がんの告知後、なかには不安感が強いあまり、うつ状態になる人もいます。
そんな状態が2週間以上つづけば、心のケアが必要だと判断すべきです。「しばらくたてば、なんとかなるだろう」というふうに軽く考えるべきではありません。アメリカでは最近、肺がんの患者について、早い時期から精神的なケアを受けた患者は、ケアを受けなかった患者にくらべて、長く生存するという発表がおこなわれました。
これは重い病気の治療にあたっては、心の問題がいかに重要かという証明です。日本の大病院でも、患者の心のケアが重視されるようになってきました。患者がうつ状態になったのではないかと感じたら、すぐに主治医や看護師に相談するか、心のケアができる専門医の診察を受ける必要があります。
本人は心療内科医や精神科医に相談するのをいやがるかもしれません。しかし、がんにかかった人の心のケアは病気の治療とおなじくらい大切なことであり、ケアを受けるのが早ければ早いほど効果があらわれます。
ばあいによっては「眠眠導入剤」「抗不安薬」「抗うつ剤」が処方されるかもしれません。このような種類の薬を飲みたがらない人がいるかもしれませんが、不眠や食欲の低下に効果があると説得しましょう。食事がとれて眠れるようになれば、治療に備える体力もついてきます。
精神的なケアで気持ちがらくになった患者は、病気に正面から向きあおうとする積極的な気持ちになるでしょう。この気持ちが病気の治療にも大きくプラスします。もうひとつの方法として、全国の「がん診療連携拠点病院」(がん拠点病院)に設置されている「相談支援センター」に予約して、心のケアの相談にいってみましょう。
相談支援センターは無料で相談に応じてくれることになっています。これらの施設は患者本人だけでなく、家族や近親者の大きな支えにもなります。家族のだれかががんにかかると、家族の全員が緊張状態を強いられます。
このときの心理的な重圧もまた並大抵ではありません。このような状態がつづくと、家族にもまた精神的なケアが必要になることがあります。とくに治療が長引いて介護が必要になるときは、家族の精神的な重圧や心労を緩和するのも、がん治療の重要な一面です。
がん患者を抱えた家族のなかには、「精神科で治療を受けたら、重い冬のコートを脱ぎすてたような気分になった」という人たちがいます。不安が強いときや落ちこみのはげしいときには、全身がガチガチに硬くなっていることがあります。
こんな状態では、まともに考えることも、効果的に治療を受けることもできないでしょう。心の治療の専門家の治療を受けるか、マッサージのような物理的治療を受けると、驚くような効果がでることがあります。
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