乳がん治療には、他の部位のがんと比べてもかなり先進的に新しい治療法が取り入れられてきました。
分子標的治療薬が最初に取り入れられたのも乳がんです。
ホルモンが効くがんか、効かないがんか、手術前の術前化学療法や術後の補助療法を行うか、行わないか、行うとしたらどういう方法が効果的かなど、それぞれの患者に合わせて治療法も多様な組み合わせで行われています。
中でも、乳房温存療法とともにがん治療の考え方を大きく変えたのが、「センチネルリンパ節生検」です。これまで、乳がんでは最初にがんが転移しやすいという理由で、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)は、すべて切除していました(郭清といいます)。手術という言葉の中に、すでにリンパ節を取ることが含まれていたのです。
その目的は2つありました。1つはリンパ節をたどって全身に広がろうとしているがんの芽を摘み取ることです。もう1つは、取ってきたリンパ節に何個がんの転移があるか調べて、術後に行う補助療法の強さや種類を決めることです。リンパ節転移の数が多いほど再発の危険は高くなるからです。
ところが、今では乳がんは全身病であると考えられています。浸潤がんになったとたん、がんの芽は全身に散らばっていきます。転移や再発を起こすのは、そのごく一部ですが、いくらわきの下のリンパ節を取っても転移を完全に防ぐことはできないのです。
実際に、わきの下のリンパ節を取っても取らなくても、生存率に差がないことが証明されています。むしろ、取ることによる不利益のほうが大きい場合もあります。
たとえば、従来は、病期(ステージ)のⅠ期で手術前の検査でリンパ節転移がないと思われる人でも、わきの下のリンパ節をすべて取っていました。取って調べることで、転移がないことを確認していたのです。
実際には、Ⅰ期だとほとんどの患者さんにはリンパ節転移はありません。とすると、Ⅰ期の患者さんはただ転移がないことを確認するだけのために、リンパ節を手術(郭清)による合併症まで引き受けなくてはならないのです。
わきの下のリンパ節は、個人差はありますが、30~4O個ぐらいあります。リンパ節郭清では、脂肪や神経にからまるように存在するリンパ節を根こそぎ取るように摘出します。郭清をすれば、それに伴う後遺症も必ずといってよいほど起こります。
リンパの流れが妨げられるため、腕も手もばんばんに腫れ上がり、手がグローブのようになることもあります。それだけではなく、神経が傷ついて痛みやしびれ、感覚の障害、腕が前のように動かないと訴える人も少なくありません。
リンパ節は免疫の基地でもあるので、蚊にさされたり爪にささくれができただけでも、ひどい炎症を起こして高熱が出ることもあります。そのために、夏でも長袖で通すという患者さんもいます。それが、ほとんど一生続くのです。
リンパ節が腫れてごりごりし、明らかにリンパ節転移があるという場合は、当然がんを取るという意味でリンパ節の郭清が必要です。しかし、リンパ節転移がなさそうな人にまでリンパ節郭清をする必要はないのではないかという考えが広まってきました。
リンパ節郭清は、転移がないことを証明するだけの処置になってしまう人のほうが多いのです。転移がないことを別の方法で確認する必要があり、そのために考え出されたのが「センチネルリンパ節生検」です。
センチネル(sentinel)とは、「見張り」とか「前哨」といった意味で、がん細胞が流れてくるのを見張るリンパ節という意味です。個人差はありますが、だいたい1~2個のセンチネルリンパ節があります。ここに転移がなければ、その先のほかのリンパ節に転移はありません。
したがって、リンパ節すべてを取り除く必要はないというのが、センチネルリンパ節生検の考え方です。つまり、センチネルリンパ節生検を行えば、無駄なリンパ節郭清を省くことができるというわけです。
センチネルリンパ節を取るためには、わきの下に2~3cmの切開を入れる必要がありますが、わきの下なので傷はほとんど目立たなくなります。あらかじめわかっているセンチネルリンパ節を1~2個取るだけなので、後遺症の心配もほとんどありません。転移がない人にとっては優れた技術の進歩だといえます
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