手術の前に化学療法や放射線療法を行うことを、術前導入療法あるいは術前治療といいます。
この術前治療は1980年代後半から90年代にかけて、局所進行非小細胞がんに対してさかんに行われました。術前治療を行う意義は、進行がんは目に見えない転移があるため、手術をして完全にがんが切除できたと思っても再発してくるので、この目に見えない転移を抗がん剤でたたいてしまおうということと、もう1つは、術前治療によりがんを小さくして切除の難しい肺がんを、切除しやすくしようという考えからです。
また、手術後では患者の回復が十分でなく、抗がん剤が効果を発揮するだけの量を投与できにくいということもありました。非小細胞がんの病期Ⅲ期の場合をはじめとして、各病期で多くの臨床試験が行われました。
当初は無作為比較試験により、術前化学療法あるいは化学放射線療法の有効性を示す報告がいくつか出されましたが、効果がないとの報告もあり、結論がなかなか出ませんでした。
「肺癌診療ガイドライン」(日本肺癌学会)によれば、臨床病期Ⅰ期、Ⅱ期の非小細胞がんに対する術前化学療法は標準治療として行うようにすすめるだけの根拠が明確でないとされています。
Ⅲ期でも、やはりI、Ⅱ期と同様に、標準治療として行うようにすすめるだけの根拠が明確でないとなっています。化学療法に放射線療法を加える化学放射線療法も同じです。
ただし、肺の1番上の肺尖部にできる「胸壁浸潤肺がん」では、手術前の化学放射線療法の有効性を示す臨床試験の報告が続き、今では術前化学療法と放射線治療の併用が標準となっています。
小細胞がんの場合には手術の対象となる症例が少ないため、また、術前に小細胞がんの確定診断を得ることが難しいことが多く、術前治療に関するデータがありません。非小細胞がんに対する術前治療は、胸壁浸潤肺がんのような特殊な例を除いて、一般的には行うだけの根拠がないと考えられています。
しかし、今後、新しい抗がん剤の出現により、術前化学療法の臨床試験が行われ、有効であるとの結果が示されるようになるかもしれません。
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