アルコールと乳がんについての42件の疫学研究をまとめたところ、1日ワインをグラス1杯ていどの少量飲酒でも、乳がんリスクが1O%高くなりました。
米国ボストン大学のグループによるこの研究は、「米国疫学雑誌」2OO1年1O月15日号に報告されました。これまで多くの疫学研究で、アルコールによる乳がんリスクの上昇が示されてきました。
けれども、どれだけ飲むとどれだけリスクが上がるかという、こまかな量的な関係は、あまりはっきりしませんでした。研究グループは、1966~1999年までに行われた、アルコールと乳がん罹患についての疫学研究を、文献検索によって捜し、42件の論文を選び出しました。
これらの研究で報告されている数値を、統計的な方法を使って、ひとつの数値に要約しました。その結果、お酒を飲まない人と比べたときの乳がんリスクは、1日平均の飲酒量がアルコール換算で6グラム、12グラム、24グラムの人で、それぞれ4.9%、1O%、21%高い、という結論に至りました。
12グラムのアルコールは、日本酒なら半合、ワインなら1杯(100ミリリットル)、ビールでも1杯(250ミリリットル)に、相当します。つまり、このていどの少量飲酒でも、飲まない場合と比べて、乳がんリスクが1O%高くなるという結果でした。
おなじ分析を、ワイン、ビール、(ウィスキーなどの)蒸留酒に分けて行いました。けれども、アルコールの種類によらず、飲酒量が増えるとリスクが高くなるという結果は変わりませんでした。
ワインによるリスクの低下はなく、量が増えればリスクも高くなりました。以上の結果から研究者らは、アルコールと乳がんリスクの関係は、飲酒量が増えるとリスクが直線的に上昇するという量的な関係があり、少量の飲酒でもリスクが高まる可能性があると結論づけたのです。
同時に、アルコールによる乳がんリスクの上昇の程度は、(リスクが2倍や3倍になるような)それほど大きなものではないと述べています。いっぱんに、対象者が1O万人を超えるような大規模な研究でも、その研究ひとつだけでは、「アルコールで乳がんリスクが高まる」という大ざっぱなことは分かっても、「どれだけ飲むとどれだけリスクが上がるか」という、こまかな量的関係までは、明らかにできないことが少なくありません。
これまでに報告された、4万例以上の乳がん症例を含む42件もの論文のデータを使って、この量的関係をはっきりさせようとした点が、この研究の特徴です。
ただし研究者らは、(ワイン1杯ていどの)少量飲酒による、(1O%ていどの)小さなリスクの上昇を検出するのは、さまざまな誤りや偏りの影響を受ける「疫学的方法の解像度を超える」問題であり、議論に決着がつくことはおそらくないだろうという、他の研究者の言葉を引用しています。
その上で、少量飲酒による乳がんリスクの上昇について、「因果関係の問題は、いぜん明らかではない」と、慎重に判断しています。
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