの東京都の保険料率(令和8年度の9.85%)で計算します。健康保険料率は都道府県で違い、令和8年度は新潟県の9.21%から佐賀県の10.55%まで幅があります。

自分の率は、協会けんぽの都道府県別の表で確かめましょう。

保険料計算(全体)本人負担(月)
健康保険料(東京都9.85%)30万円×9.85%=29,550円14,775円
子ども・子育て支援金(0.23%)30万円×0.23%=690円345円
介護保険料(1.62%・40〜64歳だけ)30万円×1.62%=4,860円2,430円
厚生年金保険料(18.3%)30万円×18.3%=54,900円27,450円
年齢本人負担(月)半年(6か月)1年(12か月)
39歳以下42,570円255,420円510,840円
40〜64歳45,000円270,000円540,000円

会社もほぼ同じ額を負担しています。会社の負担分を本人が払う必要はありません。

体感に直します。標準報酬月額30万円の人の傷病手当金は1日6,667円で、30日分は200,010円です。そこから42,570円を会社に払うと、手元に残るのは157,440円になります。

休職が半年続けば、保険料の本人負担だけで約26万円。家計の見積もりに、この額を先に入れておきましょう。

健康保険組合に入っている人は、保険料率も、会社と本人の負担の割合も組合の規約で決まります。給与明細の控除欄に載っていた額が、休職中の1か月分の目安です。

公務員の共済組合は仕組みが違うので、公務員ががんになったらも見ましょう。

本人の分はどうやって払うか

ふだんは、会社が給与を払うときに前月分の保険料を差し引いています(健康保険法第167条・厚生年金保険法第84条)。この条文は「報酬を支払う場合」の決まりです。

給与が0円の月は差し引く元がありません。そのため、本人の負担分をどう受け取るかは、会社が決めることになります。

日本年金機構の保険料の計算方法の説明には、被保険者が事業主へ現金で払う場合の端数処理も載っています。給与を通さずに会社へ払う形も、制度の想定の内です。

払い方の例確かめること
毎月、会社の口座に振り込む振込先、期限、振込手数料をどちらが持つか
会社が立て替え、復職後や退職時に精算する精算の時期と方法、まとめて差し引く額の上限
休職給や賞与が出る月に、そこから差し引く差し引く月と額

どの方法になるかは会社の規程と話し合いで決まり、法律で一つに決まっているわけではありません。このサイトでは、どの方法が正しいかを判定しません。

立て替えた分を復職後にまとめて引くとき

労働基準法第24条は、賃金を全額払うことを原則としています。賃金から差し引けるのは、法令に定めがある場合と、労働者の過半数で作る労働組合などとの書面の協定がある場合です。

保険料の天引きを定めた条文は「前月分」の保険料についての決まりです。何か月分もの立替えを復職後の給与から引く扱いは、会社の規程や労使協定で決まっています。

月々いくらずつ引かれるのか、復職してすぐの手取りが足りるかを、休職に入る前に確かめておきましょう。

短時間勤務から戻る場合は、もともとの手取りも少なめです。そこに立替えの精算が重なると、家計が苦しくなりやすい時期になります。

休職に入る前に人事に聞くことのチェックリスト

  • 休職中の給与(休職給)が出るか、出るなら何か月か
  • 本人負担分の保険料を、毎月払うのか、立替えて後で精算するのか
  • 毎月払うなら、振込先の口座、期限、1か月分の額
  • 立替えなら、精算の時期と、給与から差し引く1か月あたりの額
  • 40歳以上なら、介護保険料を含めた額になっているか
  • 住民税を普通徴収に切り替えるか、切り替えたら納付書がいつ届くか
  • 休職中に賞与が出る場合、その賞与から何が差し引かれるか
  • 傷病手当金の申請書の会社の記入欄を、毎月いつまでに頼めばよいか
  • 退職した場合、立替えの残りをどう精算するか

傷病手当金から差し引いてもらえるか

では、傷病手当金から保険料を引いてもらえるでしょうか。協会けんぽの場合、傷病手当金は本人名義の口座に振り込まれます。

協会けんぽ京都支部は、申請書の振込先には申請者と同じ名義の口座を書き、事業所代表者名義など本人以外の口座は書かないよう注意しています。新しい様式では受取代理人の欄も廃止されました。

健康保険法第61条は、保険給付を受ける権利を譲り渡したり、担保にしたり、差し押さえたりできないと定めています。

傷病手当金が口座に入ってから、自分で会社に払う。協会けんぽの人は、この順番で考えるのが基本です。健康保険組合の人は、振込先の扱いを組合に確かめましょう。

ここで気をつけたいのは入金の時期です。傷病手当金は休んだ月の締め日のあとに申請するので、最初の入金は休み始めてから1か月以上あとになることがあります。

その間も保険料は月ごとにかかります。最初の2〜3か月分の保険料は、手持ちのお金から出す前提で準備しておきましょう。

傷病手当金の額や申請の流れは傷病手当金(がんの場合)に、日額は傷病手当金の計算ツールで出せます。

払えないときはどうなるか

保険料を国に納める義務は会社にあります。本人が会社に払えなかった月の分も、会社は期限までに納めなければなりません。

会社に払えなかった本人負担分の扱い(立替えにして後で精算する、分けて払う、など)は会社との話し合いで決まります。払えない見込みなら、未払いが積み上がる前に人事に相談しましょう。

相談するときは、傷病手当金の見込み額と、毎月払える額を数字で示すと話が進みます。

保険料以外の生活費も足りないときは、公的な貸付けや支援の窓口があります。がんで治療費が払えない・お金がないときにまとめました。

退職すると保険料の形が変わる

保険料の負担が重いからと退職を考える場合は、退職後の保険料と比べてからにしましょう。退職後に任意継続で同じ健康保険に残ると、会社の負担がなくなり、保険料の全額を自分で払います(健康保険法第161条)。

国民健康保険に入るなら、保険料は前年の所得と市区町村で決まります。厚生年金の代わりに国民年金の保険料(令和8年度は月17,920円)も自分で納めることになります。

任意継続と国保の比べ方、傷病手当金を退職後も受け取る条件は、がんで仕事を辞める前に確認することを見ましょう。

退職後の負担を下げる制度は国民健康保険料の減免と軽減、国民年金保険料の免除・納付猶予で説明しています。

休職中に払い続ける保険料は、ただの出費でしょうか。厚生年金の被保険者の期間が続き、健康保険の資格も続くので、高額療養費や傷病手当金をそのまま使えます。

雇用保険料:給与がない月はかからない

雇用保険料は、労働保険徴収法第11条で、会社が払った賃金の総額に料率を掛けて計算すると決まっています。本人の負担分は、支払う賃金から差し引かれます(第32条)。

賃金が0円の月は、掛ける元がないので雇用保険料も0円です。休職給が出る月は、その額に料率がかかります。

令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の本人負担は、一般の事業で賃金の1,000分の5です。休職給が月10万円なら、10万円×5/1,000で500円になります。

傷病手当金は健康保険から払われる給付で、会社が払う賃金ではありません。傷病手当金の額に雇用保険料はかかりません。

雇用保険から受け取る給付(失業したときの基本手当など)は、在籍中の休職とは別の話です。退職後に受け取る流れはがんで退職した後の失業保険にまとめています。

介護保険料:40歳から64歳の人

40〜64歳の人は、介護保険の第2号被保険者として、健康保険料と一緒に介護保険料を納めます。協会けんぽの介護保険料率は全国一律で、令和8年度は1.62%です。

健康保険料と同じく、休職中も休職前の標準報酬月額で計算され、会社と本人で折半します。標準報酬月額30万円なら本人の分は月2,430円です。

がんの人は、40〜64歳でも条件を満たせば介護保険のサービスを使える場合があります。申請の流れは介護保険(40歳からのがん)で説明しています。

住民税:前年の所得にかかるので休職中も続く

会社員の住民税は、前年の給与所得をもとに計算され、6月から翌年5月までの12回に分けて給与から天引きされます(特別徴収。地方税法第321条の3・第321条の5)。

今年の給与が0円でも、去年の所得にかかる税額は消えません。

給与の支払がなくなると、会社は翌月以降の分を天引きする義務がなくなり、市区町村に届出書を出します。天引きされなくなった税額は、普通徴収(本人が納付書や口座振替で納める形)に移る仕組みです。

さいたま市は、休職などで給与の支給がなくなる場合は普通徴収に切り替えられると案内しています。会社が出す書類は「給与所得者異動届出書」です。

給与がなくなった時期残りの住民税の扱い(地方税法第321条の5第2項)
6月1日〜12月31日普通徴収に切り替わる。本人が申し出れば、5月31日までに払われる給与・退職手当等から一括で天引き
1月1日〜4月30日5月31日までに払われる給与・退職手当等が残りの額を超えるなら、そこから一括で天引き

普通徴収の納期と回数は市区町村の条例で決まります。切り替えた後の納付書が届いたら、納期を確かめましょう。

会社が住民税を立て替えて天引きを続ける扱いにしているかどうかは、会社に確かめましょう。この扱いを定めた一次資料は確かめられませんでした。

傷病手当金は非課税所得です。休職した年の所得が下がれば、翌年度の住民税は下がるのが基本です。

ただし実際に下がるのは翌年6月からで、休職した年度の分は高かった前年の所得で決まっています。住民税の減免や納付の猶予は市区町村ごとの制度で、税金が払えないときの猶予と減免で扱います。

がんの休職で起きやすいこと

  • 手術で休み、復職し、治療の再開でまた休む。休職のたびに、保険料の払い方を人事に確かめ直す必要がある
  • 通院で月に数日だけ休む働き方では、給与が減っても出ているので、保険料も住民税も天引きが続く
  • 休職が年をまたぐと、4〜6月が無給でも標準報酬月額は休職前のまま。保険料は1年を超えても下がらない
  • 治療費の高い月と、保険料・住民税の支払いが重なる。医療費の月の上限は高額療養費で決まる

監修者の相談記録を単語で数えた集計では、3,192名のうち310名が休職・退職・復職など仕事の悩みに触れていました。休む前に、収入と出ていくお金の両方を表にしておくと、慌てずに済みます。

よくある質問

休職中の社会保険料は、会社の負担分も自分で払うのですか?

払うのは本人の負担分だけです。会社の負担分は休職中も会社が負担します。健康保険法と厚生年金保険法は、会社と本人が半分ずつ負担すると定めています。

全額を自分で払うことになるのは、退職して任意継続に入った場合などです。

休職中に保険料を払わないと、健康保険が使えなくなりますか?

保険料を国に納める義務は会社にあり、会社は本人分も含めて納めます。本人が会社に払えていない分の扱いは、会社との話し合いになります。

払えない見込みのときは、黙って滞らせずに早めに人事に相談しましょう。

傷病手当金を受け取っていると、保険料の額は変わりますか?

保険料は標準報酬月額で決まり、休職中は休職前の額のままです。日本年金機構は、4〜6月に報酬を全く受けない場合は従前の標準報酬月額で決めるとしています。

傷病手当金は健康保険の給付で、給与ではありません。

休職中に40歳になったら、介護保険料が増えますか?

40〜64歳は健康保険料と一緒に介護保険料がかかります。協会けんぽなら本人分は標準報酬月額×1.62%の半分で、30万円なら月2,430円が加わります。

どの月から加わるかは、会社から届く請求で確かめましょう。

住民税の納付書が急に届きました。払わなければいけませんか?

休職で給与の天引きができなくなり、普通徴収に切り替わった分の納付書です。前年の所得にかかる税なので、納期までに納めましょう。

納めるのが難しいときは、納期の前に市区町村の税務担当の窓口に相談しましょう。