触診とマンモグラフィや超音波検査でしこりや石灰化が見つかった場合、それががんかどうかはどのように診断されるのでしょうか。
今は、画像診断でもおおよそのことはわかりますが、最終的には病理の医師が実際に細胞や組織を顕微鏡でみて、正常の細胞とどのくらい違うかを調べます。つまり、がんかどうかは人の目によって見極められているということです。
この検査のために、乳房から細胞を取ってくるのが細胞診、組織を取ってくるのが生検です。昔は、生検といえばメスで乳房を切って組織を取ってくることも多かったのですが、今は細胞診も生検も針が中心です。
■細い針で細胞を取る細胞診
細胞診の場合は、「穿刺吸引細胞診」といって、細い注射針をしこりの部分に刺して細胞を取ってきます。チクッとする程度で、ほとんど痛みもなければ傷も残りません。乳頭から血の混じった分泌物が出ている場合には、直接分泌物を顕微鏡で調べます。
細胞診で1番大事なことは、マンモグラフィや超音波検査で異常があった部分から、確実に細胞を取ってくることです。これで「がん」と診断されれば、まずがんであることは間違いありません。問題は、がんではなかった場合です。
細胞ががん細胞ではなかった場合、本当にがんではない場合と、たまたま取ってきた細胞ががんではなかった、あるいは小さなしこりで針先がはずれていた、ということも考えられます。特に難しいのが石灰化で見つかった異常です。
石灰化というのは、μ(ミクロン)単位の白い点々として映し出されます。がんであれば、その周囲には活発に分裂して増えているがん細胞があるはずなのですが、ここに針先を命中させて細胞を取ってくることは至難のわざだといえます。
そこで、画像診断で疑わしい異常が見つかっているのに、がん細胞ではないと診断された場合には、このような危険性を否定するために、生検が行われることが多いです。以前は細胞の"顔つき"を顕微鏡でみて、5つにクラス分けしていました。
1は良性で5が悪性、その間はグラデーションのように段階的に白から黒まで変化していくという形です。真ん中の3はグレーゾーン(灰色)になります。しかし、今は診断をよりはっきりさせるために、良性、悪性の疑い、悪性、鑑別困難、と4種類に分けるようになってきています。
■石灰化にはマンモトーム生検
生検には、針を刺して組織を取ってくる「針生検」と、乳房にメスを入れて組織を取ってくる「切開生検」があります。切開生検は簡単な手術といわれていましたが、2~3cmの傷が残り、患者さんにとっては決して楽な検査とはいえませんでした。そのため、現在、切開生検はほとんど行われなくなっています。基本は針生検です。
この針生検を大きく進歩させたのが「マンモトーム生検(吸引式針生検)」です。従来から行われている針生検は、「コア針生検」といって、鉛筆の芯ぐらいの太さの針を使います。局所麻酔をして超音波で、しこりを見ながら、
この針で組織を吸引してきます。しかし、難しいのは石灰化の場合です。
やはり、しこりではないので、疑わしい組織を確実に取ることが難しいとされています。そのため、以前は確実な方法として切開生検が行われることもありました。こうしたときに、威力を発揮するのがマンモトーム生検です。
マンモトーム生検は、マンモグラフィでとらえた石灰化部分に、コンピュータで計算して正確に針を挿入して、組織を取ってくる方法です。針は太さが3mmほどあり、先端には溝がついていて、患部に刺したあと、内刃が動いて組織を切り取り、それを吸引して回収します。
通常のコア針生検では、1回に採取できる組織の量が少ないので、何度も針を刺して取ることが多いのですが、マンモトームの場合は、ほほ確実に石灰化部分の組織を採取できることと、1回の針刺しで検査に十分な量の組織が取れるのが大きな利点です。
具体的には、
1.マンモグラフィ検査を行うときと同じ要領で、乳房を2枚の板で挟み、石灰化部分を撮影します。
2.撮影した画像をコンピュータで三次元の立体像にして、石灰化の位置を特定します。そして、画像で位置を確認しながら、
3.乳房を消毒し、局所麻酔を行います。
4.4~5mmの切開を入れて石灰化部位にマンモトームの針を挿入し、マンモグラフィで針の位置を確認して組織を取り、回収します。
5.取ってきた組織に、石灰化組織が入っていることをマンモグラフィで確認して、針を抜きます。
6.切開した部位を止血してテープで止めて終わりです。検査時間は、およそ3O分から1時間ほどです。
その間、マンモグラフィで乳房を挟んだまま、必要なときに撮影をします。傷は縫う必要もないので、1ヶ月も経てばほとんど目立たなくなります。乳房の病変(がん)の位置が変化しにくいという意味で、うつ伏せの姿勢でマンモトーム生検を行う場合と、座った姿勢で行う場合があります。
基本的には、石灰化で発見され、悪性の疑いがある場合にマンモトーム生検が行われます。一方、超音波検査で、しこりがわかるけれど、細胞診やコア針生検でも、良性か悪性かはっきりしないという場合には、超音波ガイド下のマンモトーム生検が行われます。マンモグラフィではなく、超音波でしこりを確認しながらマンモトーム生検を行うわけです。
さらにアメリカでは、生検方法として細胞診の割合が急減し、ほとんどのケースでは、コア針生検もしくはマンモトーム生検で診断をつけています。マンモトームで、確実な診断がつくのかどうかが1番気になるところだと思います。
これまでのデータでは、石灰化で見つかった異常が、がんであるのに見逃される率は1%前後とされています。
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