食道がんの手術は身体的負担が大きいことから、術後にさまざまな合併症を起こす危険性があります。消化器がんのなかでも合併症が起こる確率がかなり高いのが現状です。
起こりやすいのは、呼吸器系の合併症や、声帯の働きを調整している反回神経マヒなどです。気管や反回神経の周囲にはリンパ節転移が多いため、手術時にそれを根こそぎ切除することから、気管や神経が影響を受けやすいのです。
また、治療後に、誤嚥性肺炎や逆流性食道炎、ダンピング症候群などの後遺症が現れることもよくあります。
■主な合併症(切除や郭清の範囲によって頻度は違う)
<肺炎、無気肺など(呼吸器合併症)>15~30%
気管の血流が悪化したり、声帯の動きが悪くなり、痰の排出が難しくなる。その結果、肺炎や肺に空気が入らない無気肺、酸素の取り込みが悪くなる低酸素血症などが起きる。
<縫い合わせがうまくくっつかない(縫合不全)>2~3%
食道と胃や、食道の代わりに移植した臓器などとの縫合部分で、血流の悪化が起きたり強い圧力がかかったりすると、消化液が外にもれ出し、膿がたまる。発生すると腫れや痛みがある。たまった膿は、管を使って排出させる。
<声がかすれる、飲み込めない(反回神経マヒ)>15%
声帯の動きをコントロールする「反回神経」が傷つくと、声がかすれる。痰の排出や飲食物の飲み込みがうまくできなくなることもある。反回神経マヒが起きたときは、飲み込みの訓練をする。
■主な後遺症
手術による治療が終わったあとでも残ってしまう症状もある。それぞれの症状に対して、適切な治療を受けたり、必要に応じて改善のための訓練をしたりして対処する。
・誤嚥性肺炎
反回神経マヒで飲み込みが悪くなるなどで、気管に飲食物や消化液が入って(誤嚥)、肺で細菌が繁殖して肺炎が起こる。声帯のトレーニングをしたり、誤嚥しないよう飲食のしかたを工夫したりして対処。
・ダンピング症候群
通常、食べ物は胃から腸へと少しずつ送られるが、食道を切除すると急速に腸へと食べ物が流れるため、血糖値の変動から、冷や汗や動悸、めまいなど、さまざまな不快症状が現れることがある。
・逆流性食道炎
胃液が食道へ逆流しないよう、食道と胃の間には防止機構があるが、手術でそれが失われると、逆流しやすくなる。胃液によって残った食道に炎症が起きた場合は、胃酸を抑える薬などで対処する。
・吻合部狭窄
つないだ部分が、傷が治ったあとで収縮し、食道の内腔が狭くなって、飲み込みにくくなる。内腔を広げる専用の器具を用いるか、内視鏡を使って狭窄部分にバルーン(風船)を入れ、バルーンを膨らませて狭くなった部分を広げる。
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