「食物繊維をたくさん食べると、大腸がんの予防になる」この考えを否定する研究が、2OOO年に相次いで3件報告され、世界中の研究者を驚かせたことがあります。3つの研究は、いずれも「無作為割付臨床試験」です。
多くの大腸がんの前癌病変と考えられている「大腸ポリープ(腺腫)」が見つかり、いちど切除した人を対象として、食物繊維によってポリープの再発を予防できるかどうかを確かめるために行われました。最初の2つは、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の2000年4月2O日号に、同時に報告されました。
第1の研究では、食物繊維の一種である「小麦ふすま」を多く添加したシリアル(いわゆるコーンフレク)を使いました。内視鏡検査によって大腸ポリープが見つかり、ポリープを切除した40~8O歳の男女13O3人を、ランダムに2つのグループに分けました。
第1のクループには、1日22.5グラムの小麦ふすまを含むシリアルを食べてもらい、第2のグループには、1日2グラムの小麦ふすまを含むシリアルを食べてもらいました。その結果、研究開始から3年後のポリープの再発率は、第1のグループでは47.O%、第2のグループでも51.2%と、ほとんど差がありませんでした。
第2の研究では、シリアルなどの添加食品を使わずに、ふつうの食べ物の効果を調べました。ポリープを切除した35歳以上の男女19O5人を、ランダムに2つのグループに分けました。第1のグループには、低脂肪(摂取カロリー全体の2O%)、高繊維(1日1000キロカロリーあたり18グラム)、多くの野菜と果物(1日1000キロカロリーあたり3.5皿分)を目標とする食事をしてもらいました。第2のグループには、それまでと同じ食事を続けてもらいました。
その結果、研究開始から4年後のポリープの再発率は、第1のグループでは39.7%、第2のグループでも39.5%と、差がありませんでした。
第3の研究は、「ランセット」の2OOO年1O月14日号に報告されました。ポリープを切除した552名を、ランダムに3グループに分けました。第1グループにはカルシウムのサプリメン卜(1日2グラム)、第2グループには水溶性繊維の一種であるサイリウムのサプリメン卜(1日3.5グラム)、第3グループにはプラセボを投与しました。
その結果、カルシウム剤を投与したグループの大腸ポリープ再発率(15.9%)は、プラセボを投与したグループの再発率(20.2%)より低めになりました(統計的に意味のある差ではない)。ところが、サイリウムを投与したグループの再発率(29.3%)は、プラセボ群より有意に高くなるという、意外な結果でした。
「食物繊維が大腸がんの予防になる」という考えは、1970年代に英国の病理学者であるバーキットが、「食物繊維をたくさん食べているアフリカの民族では、大腸がんが少ない」ことを報告したのが発端です。それいらい、「食物繊維の消費量が多い国では、大腸がん死亡率が低い」、「大腸がん患者の、健康だったころの食物繊維の摂取量を調べると、健康な人より少ない」など、この考えを支持する研究が報告されてきました。
ところが、食物繊維の添加食品や、食物繊維に富む食事をじっさいに食べてもらうという、ここで紹介したような最近の研究の多くでは、大腸ポリープの再発予防効果が認められていません。これらの研究には、「研究期間が3~4年と短い」「前癌病変である大腸ポリープについての研究であり、大腸がんそのものに対する予防効果をみているわけではない」という問題点があります。
しかし、5~1O万人という多数の集団を長期間にわたり追跡した「前向きコホート研究」の多くでも、「ふだん食物繊維を多く食べている人たちでも、大腸がんの発生率は低くない」という結果になっているのです。それでは、健康のために食物繊維をたくさん食べるのは無駄」なのでしょうか。
必ずしもそうではありません。食物繊維の摂取量が多い人の方が、心筋梗塞や糖尿病のリスクが低いことは、最近の研究でも一致しています。したがって、食物繊維に富む食品を多く食べることが、健康に有益なことには変わりありません。けれども大腸がんについては、食物繊維で予防できるとは限らないことを、一連の研究は讐告している、といえるでしょう。
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