がんの化学療法で使われる薬に、分子標的薬という種類があります。
この分子標的薬とは、細胞ががん化するときに関係する特異な遺伝子や、タンパク質の分子を標的として作用する薬剤のことで、がん細胞の増殖を抑えたり、がんを小さくしたりする効果を期待できます。
つまり分子標的薬は、がんに対抗する新しい領域の薬剤で、効果は期待できますが、おしなべて高額です。抗がん剤も安くはありませんが、分子標的薬になるとケタがちがいます。日本では、特定の分子を標的とした薬剤を開発するという考え方がなかったのと、そのほかのいくつもの理由から、分子標的薬の開発は大きく遅れました。
このため現在は、ほぼすべての分子標的薬が、アメリカを中心とする海外から輸入されます。いまでは、ひとつの薬を開発するのに、2OO億円かかるといわれる時代です。
抗がん剤や分子標的薬は高いので、日本の医薬品の輸出額から輸入額を引いた金額(つまり赤字)は、1兆円に達すると見られています。たとえば、もっとも高い部類の腎臓がんの分子標的薬「ネクサバール」(代表的な商品一般名は「ソラフェニブ」、以下おなじ)は、1日に2回服用し、毎日服用しなければなりません。
1日の薬代が2万17O5円になりますので、1か月(3O日分)では65万144円、1年間で792万2325円になります。もうひとつの「スーテント」(スニチニブ)は、8546円のカプセルを1日に4カプセル服用します。
この薬では服用を中止する休薬期間がありますが、1年で1247万7525円かかります。抗がん剤でも分子標的薬でも、やがて薬が効かなくなる「薬剤耐性」という問題がおこります。腎臓がんで「ネクサバール」も「スーテント」も効かなくなれば新しく承認された「アフイニトール」(エベロリスム)や「トリセル」(テムシロリスム)に移らざるをえません。
このばあい、日に1錠1万2711円の薬を2錠服用しますので、1日の薬代が2万5422円、1年間では927万9O3O円かかる計算になります。血液のがんでも、よく効く分子標的薬が出現したので、いまでは根治が期待できたり、薬を服用していれば長い生存が望めたりするようになりました。
しかし高い薬代に耐えかねて、服用を中断する患者がいるといわれます。また代表的な分子標的薬である「ハーセプチン」(トラスツブマブ)は、「HER2」という特殊なたんぱく質の多い乳がん女性と、一部の胃がん患者に投与されます。
乳がん患者がこれを1年間投与されると、463万12O8円かかります。しかし、それだけではありません。閉経前の乳がんの患者は、再発やがんの進行を抑えるために、一般に「抗エストロゲン剤」と「LH-RHアゴニスト製剤」というホルモン剤を使用します。
「LH-RHアゴニスト」の「リュープリン」(リュープロレリン)の皮下注射を4週ごとに1本と、「抗エストロゲン剤」の「ノルバデックス」(タモキシフェン)を毎日2回服用すると、年に111万56O1円かかります。
進行した前立腺がんでも「LH-RHアゴニスト製剤」の注射と、「抗アンド口ゲン剤」の「カソデックス」(ビカルタミド)を併用する「MAB療法」を考えるのが一般的です。この治療法でも、1年に38万633O円かかり、病院にいって検査をうけて薬をもらうと、いちどに3万円から5万円の支払いになります。つまり、ホルモン剤といえども安くはないのです。
抗がん剤や分子標的薬では、ほかの薬剤を併用されることが多く、さらに副作用を軽くしたり抑えたりするための薬も必要になります。また進行したがんでは、痛みを和らげたり除去したりする「鎮痛剤」が欠かせません。
鎮痛剤の金額は痛みの程度と投与量によって変わりますが、投与量が高くなればなるほど金額も高くなります。ばあいによっては保険がきいても、月に1O万円をこえることがあります。がんの治療では、何年にもわたって薬剤を使用することがあります。
・・・
どうすれば、がんは治せるのか！？
標準治療（手術・抗がん剤・放射線）に耐え、代替療法も活用すれば・・・
本当にがんは治せる？
詳しくはこちらのページで
こちらのページで明らかにしています。