術前化学療法(手術前に抗がん剤をする治療法)は1980年代にまず「局所進行乳がん」の患者を対象に行われました。
局所進行乳がんは、がんが皮膚表面に露出したり、胸の筋肉や肋骨など胸壁まで達していたり、脇や鎖骨の下のリンパ節へたくさん転移したりするⅢ期の乳がんです。理由は、すぐに手術をしても十分に局所治療ができない病状だからです。
しかしここ10年は、比較的早期の乳がんの患者さんを対象に、手術の前に化学療法を行う「術前化学療法」が急速に広まり「標準治療」となりました。「術前化学療法」は手術の前に抗がん剤を使ってシコリを小さくし、乳房を温存するために行われています。
乳がんと告知を受けたとき、患者さんにとっての大きな問題となるのが、「乳房を残すか、残さないか」ということでしょう。乳房温存術が可能とされる患者さんは、シコリの大きさが3cm以下の人で、広範な石灰化(マンモグラフィで広い範囲に石灰沈着があること)がない、乳がんが限られた範囲にある、というような条件を満たす場合です。
以前は、シコリが大きい場合や乳頭に近いところにある場合は、乳房を残したくても温存術ができないと考えられていました。術前化学療法によってシコリが小さくなることから、乳房温存療法を選択することが10人中7人の患者さんでできるようになりました。
がん細胞はシコリになってからはどんどん増殖していきます。
ですから、シコリが小さいうちに抗がん剤で叩いてしまえば、体の中に隠れているがん細胞も少ないことから根絶やしにできると考えられていました。
ところが、いくつかの臨床試験の結果、術前化学療法の方が術後化学療法より統計学的に再発や死亡をより抑えることができるという結果は出ていません。つまり、化学療法として術前でも術後でも再発を予防できる効果は同じなのです。
この結果は、当時の腫瘍学の仮説から予測できないものでした。
その理由として、がん細胞が最初から抗がん剤に抵抗性を持っていることや、「がん幹細胞」から新たながん細胞の増殖が始まることなどが考えられます。
ただ、術前化学療法によって9割近い患者さんはシコリが小さくなっていくことを自ら体験します。
そのため、抗がん剤の治療を積極的に受けて、前向きに乳がんの治療を受け止められるようになる、という利点もあります。
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