これまで、さまざまな調査から、高学歴、肥満、初潮が早い人、閉経が遅い人、出産経験のない人や高齢出産、未婚、良性の乳腺の病気などが乳がんのリスクとして指摘されてきました。
科学的データに基づいて乳がん治療の方針を示した「乳がん診療のガイドライン」の中でも、乳がんとの関係が「確実」あるいは「ほぼ間違いない」と評価されているのは、①アルコール、②肥満、③初潮と閉経の年齢、④出産、授乳、⑤家族歴(家族に乳がんになった人がいる)、⑥良性の乳腺の病気、です。
これだけを見ると、関連のない項目が並んでいるように見えますが、実はこれらの項目はみな1つの方向をさしています。それは「エストロゲン(卵胞ホルモン)」という女性ホルモンと乳がんの関係です。
乳がんの60~7O%はエストロゲンの働きで成長します。こういうがんを「ホルモン依存性」のがんといいます。実は、この乳がんの性格が治療にも重要な意味を持ちます。
男性や、若いときにエストロゲンを分泌する卵巣を取った女性に、乳がんが少ないのもそのためです。逆に、最近では、更年期障害などの治療に使われるエストロゲンを5年以上続けていると、乳がんなどホルモン依存性のがんが
明らかに増えることもわかってきました。初潮が早く閉経が遅い、出産経験がない、あるいは高齢出産、というのはいずれも月経に関連しています。
初潮が早く、閉経が遅い人はそれだけ長期間卵巣からエストロゲンが分泌されています。つまり、それだけ乳腺がエストロゲンにさらされる期間が長くなります。同じように、妊娠期間は生理が止まります。
妊娠・出産の経験がない人や少ない人は、何人も子どもを生んでいる人に比べれば、エスト口ゲンにさらされる期間が長いことになるのです。また、授乳はこれとは別のルートで乳がんのリスクを下げるといわれています。
赤ちゃんを産んだら母乳で育てる。それは、子どもの発育だけではなく、母体を乳がんから守るという意味でも
大事といえそうです。
高学歴というのは、的外れな項目にも見えますが、高学歴の人はキャリアを積んで子どもを産まなかったり、高齢出産になる傾向があること、さらに社会的地位が高いと動物性脂肪の摂取量が多くなることなどが、関係するのではないかとみられています。
動物性脂肪が乳がんのリスクになるかどうかは、まだ結論は出ていないのですが、「乳がん検診のガイドライン」では、閉経後の女性に関しては、乳がんのリスクを高める可能性も考えられるとなっています。
一方、肥満は閉経後の女性に関しては、乳がんのリスクを高めることが確実とみられています。閉経後、卵巣からのエストロゲンの分泌がなくなると、脂肪組織で男性ホルモンがエストロゲンに変換されます。
そのため、肥満した人、つまり脂肪細胞が多い人は、閉経後もエストロゲンが豊富に供給されるので、乳がんのリスクが高くなると考えられています。ただ、閉経前の肥満に関してはまだはっきりした結論が出ていません。
いずれにしても、肥満はあらゆる生活習慣病の原因になるので、避けるべきだといえます。アルコールに関しては、まだ十分なデータがあるとはいえず、乳がんのリスクになるとすればどういうメカニズムで働くのか、よくわかっていません。
ただ、これまでのデータを分析すると、アルコールはリスクになると考えたほうがいいようです。逆に、予防という面からみると、「乳がん検診のガイドライン」で確実視されているのは運動です。運動をすることが、乳がんの発生を抑える方向で働きます。
運動は、大腸がん(結腸がん)など、ほかのがんでも予防の方向に働くことがわかっています。今、食生活が豊かになって、日本女性の初潮年齢は早くなり、閉経は遅くなっています。
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