臨床試験には次のとおり、段階があります。
■第1相試験
これは、人体における治療効果と安全性を確かめる最初の試験です。たとえば新薬がどのように体に吸収され、かつ代謝・排出されるか、毒性はあるかなどを確認します。この段階の試験には未知の要素もあるため、既存の治療法が効果を示さない少数の患者が対象となります。
■第2相試験
第1相試験で有効性が期待され、安全性も確認された場合、次に、どのがんにどんな効果があるかを確認します。被験者はおもに、がんを再発し、既存の治療法では効果がないと見られる患者多数です。この試験では自覚症状や検査結果が追跡され、これを用いない患者の状態と比較されます。
■第3相試験
これは最終試験で、何百人もの患者が対象となります。ここで、新しい薬または治療法が既存のものよりすぐれているかどうかを確かめます。ただし第1相や第2相の試験を受けた人は、第3相の対象にはなりません。試験の経験者では、新しい薬または治療法の純粋な効果を見分けることができないからです。医学的な信頼性がもっとも高いとされる臨床試験の方法は「ランダム化比較試験」と呼ばれるものです。この手法ではまず、臨床試験の参加者を2つのグループにランダム(無作為)に振り分けます。そして、一方のグループに従来の標準的な治療を、他方のグループに新しい治療法を割り当てます。
各治療は決められた手順にしたがって進められ、最終的に両者の治療成績が比較されます。ある新しい治療法が複数のランダム化比較試験によって標準的治療より有効であるとされれば、それはもっとも信頼できるデータということができます。新聞や科学雑誌には、臨床試験への参加者(いずれも第3相試験)を募る広告が掲載されることがあります。
これは、一般市民が積極的に臨床試験への参加を希望するアメリカなどと異なり、日本では新薬などの臨床試験を希望する患者が不足している状況を反映しています。そのため、臨床試験を海外で行う試みもあるほどです。その一方で、日本では、遺伝子治療などの実験的治療に希望者が殺到するという別の現実もあります。臨床試験への参加を考える人が、副作用などについての不安を抱くのは自然なことです。しかし同時にそれは、他の多くの患者が
受けることのできない最高の治療法である可能性もあります。
新しい薬や治療法はつねに、よりすぐれた効果を得るために開発されているからです。また、治療困難な状態に立ち至っているがん患者が臨床試験に参加することにより、がん医学の進歩に貢献できるという社会的意義も存在します。
いま患者が受けられる治療法は、他の多くの人々の貢献によって生み出されたものです。とすれば、自分もまた他の人々の治療に貢献できると考えれば、臨床試験への参加は、より意義のあるものになります。
臨床験を実施する医療機関や医師は、試験に関わる情報を完全に公開し、それを受ける患者との十分な意思疎通を図り、患者の人権を最優先することが求められます。他方、患者やその家族は、臨床試験のもつ意味を十分に理解したうえで、自らにその是非を問うことになります。
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