もしがんがはっきりと目で識別でき、かつ切除できるものなら、がんの手術は、この重大な病気を完治させるうえで、いまでももっとも有効な治療法だといえます。
膨大な数になったがん細胞の数をゼロ近くまで減少させる治療法は他には限られているからです。とはいえ、手術はその性格上、傷や後遺症を必ず残す不完全な治療法でもあります。
大きく切除すればするほど必然的に合併症が発生しやすくなり、死亡率も高まります。当然、後遺症もより深刻になります。しかし、副作用ばかりを気にかけて手術の範囲を縮小し、その結果がんを取り残すのでは意味がありません。
残されたがん細胞がふたたび増殖して命取りになる可能性もあるからです。ひと口にがんといっても、実際には100種類以上の異なる病気が含まれます。これらのがんは、進行する際の方向性から大きく2つに分けられます。
ひとつは、発生場所(原発巣)のまわりに広がったり、その周辺のリンパ節に転移しやすい「局所または領域に限局しやすいがん」であり、もうひとつは、血液に乗って体全体に移動し、さまざまな臓器や器官に転移することの多い「全身に散らばりやすいがん」です。
前者の局所または領域のがんに対しては、一般に原発巣のまわりや周辺部のリンパ節を大きく切除する手術を行います。さらに、手術した部分やそのまわりからの再発を抑えるために、放射線治療を追加的に行うこともあります。
このように診断で見つかったがんの病巣部だけでなく、転移した可能性のある部分をも含めて切除することを「拡大手術」といいます。しかし、発生場所のまわりに広がりやすい局所のがんの治療に、拡大手術が必ずしも適しているとは限りません。たとえば直腸がんは局所のがんのひとつです。
直腸は大腸の一部で、肛門の手前の直線をなす部分をいいます。直腸がんに対しては早くから摘出手術が行われていましたが、手術後にそこから再発した場合には完治させることが困難であるだけでなく、さまざまな合併症が生じました。
そこで1950年代からは、直腸がんに対して、腸管やときには肛門の組織まで大きく切除する拡大手術が試みられました。ところが、拡大手術によってもがんの再発はそれほど抑えられませんでした。
しかも切除された肛門に代わる人工肛門(ストーマ)をつけなければならなかったり、手術の後遺症で尿が十分に出なくなったり、性機能に障害が現れたりするなど、患者の手術後の「生活の質」は大きく低下しました。
そこで現在では逆に、手術の範囲を限定し、腸や肛門の機能を残すとともに、後遺症を抑えることによって、患者の生活の質を高める方向にあります。これを「縮小手術」といいます。
この種の手術を行う際には、手術で取り除くことができなかった目に見えないがん細胞を殺すために、放射線治療や抗がん剤による治療(化学療法)が併用されます。他方、乳がんはがんが成長していたり、わきの下のリンパ節に明らかに転移している場合には全身病としての性格が強いので、手術前に抗がん剤の治療を行います。
この時点では、手術は抗がん剤やホルモン剤による全身治療に対する付加的な治療となるので、これを「補助外科治療」と呼びます。一方で、乳がんの場合、骨、肺、肝臓、脳などに転移している病期4の患者を根治することは事実上不可能になります。
たしかに、がんを根治することが医療の第一義的な目的ではあります。しかしそれが困難なときには、患者の生活の質や価値観を尊重して、よりよい治療法を選択すべきだといえます。
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