キョウチクトウやイチイなど、植物には強い毒をもつものが少なくありません。
しかし、そのような毒もうまく使えば薬としてはたらきます。「植物アルカロイド」がその代表です。これまでにがんの治療に役立ついくつかの植物アルカロイドが見つかっています。いま抗がん剤として用いられる植物アルカロイドは3種類あり、それぞれがん細胞に対するはたらき方が異なっています。
第1はニチニチソウから抽出された「ビンクリスチン」などです。この薬は、がん細胞が分裂するのをさまたげることにより、がん細胞を殺します。少しくわしくいうと、細胞の中には「微小管」という細い管があります。
この微小管は細胞内でさまざまな役割を果たしていますが、とりわけ重要な役割が、細胞が分裂するとき、その中の染色体を新しく生まれる細胞に移動させることです。ビンクリスチンはこの微小管のはたらきを妨害するため、がん細胞は正常に分裂できなくなって死ぬのです。
ビンクリスチンは、白血病や悪性リンパ腫の治療薬として重要です。肺がんや乳がんに有効性の認められる「ビノレルビン」も、このグループに属します。これらの薬剤は、神経に対する副作用を有する点が共通しています。
第2は、チョウセンアサガオの成分からつくられた「エトポシド」などの薬剤で、後述の抗生物質と同じようにはたらきます。「トポイソメラーゼ」という酵素がDNAのねじれを解きほぐそうとしてDNA分子を切断すると、すかさずこの酵素に結びつくのです。その結果DNAは切断されたままになり、がん細胞は死んでしまいます。
エトポシドも白血病や悪性リンパ腫に対してよく用いられます。第3はイチイの木から抽出された「タキサン」などの薬剤です。タキサンもビンクリスチンと同じくがん細胞の微小管に作用します。しかし、ビンクリスチンとは少し違う方法で微小管のはたらきを妨害することによってがんの増殖を止めます。
タキサン系の抗がん剤(パクリタキセルやドセタキセル)は比較的最近登場したものですが、乳がんや卵巣がん、肺がんの治療薬として非常に有用です。特徴的な副作用としてアレルギー反応や浮腫があることが知られています。
日本でも、「イリノテカン」という植物アルカロイドが開発されました。これは第2のメカニズムでがんに作用します。すなわち、トポイソメラーゼのはたらきをさまたげることによってDNAを切断し、がん細胞の増殖を防ぐのです。
イリノテカンは小細胞肺がんや大腸がんなどに対して治療効果があると報告されており、欧米でも高く評価されています。植物アルカロイドのうち、ビンクリスチンやタキサン系の薬剤は、がん細胞が2個に分裂するとき、つまり細胞周期の細胞分裂期にあるときに効果を発揮すると見られます。
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