乳房内のしこりのサイズだけで、リンパ節への転移が起こっているかどうかは判断できません。
明らかにリンパ節がしこりになっているといった場合は転移があると予想できますが、しこりとしてふれないから転移していないとは限りません。手術でリンパ節を切除して調べた結果、初めて転移の有無がわかるのです。
しかし、乳がんのリンパ節への転移は無秩序に起こるのではなく、一定の道筋があることが最近わかってきました。リンパ節のサイズは直径数ミリから1cmくらいで、大豆に似た形をしています。
それがわきの下には20~50個くらいありますが、がんが乳房内のリンパの流れに乗って、最初にたどり着くリンパ節は決まっているらしいということがわかってきました。
とすると、がんが最初にたどり着くリンパ節に転移が起こっていなければ、ほかのリンパ節は切除して調べるまでもなく、転移していないと考えられます。
このような考え方にもとづいて登場したリンパ節の手術法がセンチネルリンパ節生検法です。センチネル(sentinel)とは、見張りとか歩哨という意味です。つまりがんの侵入を見張っているリンパ節と考えたらいいでしょう。
では、20~50個ある腋窩リンパ節の中で、どれがセンチネルリンパ節なのかということが問題になりますが、それを調べるためにアイソトープや色素が用いられています。
がんの周囲にアイソトープや色素を注入して、それらが最初に流れ込んだところがセンチネルリンパ節です。アイソトープと色素の両方を用いる場合と、どちらか一方だけを用いる場合があります。
センチネルリンパ節を見つけたら、それを摘出して調べ、転移がなければそれ以上のリンパ節切除は必要ないということになります。この方法で実際に転移したリンパ節を見落とす率は、手術対象者全体の2%以下と考えられています。
センチネルリンパ節生検法は患者への負担も少なく、リンパの流れが滞らないので、治療後、腕のむくみが起こる心配もあまりありません。2004年4月には日本でも実質的に健康保険適用になりました。ただし、センチネルリンパ節生検法は、その先進国であるアメリカでさえ登場してまだ10年程度です。
今後、長期にわたって、リンパ節を郭清した場合と比較して生命の予後に差はないか、局所再発率はどうかなど、まだ不明な点も多くあります。技術的にもリンパ節の発見法、発見したリンパ節の検査法、微小転移の扱いなど、未解決の問題も多くあります。
このように、センチネルリンパ節生検法は、多くの問題点をかかえながらも、その後遺症の少なさが評価され、アメリカではすでに標準治療といっていい普及状況になっています。日本でも積極的に乳がん治療を行っている医療機関を中心に、センチネルリンパ節生検法が急速に普及しています。
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